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思考の樹は自分にしか育てられない

category - 自分のこと
2018/ 02/ 05
                 
最近、私は思考の樹を育てる重要性を説いています。

思考の樹とは、自分が得た様々な情報を頭の中で内省し整理することで得られる自分の中に出来た考え方の軸の事を意味しています。

残念ながらこの思考の樹を得るための方法は、自分の思考を丁寧に積み重ねていくより他にないと私は思っています。

たとえ他人に思考の樹を植え付けてもらったとしても、自分の中で内省することなくそれを受け入れてしまった場合、

気温や土壌など環境が異なる樹木の植林が別の土地へなかなか根付かないのと同様に、

ひとたび突風が吹き荒れたらたちどころに吹き飛んでしまうことでしょう。

しかし自分の頭で考えて育てた思考の樹は多少の嵐が吹きすさんだ所でビクともしません。
            

私自身の思考の樹は「糖質制限状態が健康の基本」という考えを幹の部分に持ち、

その中枢部分に「自然」というものがあり、様々なものごとを判断する時にこの樹を道標にしている部分があります。

1日何回食べるべきかも、シャンプーをすべきかどうかも、裸足で走るべきかどうかも、冷たい飲み物を飲むべきかどうかも、

椅子を使うべきかどうかも、消毒薬を使うべきかどうかも、漢方薬を使うべきかどうかも、西洋薬を使うべきかどうかも、

すべてはそれが自分にとって自然なのか否かを考えることで、一定の道筋が見えてくることは多いです。

しかし、すべての人が私と同じ思考の樹を持つとは限りません。

中には熟考を重ねた結果、「糖質は適量摂取すべき」という結論に達する人もいることでしょう。

私はその人の考えを否定はしませんし、きっと表面上は違う意見のようでも、実は根の部分で共通していたりもします。

一方で深く考えずに私の思考の樹を安易に拝借してしまうような人は、

きっとその樹は自分の中には根付かず、嵐という名の糖質制限のネガティブ情報にすぐに翻弄されてしまうことでしょう。

様々な人達の考えや情報を、一旦自分の頭に取り込んで考え直すという行為が、

面倒くさかろうが、知識が乏しかろうか、自信がなかろうが、時間がかかろうが、

少しずつでも地道に自分自身だけの思考の樹を育て続けて行くという行為が、

人間に与えられた素晴らしい能力なのではないかと私は考える次第です。


例えば、「やせ型糖尿病の患者にSGLT2阻害薬を使用すべきか」という課題に対して、

とある医学雑誌に他人の思考の樹が次のように紹介されていました。



月刊糖尿病 Vol.9 No.12 特集:今、明かされたSGLT2阻害薬の多面的作用と適正使用
単行本 – 2017/12/1
3 SGLT2阻害薬の適する患者像とは ~高齢者、腎障害患者、非肥満患者にも適応はあるのか~
鳥本桂一、岡田洋右(産業医科大学 第1内科学講座)


(p35-36より引用)

日本人は欧米人に比較すると内臓脂肪をためやすく、

BMI23程度から脂肪肝のリスクが高まることが報告されている。

異所性脂肪のひとつである心周囲脂肪組織は心血管疾患と関連することが知られているが、

非肥満者においてもSGLT2阻害薬の投与で心周囲脂肪組織が減少することが報告されている。

したがって、非肥満患者においても内蔵脂肪蓄積や異所性脂肪沈着を認める症例においては、SGLT2阻害薬は病態改善に有効であると考えられる。

しかし、非肥満者における体重減少は、筋肉を含む除脂肪体重の減少につながる。

したがって、高齢の非肥満者へのSGLT2阻害薬の投与は、サルコペニアのリスク増大となるために注意が必要である。

(引用、ここまで)



まず、雑誌全体の思考の樹の幹の部分に「SGLT2阻害薬は良い薬である」と、

主張している他人の思考の樹からの情報だという事を念頭において情報を自分の頭に取り入れる必要があります。

さて、読者の皆さんは引用文を読んで、「やせ型糖尿病の人にSGLT2阻害薬を使うべきかどうか」についてどう考えられますでしょうか?

ある人は「なるほど、やっぱり使うべき」と考えるかもしれませんし、

またある人は「使うべきだが、副作用に注意して慎重に使うべき」という結論に達するかもしれません。

しかし参考までに私の思考プロセスを御覧に入れますと、

私の結論は「SGLT2阻害剤は極力使用すべきではない」です。

私がこの情報から得る重要な事実は「一見やせている人でも糖質制限をする明確なメリットが存在する」ということです。

今までの臨床経験上、やせ型の患者さんからはアレルギー、自己免疫疾患、難治性疼痛、神経変性など、

太らない代わりに別の健康被害を被っている場合が多いという印象を私は持っており、その健康被害の一つが「異所性脂肪」だということです。

いわばやせ型の患者さんは見えないところで太っているということであり、その耐性が肥満型の患者さんより低いということなのです。

そう考えると、表現型は違えど肥満型とやせ型の患者さんの健康状態を元に戻すべく行う方法の大まかな方向性は共通しているはずです。

それは脂肪をため込む刺激を減らすこと、即ち糖質摂取に伴うインスリン分泌のことです。

糖質制限を単なる痩身法だと捉えてしまっていれば、やせ型の患者さんに糖質制限をすべきではないという事になりますし、

SGLT2阻害剤を使う場合も副作用に注意して慎重に使うべきという結論に達しがちではないかと思いますが、

やせ型の患者さんは目に見えないところで糖質過剰摂取の悪影響をしっかりと受けているため、

やせ型の患者さんも糖質制限は行うべきですし、SGLT2阻害剤は極力使用すべきではありません。

この時、「糖質制限状態≒SGLT2阻害剤使用状態」と考えてしまっていると私の主張が理解できないと思いますが、

ここで効いてくるのが私の思考の樹の幹の部分にある「自然」という考え方です。

つまり糖質を過剰に摂取しないことは、その糖質摂取状態に応じて代謝の変化を身体が自律的に調節してもたらしてくれる自然さがありますが、

SGLT2阻害剤で強制的に尿中に糖を排泄させる行為は、身体がどういう状態にあっても尿中の糖を排泄させる厳命を守り通す不自然さがもたらされるので、

その場合、引用文の中で指摘されるような除脂肪体重の減少、脱水やサルコペニアなどさらなる身体への歪みをもたらしてしまいます。

だからやせ型の人に自然な糖質制限を行うべきだし、不自然な糖質制限であるSGLT2阻害剤を極力投与すべきではないのです。

ただやせ型の人は糖質負荷に対する耐久性が低く、糖代謝がオーバーヒートしていたりシャットダウンしていたりしますので、

ゆっくりとメンテナンスしていくように糖質制限状態に戻していくべきだと思いますし、

糖質制限に納得できずに糖質摂取状態から逃れられないという患者さんに対してはたとえ不自然でもSGLT2阻害剤を処方する事は私にもあります。

しかしその場合も基本的に少量から開始し患者さんの反応を見ながら適宜調整していくスタンスをとるようにしています。

その医療行為が自然か不自然かという認識が私の根本にあるからです。

そうやって私は私の思考の樹を今日も育ていっています。


たがしゅう
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コメント

非公開コメント
        

思考は自分のでしか育てられないですね。
先生のブログ読んでてそうだなぁって思いました。
糖質制限について
いろんな意見がいっぱいでてます。
参考にしながらいけたらって思います。