病状が不可逆的になる前に

2018/02/17 00:00:01 | ふと思った事 | コメント:0件

私のパーキンソン病診療経験においても、

先日紹介した中坂先生の御著書の症例報告を見ていても、

症状の劇的な改善が認められる事こそあれど、パーキンソン病が治癒したという症例、

ましてや末期のパーキンソン病から全く正常な状態に復帰したという症例は残念ながら一例も認められていません。

一方で末期がんから全く正常な状態に戻ったという症例は奇跡的寛解(radical remission)としての実例があります。

現代医学からは相手にはされていませんが、私は純然たる事実だと思っています

末期がんは克服しうるのに、末期パーキンソン病が克服できない所に、過剰適応病態と消耗疲弊病態の決定的な違いが表れています。 先日紹介したハンス・セリエ博士が提唱した、ストレス蓄積に伴って起こる汎適応症候群の3段階を思い出してみて頂きたいと思います。

警告反応として脱力の出てきたLow T3症候群のように、一過性の疲弊をきたす第一期に続いて起こってくるのが、

身体の抵抗反応がオーバーヒートしてしまっている第二期の抵抗期、これががんや動脈硬化といった過剰適応病態に相当します。

そしてひとしきり機能がオーバーヒートしきった末にシャットダウンへ移行し、全般性の機能低下をきたす第三期の疲憊期、これが認知症やパーキンソン病といった消耗疲弊病態に相当します。

ポイントは第二期は可逆的、第三期は不可逆的だということです。

だから末期がんは治るけど、認知症やパーキンソン病は治るところまでは言い切れず症状の改善というレベルに留まるのではないかと私は考える次第です。

やせ型の人はオーバーヒートしやすい、という記事も書きましたが、

これはあくまでも私が感じる一般的な傾向であって、肥満者でもオーバーヒートする事は当然起こりえます。

しかし頻度の多さで言えば、やせ型の方に多い印象を持ちますので、

あくまでも仮説ですが、やせ型の人は注意しないと、第一期→第二期→第三期への流れが肥満体質の人より急速に進行しやすいという事なのかもしれません。

このことは、以前書いた「太るのはある意味身体を守っている」という記事にも通じる所があります。

私自身は極度の肥満体質で、糖質制限を始める前にうつ病を経験した事がありますが、当時私にかかっていたストレスは相当なものがありました。

しかし今やそれが糖質制限を契機に可逆的に改善したという事を踏まえると、当時の私の疲弊状態は第一期に相当していたのではないかと思います。

ストレスを客観的に測定する事はできませんが、少なくとも自覚的に相当なストレスがあったと感じられる程の量であっても、

太るという見た目のデメリットはあるものの、身体機能的には第一期に留まってくれているのは肥満体質の強みだと思います。

しかしもしもその状態が続いていたら、さすがの私も第二期、第三期へと病状が進行し、第三期に至れば不可逆的な疲弊状態へとつながっていたことでしょう。


私は神経内科医としてパーキンソン病をはじめとした神経変性疾患を、

治らないものと最初から決めつけずに、糖質制限の考え方をベースに根治を目指そうという気概のある医師です。

しかし第三期の不可逆性がもしもゆるぎないものだとしたら、その夢は泡と消えてしまうのかもしれません。

けれど漢方薬やホメオパシー、あるいは絶食療法といった既存の医学と異なるアプローチからの研究を諦めずに進めていきたいと思うと同時に、

そもそも病態が不可逆的な消耗疲弊病態に至る前に病状を食い止めるための

糖質制限+ストレスマネジメントの重要性を改めて強く感じる所です。


たがしゅう
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