サルコペニア肥満と言うけれど
2013/12/18 00:01:00 |
素朴な疑問 |
コメント:6件
本日のテーマはサルコペニアです。
「サルコペニア(sarcopenia)」とは、ギリシャ語で筋肉を意味する”sarx”と、損失・減少を意味する”penia”からなる造語で、「加齢に伴って無意識のうちに起こる骨格筋量の減少」の事を指します。
サルコぺニアは1989年米国タフス大学のRosenbergによって提唱された比較的新しい概念です。病気というよりは、加齢とともに増加して治療と同時に介護が必要になる身体的および精神的諸症状ということで、いわゆる「老年症候群」の一つと位置づけされています。
一方そこに加えて「サルコペニア肥満」という言葉も台頭してきました。「筋量減少+肥満」の状態のことで、具体的には「BMIが25以上で筋量の低下が平均集団以下(-1SD以下)の状態」を指すそうです。
よく聞く「メタボリック症候群」の場合は「内臓脂肪の蓄積による肥満およびそれに伴う代謝異常」の事を指しますので、「メタボリック症候群とサルコペニア肥満は異なり、後者の方が危険である」というのがサルコペニア研究者の弁ですが、
私に言わせれば、メタボリック症候群もサルコペニア肥満も本質は同じで、いずれも糖質の過剰摂取に伴い生じる病態です。 メタボリック症候群とサルコペニア肥満を分ける鍵はひとえに運動量の違いだと思います。
すなわち、
「糖質過剰摂取」→「肥満」→「まだ運動できる余力あり」
⇒「メタボリック症候群」
「糖質過剰摂取」→「肥満」→「もう運動できる余力なし」
⇒「サルコペニア肥満」
というだけの違いだと思います。後者の方が危険なのはある意味当然の話です。
それが証拠に、メタボリック症候群の好発年齢は40代からですが、サルコペニア肥満の好発年齢は60代頃からです。退職して運動の機会を失えば筋力は当然衰えていきます。
このサルコペニアに対して一般的に推奨される対策として、前述の書籍には、①栄養改善、②運動処方が取り上げられています。
運動を勧めるのはある意味当たり前のことなので、ここでは①の栄養改善に注目します。以下の栄養素を摂取するように記載されています。
・ロイシンを含んだ必須アミノ酸
・脂肪酸(特にω3脂肪酸、オレイン酸)
・ビタミンD
それらを摂取するのは結構な事ですが、大切な事がこの本には書かれていません。
それは脂肪を蓄積させる炭水化物の摂取を控えること、です。
肥満を起こす諸悪の根源である炭水化物の問題を放置したまま、蛋白質・脂肪・ビタミンDを摂りなさいと言ったところで問題は解決できないと思います。
それはあたかも、糖質の問題を放置して血糖値を下げる薬を使うが如くの愚行です。
よく私が糖質制限指導をしていても、やせて来られなかった患者さんが「運動が足りないってことなんでしょうねぇ」という言い訳をされるのですが、
炭水化物過剰の問題を放置したまま、運動習慣をつけなさいと言われても土台無理な話です。
炭水化物過剰のまま運動しようとしたって、身体は重いし気力はわかないし一生懸命やっても成果は乏しいし、運動後に強烈な空腹感が襲ってリバウンドしやすいし・・・
少なくとも私自身はそうでした。糖質を制限してからというもの私は誰に言われるでもなくそれまでの車通勤をやめて徒歩通勤をするようになり(片道30~40分)、ジム通いもするようになりました。
どう考えてもサルコペニア肥満を改善するには炭水化物を減らすことが最優先です。
「サルコペニア肥満」などと新しい概念を作るのはいいですが、
本質を見失わないようにしていきたいですね。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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同じ経験しました
私も30代はスポーツが好きでミニトライアスロンやハーフマラソンに挑戦し筋トレの毎日を過ごしました。体重75kgでした。
仕事のストレス等でスポーツをやめ途体重100kg超えのお身体に・・・・体調不良から通院初めて糖尿病が確定。
その時ドクターから筋肉はあっても鍛えないでいると速脂肪になることいわれました。
でもご飯・らーめんが好きで肥る一方でした。こうなると運動は長続きしません。
糖尿病からの合併症の発症で体の危険度しりました。
その時知ったのがスーパー糖質制限です。最初は駄目もとで始めるとわずか3か月で10数類の薬をやめることができました。
糖尿病・うつ病・脊柱管狭窄症も手術回避まだまだあります。
糖質制限で体がすごく楽になりました。
何がと聞かれると体全体としか答えられませんが!!!
糖質制限はダイエットしながら体質も改善できます。
これからも先生、糖質制限発信してください。
糖質制限仲間増やしましょう。
サルコも、ロコモもメタボも・・・
たがしゅう先生のアドバイスぐっときます。
スタンダートからスーパーへ・・・ですね?
最大の問題は、週末ごとのスキー場通いです。
弁当持参以外に、糖質抜きは難しいです。レストランはほとんど、ラーメン、カレーですからね。お弁当は冷え冷え、カチンコチンになってしまうので、どうしたらいいのか、難題ですわ・・・
さて、最近「健康スポーツ医」取得のための講習を受けましたが、栄養分野のお話は旧態依然としたものばかりで、聞いていて吐き気をも感じてしまうくらいでした。
若者アスリートが教えられる栄養指導がすべて、バランスよく、たくさんご飯を食べる!というものですから、私なんぞは、太刀打ちできないよ~と弱気になってしまいます。
なんとか、誰も歩いていない、アスリートの糖質制限について、道をつけていかねばと考えあぐねているところに、今日のサルコペニアです。年寄りも若者も、原則は一緒なんでしょうが・・・
Re: 同じ経験しました
いつもコメント頂き有難うございます。
> 糖質制限で体がすごく楽になりました。
> 何がと聞かれると体全体としか答えられませんが!!!
同感です。やった人にしかわからない感覚ですよね。
> これからも先生、糖質制限発信してください。
> 糖質制限仲間増やしましょう。
了解です。どこまで行けるかわかりませんが、マイペースで出来る限り続けようと思います。これからも宜しくお願いします。
Re: サルコも、ロコモもメタボも・・・
いつもコメントを頂き有難うございます。
私の場合は肥満からスタートしている関係もあって、スーパー糖質制限にする方が楽です。
昼に医局で弁当が出る日もあるのですが、その中のおかずだけ食べて後は残します。量的にはほんの少しになりますが、空腹感がコントロールできるのでそれで苦もなく過ごせています。
私なら、外での食事は食べない、ですみますが、元がやせている方は多分そう簡単にはいかないのでしょうね。ともあれいろいろな事情はどうしてもあるので、無理のない範囲でやるのがよいと思います。
糖質の影響の違いでは
私は糖質を摂るとだるくなってやる気がなくなるタイプなんですが、こういう仮説も考えられませんか。
「糖質過剰摂取」→「だるい・やる気がなくなる」→「まだ働ける若さあり」
⇒「だるくてもつらくても苦しくても働く」←これはかつての私
「糖質過剰摂取」→「だるい・やる気がなくなる」→「もう働ける若さなし」
⇒「引きこもり老人」
老後の心身の健康のためには、年を取っても適当に糖質を控えるのは大事だと思いました。おばあちゃん孝行におまんじゅうをあげるのも、考えものです。
Re: 糖質の影響の違いでは
いつもコメント頂き有難うございます。
「だるくなる、やる気がなくなる」というのも糖質の悪影響としてありますね。
メタボなのか、サルコペニア肥満なのかは、ただの表現型の違いだと思っています。
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