哲学を使いこなす意義
2018/02/23 00:00:01 |
おすすめ本 |
コメント:2件
山口県の徳山市で、哲学者の小川仁志先生主催で毎月行われている「哲学カフェ」
今回もまた鹿児島より参加して参りました。
やはり小川先生が参加者の皆様と対話の時間を作り上げていくやり方には学ぶべき所が多く、
そのノウハウを少しでも吸収して今後の活動に活かそうと思った次第です。
今回も「愛」をテーマにいろいろと話し合って、最終的に思わぬ深い所まで考えさせられる事となりましたが、
本日の記事はその内容についてではなく、参加した際に小川先生の方から、
「新刊を出したので読んで感想を書いて下さる人にはこの本を差し上げます」
との申し出があったので、私が名乗りを上げてその本を頂くことができました。
哲学の最新キーワードを読む 「私」と社会をつなぐ知 (講談社現代新書) 新書 – 2018/2/15
小川 仁志 (著)
小川先生の書かれた本はこれまで何冊か読みましたが、
基本的には小川先生はわかりやすく伝える力に非常に長けておられ、
難しい内容でも割とすらすら読めるようかみ砕いて説明して下さっている内容の本が多い印象を持っていました。
しかし今回頂いた本に関して言えば、読み解くのに非常に骨が折れました。
まさに哲学の本領発揮という感じで、聞いた事もない言葉が続出で言い回しも独特で、
どういう意味なのか文章の意図を見失うこともしばしばで、それでもまずは最後まで読み切ろうと何とかゴールにたどり着くという感じでした。
けれど、読み終えた後、一生考え続けるという哲学が目指している方向性が何となくわかったような気がしました。
それは哲学を深めていくことで、「まだ見ぬ未来に備えることができるようになる」という事です。
人間は他の動物にはない理性という力を使って、あるいは科学という武器を使って世界をコントロールしてきたかのように思われましたが、
実はそれが幻想となりつつあって、今まさに非常にリアルに喫緊の課題にさらされているという事にどれほどの人が気付いているでしょうか。
某国大統領や某テロ集団のように今までには考えられなかった人物が飛躍する背景には何が起こっているのか、
科学で解明されていないものを把握できない時、私達の世界にはどのような影響がもたらされてしまうのか、
人工知能の研究を際限なく突き詰めて万が一にも暴走してしまった時、人はどうなってしまうのか、
無秩序に人の作る情報がインターネットの世界へ広がっていく時、コントロールを失えばどうなってしまうのか、
そのように今私達は、今の世の中ならではの、放置しておくとまずいリアルな問題に実は直面しているのです。
小川先生は哲学のツールを用いてその問題を明確に認識し、具体的な解決策を提示する所に踏み込もうとしています。
一言で言えば、「負けそうになった理性を、さらなる強靭な理性で持ち直す」ということです。
それだけ聞けば、きっと何のことかわからないだろうと思いますが、
頑張って読み込めばこの本は、誰も経験したことのないこの新しい時代を生き抜くための道しるべになってくれるに違いないと私は思います。
大きなテーマですから壮大過ぎて、なんだか遠い世界の自分には関係のない話と捉えてしまう人もいるかもしれませんが、
こういう問題を誰もが自分のこととして考えられるかどうかが大事だと私は思います。
現に私もこの本からヒントをもらい、新しい医療を構築していく上でのアイデアを得ました。
私は医者ですから、医療を通じて新しい世界の秩序を保つために私に何ができるかという事を考えます。
その得られたアイデアについてはまた折をみて、このブログで紹介したいと思いますが、
ひとまずは様々なテーマをわかりやすく解説してくれる小川先生の知的バックグラウンドには、
これほど深淵な知識が隠されていたのかとただただ圧倒されるばかりです。
しかも小川先生の本は他にも100冊近くあり、私が今回知ることができた小川先生の知識は氷山の一角だという事を考えますと、
小川先生の圧倒的なわかりやすさは徹底的に基本的知識を押さえた上に立っていたということを垣間見ることができました。
世の中は本当に広いですし、
哲学の世界も本当に深いです。
たがしゅう
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プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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医療倫理について
理論哲学と実践哲学です。
実証科学になれなかった学問の中で、
理論的な問題を扱うのが理論哲学で、
実践的(人間の行為)な問題を扱うのが
実践哲学=倫理学です。
(「まさおさまの 何でも倫理学」
http://blog.goo.ne.jp/masaoonohara/e/06b1ffbb355726cbda562fa178c8455d
より一部改変引用)
医療倫理について、興味深い記事が有りました
ので、紹介させていただきます。
「医師の知識と良心は、患者の健康を守る
ために捧げられる」
――福島の甲状腺検査をめぐる倫理的問題
https://synodos.jp/science/21127
「優生思想と私たち――旧優生保護法から出
生前診断まで」
https://synodos.jp/society/21052
Re: 医療倫理について
情報を頂き有難うございます。
なかなか考えさせられる記事でした。
頭の中が整理できればブログ記事にもしてみようと思います。
一口に哲学といっても、扱っているものにより全然違う話になるという事に注意が必要です。
今回紹介した小川先生の本には「公共哲学」という言葉が挙げられていました。最も広く捉えて未知との遭遇に対応できるように、しかもそれが留まることなくアップデートされていく様子に無限の可能性を感じた次第です。
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