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腸内細菌を乱す行為の危険性

category - お勉強
2018/ 02/ 04
                 
糖質負荷への耐久性が低いという事で私の頭にすぐに思い浮かぶのは1型糖尿病です。

なぜならば1型糖尿病は小児に多く、感染症などを契機に発症する事が多い事が知られているからです。

その様相から、1型糖尿病の遺伝的素因を持っている人がなりやすい、というように遺伝的側面からのみ病態が語られがちですが、

どうも最近の研究では1型糖尿病にも非遺伝的要因が大きく関わっている可能性が指摘されているようです。

臨床免疫・アレルギー科
第69巻第1号(2018年1月発行)

特集 I.自己免疫疾患
「1型糖尿病 -非遺伝的要因と免疫異常-」
            

(以下、p33-35より引用)

(前略)

近年、世界的にT1D(1型糖尿病)は増加傾向であり、遺伝的要因のみでは説明が付けられないのが実際である。

そこで本稿ではT1Dに関する膨大な知見の中でも、非遺伝的な要因がいかにしてT1Dにおける免疫異常に影響するかについて論じたいと思う。

(中略)

T1Dは小児期の発症率が高い疾患であり、

食物アレルギーや小児肥満など、小児期に発症する疾患と同様、影響する要因として帝王切開出産や母乳育児との関係が広く調べられている。

まず帝王切開との関連はメタアナリシスで証明されており、帝王切開で出生した児は20%程T1Dの発症リスクが高いとの結果であった。

次に母乳と人口乳の違いが発症率に影響を及ぼすかについても検討がなされている。

当初報告されていたコホート研究とそのメタアナリシスでは、人工乳の使用とT1Dの発症リスクの関連は弱いとされていた。

しかし、2015年に発表されたMIDIA研究では、HLAリスクアリルを保有する子供を追跡し、12ヶ月以上の母乳育児がT1Dの発症を有意に抑制すると結論づけた。

一方、どのような人工乳が良いかという観点からも臨床試験が行われているが、

TRIGR研究はパイロットスタディの段階では低アレルゲン性の高度加水分解乳が膵島関連抗体の発現を抑えるという結果であったものの、最終的には通常の人工乳と差が認められなかった。

また、小児期の抗菌薬使用もさまざまな疾患との関連が報告されている。

デンマークのコホート研究では、帝王切開で出生した児については広域抗菌薬の使用歴が有意にT1Dの発症リスクを増加させると報告された。

さらに、食事との関連も調べられている。

T1D患者の末梢血CD3陽性T細胞では小麦由来のポリペプチドに反応する割合が高く、IFN-γやIL-17Aといった炎症性サイトカインを高産生するという報告がある。

また、セリアック病において原因物質とされるグルテンは、T1Dにおいても発症リスクを揚げる可能性が示唆されており、

実際、セリアック病患者という特殊な集団を対象としている研究ではあるが、

グルテン無添加食によってT1Dの発症リスクが下がることが報告されている。

(後略)

(引用、ここまで)



そう、もし1型糖尿病が完全に遺伝のせいだとすれば、

年々増加傾向になっていくというのは明らかに説明がつかない現象です。

そして引用文で紹介されている1型糖尿病の非遺伝的要因を一言でまとめるならば、

自然に形成される腸内細菌を乱しうる行為は1型糖尿病の発症リスクを高める」という事になるかもしれません。

帝王切開は、本来の自然分娩であれば産道を通過する際に膣内に常在する乳酸桿菌などを大量に含んだ羊水を飲むことで形成される腸内細菌定着のプロセスを経ずに出産を完了させてしまいます。

また人工乳は母乳の組成に似せて作っているはずですが、栄養成分量だけでは真似できない母乳の絶妙な組成バランスが真似できないために腸内細菌の維持に対して不利に働いてしまいます。

さらには小児に対して病院で安易に繰り返される抗菌薬使用が腸内細菌を不自然に死滅させ組成を変えてしまいます。

そして食事中における小麦、グルテンの存在が腸内細菌の組成に悪影響をもたらしているというわけです。

この引用文の中では糖質摂取量が1型糖尿病の発症に影響しているかどうかの直接の言及はありませんでしたが、

糖質摂取が「腸内細菌叢の形成にとって不自然か否か」を考えれば、上述の話の延長線上として答えを予想する事は可能です。

しかし糖質摂取が不自然かどうかは固有の腸内細菌の組成によって変わってくるため、

糖質に適応できる腸内細菌を宿している人にとって糖質摂取は必ずしも「不自然」となるとは限りませんが、

一つ言えることは糖質主体の食生活にするか糖質制限を主体の食生活にするかは腸内細菌叢を大きく変動させうるということです。

一方で、前記事で考察したように、ヒト本来の代謝システムを私はケトン体主体だと考えています。

適応できるかどうか不確かな糖質摂取に、特に明らかに発症リスクを高める事がわかっている小麦グルテンを含む糖質摂取に、

その身をさらし続けることは1型糖尿病発症を含めた免疫システムの誤作動を惹起させるリスクの高い行為だと私は考える次第です。

私が知る限り、2型糖尿病から徐々に1型糖尿病に移行する緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)は別として、

純粋な1型糖尿病の患者さんはやせ型、もしくはBMI22程度の通常体型の方がほとんどであるように思います。

実際、糖尿病データマネジメント研究会(2012年度)のデータを見ても、1型糖尿病患者の平均BMIはBMI22近辺にあるようです。

糖質摂取しても太らない(太れない)
→糖質摂取に対するインスリンや腸内細菌などの対応システムが機能しない
→糖質負荷に対する耐久性が低い
→糖質負荷によって免疫誤作動を起こしやすい


という構図が成立するのではないかと思います。


やせ型の人は目に見えない自身の健康課題を、

体調というバロメータを指標に是非とも認識してもらいたいと私は思っています。

また、まだ小さなお子さんを抱えている親御さんには、是非ともお子さんを守るために自分の頭で考える力を養ってほしいと思います。

こどもは発熱して小児科に連れていき、何も考えずに医師の指示に従っていれば抗生剤が安易に処方されるかもしれません。

それは目に見える発熱は治めても、目に見えない腸内細菌バランスを崩す行為へとつながっているかもしれません。

目に見えるものだけにとらわれず、物事の本質について考えるように心がけるならば、

糖質制限に限らず、人生を正しい方向へ導く道標になってくれるはずだと私は思います。


たがしゅう
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コメント

非公開コメント
        

一型糖尿病、母乳を飲んでない、人口乳を飲んでる子供になりやすい、データがでてきてるんですね。
やせがたの人でも糖尿病の人がいます。
痩せてるのに何で糖尿病なのかなって思ってました。
食事を気を付ける事が大事になってくるのかなって思いました。
たがしゅう先生おはようございます。度々の投稿スミマセン。
例えば1型糖尿病を幼児が発症したとしてその幼児が糖質制限をしていれば、1型糖尿病を発症しない又は発症を遅らせる事が出来たという事でしょうか?
インフルエンザにかかって1型糖尿病を発症した方がいますが、その方も腸内細菌が関係あるのでしょうか?
大食いで有名なギャル曽根さんですが、腸内の乳酸菌が一般の成人女性の2~4倍で腸内細菌の検査をしところ、腸内のビフィズス菌の割合が腸内細菌全体の50%占有していたらしいです。腸内細菌が多い方が糖質を分解出来るという事なのでしょうか?質問ばかりでスミマセン。
No title
ご存じかも知れませんが、NHKで腸内細菌と免疫調整の内容が放送されていました
人体 神秘の巨大ネットワーク #04 万病撃退!腸が免疫の鍵
https://www.nhk.or.jp/kenko/jintai/programs/4
・重度のアレルギー患者と多発性硬化症患者に共通してクロストリジウム菌が少なかった
・ある種のクロストリジウム菌は、酪酸を放出し、腸壁内で、Tレグ(制御性T細胞)を誘導する
・Tレグは免疫細胞の活動を鎮める
・マウスで、食物繊維投与量を増すとTレグ゙生産量が倍違った
・酪酸?(番組内ではメッセージ物質と表記)投与でTレグ増加の臨床効果有り

・1型糖尿病にも何か相関があるかも知れません。
・ミヤリサンは酪酸菌(宮入菌)製剤なので免疫過剰症には有効かも知れないと思いました。
Re: タイトルなし
瀬川里香 さん

 コメント頂き有難うございます。
Re: タイトルなし
あっぴ さん

 御質問頂き有難うございます。

> 幼児が糖質制限をしていれば、1型糖尿病を発症しない又は発症を遅らせる事が出来たという事でしょうか?
> インフルエンザにかかって1型糖尿病を発症した方がいますが、その方も腸内細菌が関係あるのでしょうか?
> 腸内細菌が多い方が糖質を分解出来るという事なのでしょうか?


 その辺り、腸内細菌叢には多様性があり過ぎて私にもはっきりとしたことはわかりません。

 ただ本質的に見れば、体調を崩すという事は自分の身体にとって処理しきれない負荷がかかっている事を知らせるメッセージではないかと私は考えています。
Re: No title
へっぽこ さん

 情報を頂き有難うございます。

 酪酸菌製剤を外部から投与し、腸内細菌叢を変えるという試みはそう簡単にうまく行かないと私は考えています。
 なぜならば、いくら外部から多量に投与した所で、一時的な効果は出したとしても、すでに何兆と存在している自前の腸内細菌叢と置き変わって定着させるのは難しいと考えているからです。

 2015年2月12日(木)の本ブログ記事
 「腸内細菌を入れ替えるのは至難の技」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-573.html
 も御参照下さい。
No title
いつも興味深い記事をありがとうございます。

遺伝子解析が、ほぼ終了なのに、期待したほど、
病気治療に直結していない気がします。

遺伝子という先天的な要因より、
後天的な要因の方が、影響大ですね。
「腸内細菌」は、その代表格ですね。

共生は大切です。
ミトコンドリアとは、見事な共生で、
無くてはならない存在になりました。

食事をする時は、
良い働きをしてくれる「腸内細菌」達に感謝し、
食事(食物繊維)を届けてあげなくちゃ、
という気持ちを、忘れたくないです。
Re: No title
Etsuko さん

 コメント頂き有難うございます。

 私は変えられない遺伝的要因をどうこう悩むよりも、
 変えられる環境的要因を変えることに意識を向けるべきだと思っています。
 またその環境的要因の中に遺伝も含んでおり、遺伝さえも環境によって変わりうると私は考えています。

 2014年7月7日(月)の本ブログ記事
 「『遺伝』であきらめない」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-326.html
 も御参照下さい。