多様となったストレスにどう立ち向かうか
2018/02/09 00:00:01 |
素朴な疑問 |
コメント:3件
以前、パーキンソン病はストレスマネジメント不足病だという私見を述べました。
この私見がもしも正しいとすれば、ストレスマネジメントが上手くできていればパーキンソン病にはならないという対偶は成立するのでしょうか?
一方で、「喫煙者にはパーキンソン病が少ない」という逆相関がある事もよく知られています。
これについても私は以前の記事で、喫煙できるほど酸化ストレス処理能の高い人間はパーキンソン病に関わる酸化ストレスをも処理してパーキンソン病にならなくて済むのではないかという見解を述べました。
さらにBOOCS理論を踏まえて考えると、喫煙を心の底から楽しんでいる人は、
たとえ喫煙自体が大きな酸化ストレス源であったとしても、快によって発動される自然治癒力(自己調整力)の方が上回り、
喫煙の悪影響を帳消しにすることができる可能性があるのかもしれません。 たまにヘビースモーカーであるにも関わらず、元気な高齢者の方をお見かけすることがあります。
あれは単純に遺伝的に酸化ストレスに強いラッキーな人なのだろうとくらいに思っておりましたが、
もしかしたら喫煙に対する捉え方、考え方が素晴らしくて、上手にストレスマネジメントできているのかもしれません。
しかし人の頭の中まで覗くことはできませんし、当然比較する事もできないので、残念ながら真実は藪の中ですが、
もし本当に捉え方ひとつで受ける酸化ストレスを軽減できる可能性が少しでも存在するのであれば、
物事の考え方を見直してみても悪くはないかもしれません。
そしてそれは糖質をしっかり食べていても健康長寿を果たしている人に対しても同じ事が言えるかもしれません。
さてそんな風に思う一方で、喫煙によってがんや動脈硬化のリスクが上がる人達の方が多数派だという事は、
疫学的なデータから考えても、臨床現場での実感から考えても、もはや揺るぎようのない事実であるように私には思えます。
喫煙が止められずに脳卒中を発症する人を私はこれまで何人も診てきました。
その人達はすべて喫煙を継続する事をストレスに感じていたのでしょうか。
それは表面上推し量ることは困難です。なぜならば、いくら「自分は吸いたくてタバコを吸っている」と豪語していたとしても、
医師から受診の度に禁煙しなさいと言われることをストレスに感じていたかどうかまでは本人にしかわかりません。
ただ一つ言えることは、喫煙によって起こるがんや動脈硬化は、
私独自の疾患把握概念である過剰適応か、消耗疲弊かで言えば、「過剰適応」です。
なぜならば細胞が過剰に増殖している状態ががんであり、血管傷害の修復機構が過剰に働いている状態が動脈硬化と捉えることができるからです。
一方でパーキンソン病は神経変性という神経の働きが衰えていく現象を病態の基盤としているので「消耗疲弊」です。
喫煙は大きなストレスを処理するチャンスを与えられているようなものです。
タバコを吸い続けることができる人は、少なくとも消耗疲弊にはなっていないという事ができると思います。どれだけ弱っているように見えても喫煙という大きなストレスに少なくとも立ち向かうことができているわけですから。
だから大抵の喫煙中に起こるトラブルは過剰適応ベースの病態なのであろうと思います。
一方で喫煙を繰り返して消耗疲弊病態が起こった時には、もはやタバコを吸える状態ではなくなっていると、
だから喫煙者にはパーキンソン病が少ないと考えることもできるように思うのです。
話は変わってひと昔前には、パーキンソン病に認知症を合併しないと言われていた時代がありました。
それは当時はまだ認知症の存在が今ほど一般的ではなく、ただ単に認知症があった事に気付かなかっただけで実際には認知症は昔にも結構合併していたという可能性があります。
でも今にして思えば、認知症もパーキンソン病も同じ「神経変性」をベースにした消耗疲弊病態なので、合併するのはごく当たり前の話に思えます。
ただ現実には確かに、明らかにパーキンソン病の症状があるけれど、認知面がしっかりしているという人がいるのも事実です。
これは完全なる私の推測ですが、脳の使い方のクセによってどの神経に消耗疲弊が起きやすいかの個人差が生まれるのではないかと思っています。
昔からよく言われていることに、真面目な人間はパーキンソン病になりやすいというのがあります。
一方で無口で頑固な人間が認知症になりやすいとする研究報告もあったりします。
受けるストレスの種類、そしてそれをどう受け止めるかによってドーパミン神経優位に神経変性が起こったり、アセチルコリン神経優位に神経変性が起こったりと変わってくることがもしかしたらあるのかもしれません。
昔はストレスの種類がシンプルであったのが、今は情報化社会でインターネットも発達しストレスの種類や性質も様変わりしました。
人と人が顔を合わせずに交流したり、単なる陰口も匿名掲示板やらブログ、ツイッターの炎上やら昔ではありえなかったストレスと現代人は否が応でも向き合わせられ続けています。
その結果、昔のような単純なストレスではパーキンソン病しか起こさずに済んでいたのに、
現代の複雑なストレスを受けた結果、パーキンソン病に加えて認知症まで起こしてしまうという状況が生み出されてしまったのかもしれません。
今、私達が健康を維持するために、糖質制限もさることながら、
多様になったストレスの本質を見極めて、それをどのようにマネジメントすべきかというノウハウが求められていると思います。
たがしゅう
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プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
パーキンソン病、認知症も、うけたストレスの種類によって発症する率が高いのかなって感じました。
最近は、若年性認知症の方も増えてます。
仕事のストレス、私生活のストレス、抱え込みやすいとおもいます。
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます。
タバコを吸っているほとんどの人はストレスを解消できているようで、その中毒性、離脱症状から新たなストレス源を作り出してしまい、そこから逃れられなくなっている人がほとんどだと思います。これは糖質を含め、アルコール、麻薬、睡眠薬、他の中毒についても同じように当てはまる構造です。
ただ稀にそのストレスの波をうまく乗りこなして本当に自分の心地よい状態に持っていく事ができる人がいるかもしれない、という話です。それがその人がもともと持っている素質なのか、思考のクセなのか、凡人にマネできることなのか、外から見てもわかりません。おそらく本人さえ気づいていないことなのではないかと思っています。
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