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立場によって考えは変わる

category - ふと思った事
2018/ 02/ 21
                 
立場が変わればものの見え方が変わるということは、

長く人生を生きていれば誰しも多かれ少なかれ感じられることではないかと思います。

私のような医師の立場で言えば、今まで医師として良かれと思って患者へ勧めていたことが、

ある時自分が患者の立場となることで、その勧めが思いのほか患者に負担をかけていたということにふと気付くという、

そんなことって人生のあらゆる場面できっと見られるのだろうなと思います。

最近よく聞く糖質制限批判の中に、「糖質制限を長く続けるとバックアップシステムである糖新生の亢進状態が持続し、それがストレスとなって副腎疲労へとつながる」というものがあります。
            

確かに事実として糖質非摂取下において糖新生のシステムが駆動され血糖値が一定の値に維持され続けるという現象はあります。

ただその状態を、無理を続けている状態と見るのか、平常運転状態と見るのかは、

解釈する人が糖質摂取推進派なのか、糖質制限推進派なのかによって変わってくると思います。


この批判はある意味で真理をついているところがあると私は感じています。

というのは、脂質代謝がうまく使えない人にとっては、確かに糖新生の亢進がストレスとなりうるからです。

そもそもストレス自身も身体を糖代謝優位へ切り替えるファクターです。

糖質制限を続けることで糖新生機能がオーバーヒートしてアミノ酸も材料に動員され筋肉がやせていって脱力、倦怠感などの症状をきたしていってしまうのではないか、

その不安そのものがストレスホルモンを通じて代謝を糖代謝優位へ傾け、

いつまでたっても脂質代謝へ適応するようにはならず、実際に副腎疲労へとつながる悪循環をきたしてしまいます。

平たく言えば、「自分で病気を呼び込む思考パターン」に陥ってしまっているということです。

考え方そのものが糖質制限不向きな体質にしてしまっている側面があると私は考えていますが、

ともあれそういう考え方の人は確かに糖質制限を続けながら不安を感じ続けることでストレスが身体をオーバーヒートさせてしまい、

実際に身体の調子を崩します。そこに「糖質は摂取すべき」という指導者が現れればその言葉が心に響くのでしょうし、

糖質を摂取すれば、錆びついた脂質代謝を無理に使おうとするよりよほど効率的にエネルギーを生み出すことができるから自覚症状も改善します。

そうなるとその人にとっては糖質摂取推進派の指導者の言葉通りの展開となるので、その人にとっては揺るぎない真実となることだろうと思います。


私は蚊帳の外からそんな状況を眺めていて、

その人が幸せであれば、それはそれでいいと思っています。

ただ参考までに私自身の捉え方を表すならば、

人類の長い歴史の中で考えれば、ストレスフル糖新生亢進と批判される状態こそが、

長きに渡って人類における、いや多くの動物における日常的な状態であったと考えています。

なぜならば、1日3食安定して食べられるなんて、世界広しと言えどヒトと人に飼いならされた動物だけです。

野生の中では食うか食われるか、絶食状態で長い時間を過ごさなければならないことが常態となっていたはずです。

そんな状況に適応するために進化の歴史の中で構築されてきたのが脂質代謝系です。

糖代謝は原始生命体とミトコンドリアの祖先が融合する何十億年前のそれ以前に構築されたより原始の代謝系です。

長らく脂質代謝系で活動の幅を広げてきた生物の歴史の中で、

随分久しぶりに糖代謝優位の生活を実現してきた動物こそがヒトとその関連動物だということです。

そしてその糖代謝優位の再興を成し遂げた二大要因こそが「糖質摂取」と「ストレス」、

より詳しく言えば、農耕技術によって獲得した今までの歴史では考えられないくらい凝縮された量の糖質中心食材と、

また高度に発達した前頭連合野によって生み出された何もない所からストレスや不安を生み出せる複雑な高次脳機能です。

だからその二大要因をコントロールできている限りは今までどの動物もそうであったように、脂質代謝優位の生活をしていけばいいと私は考えています。

ゆえに私ならば冒頭の糖質制限批判で指摘される状況は、

平常運転の糖新生持続状態を続けていけば一番燃費の良い状態が維持でき、上手に使えば脂質代謝産物のグリセオールを中心に糖新生材料の供給源とし、筋肉や骨格などの身体構成成分に負担をかけることはない。

ただし糖質を過剰に摂取したり、ストレスがうまく処理できなかったりしたら、このシステムに無理をさせることになり、ひどい場合はオーバーヒートにつながってしまうのでシステムは大事に使っていくようにしよう


という風に解釈します。

同じ現象を見て「やっぱり糖質は摂るべき」と思うのか、「糖質制限を基本に糖質とストレスの負荷を最小限にすべき」と思うのかの違いです。

私は自分で納得して後者のスタンスをとりますが、

そうは思えない人は前者のスタンスを選んでも別に構わないと思います。

健康に自分の立場や考え方は大きく寄与すると私は思います。


たがしゅう

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コメント

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鈴木功先生は糖質制限反対派と考えてよろしいのでしょうか。
糖質制限も間欠的ファスティングも日本人特に女性には向いていないなどの声も聞こえます。

糖質制限で不調に陥った人達もかなりの数いるようです(やはり女性が多い)。これについても糖質制限の先生達で話し合ってほしいと思います。

間欠的ファスティングについて不調者も多かった為か、界隈ではあまり話題になっていないようですが、鈴木功先生の出された本良いようですね。私も実は間欠的ファスティングで不調になる人がいたので、やはり買うつもりはなかったのですが少し思いまして買ってみることにしました。
たがしゅう先生は読まれましたか?

Re: タイトルなし
ノビル さん

> 鈴木功先生は糖質制限反対派と考えてよろしいのでしょうか。

それは鈴木功先生に尋ねるべき御質問であり、私にはお答えしかねます。

> 鈴木功先生の出された本
> たがしゅう先生は読まれましたか?


興味深く拝読しました。
中には疑問を感じるところもありましたが、
基本的には意義深い御指摘が書かれた本だと思います。
私の感想はいずれ記事にしたいと思っています。
ありがとうございます。
たがしゅう先生の書評を参考にしたいと思います。
それと、書評といえば今話題の崎谷先生の本は読んだことありますか?
こちらももし読んだことがあるなら感想を聞かせてほしいです。
Re: タイトルなし
ノビル さん

> 今話題の崎谷先生の本は読んだことありますか?

 購入済ですが、まだ読めていません。
 また折をみて読んでみようと思います。