孤独を有効活用する
2018/01/08 00:00:01 |
おすすめ本 |
コメント:2件
糖質制限実践者がまだ世の中の多数派となっていない現状においては、
「孤独」というものとどのように向き合うかはひとつの大きなテーマです。
だいぶテレビや雑誌などマスコミの影響で糖質制限というものが、ダイエットとしての偏った形ではあるものの、
言葉としては周知されてきましたが、周りを見ればまだまだ糖質制限を実践している人は変わり者扱いで、
医療の現場においても、同じような状況に立たされています。
私は私のいる病院で、ある程度の範囲内で糖質制限指導を実践させてもらえるようにはなりましたが、
それでも精神的な孤立感は基本的に変わりません。 なぜならば仲間達が糖質制限を私と同じように糖質制限を理解しているわけではなく、
私という変わり者を受け入れてくれる器が大きいだけで、私と同じ目線で世の中を見ていないからです。
おそらく医療者の中には、私のように公言はしないものの糖質制限の妥当性を理解している人はひっそりと存在していて、
しかし公言すれば、上述の「孤独」を味わうことになるため、それを恐れて公言できずに自分だけのために糖質制限に取り組んでいる医療者もいるのではないかと推測されます。
ところがこの「孤独」という状況は、考えようによっては自分のレベルを高める大チャンスなのです。
先日帰省期間中に、そんなことを考えさせられる一冊の本を読みました。
人生の「質」を上げる 孤独をたのしむ力 単行本(ソフトカバー) – 2017/11/2
午堂 登紀雄 (著)
著者の午堂登紀雄(ごどう ときお)氏は、中央大学経済学部卒の公認会計士で、世界的な経営コンサルタントとして活躍され、
『33歳で資産3億円をつくった私の方法』(三笠書房)、『「いい人」をやめれば人生はうまくいく』(日本実業出版社)などの著者があり、
現在は自身で会社を起業され、不動産投資コンサルティングを手がけるかたわら、資産運用やビジネススキルに関するセミナー、講演を行うなどマルチに活動されている方です。
本屋でたまたま手に取った本でしたが、読んでみて非常に納得のいく内容が満載の本でした。いくつか読者の皆様にご紹介させて頂きます。
(以下、「はじめに」より引用)
昨今は、LINEやフェイスブック、インスタグラムといったSNS、そしてそれらが使えるスマートフォンの普及によって、
つねに誰かとつながっている「常時接続」の時代になっています。
こうしたSNSは、人間の承認欲求を満たすには格好のツールです。
若い人の中には自分の見られ方を非常に気にし、「いいね!」欲しさに写真映えを工夫する人も少なくありません。
そして、多くの人は「孤独」や「ぼっち」という言葉に対してネガティブな印象を持っていると思います。
実際、日本人の中には、人とのつながりこそ重要であり、「孤独はよくないことだ」という常識があります。
「人間はひとりでは生きていけない」という言葉に、「それは違う」と正面切って反対できる人は多くないと思います。
(中略)
そのため多くの人は孤独を避けようとし、ひとりでいるところを見られまい、知られまいと振る舞います。
しかし本当は、孤独がみじめなのではなく、「孤独はみじめだ」と思い込んでいる自分の固定観念に原因があります。
(中略)
そうした思い込みは、ひとりにならないよう、寂しい人間だと思われないように、
自分とは合わない人とでも無理につきあう、合わないグループに自分を抑えてでも所属する、という行動を生み出します。
しかしそれでは、本当の自分を出しているわけではなく、我慢して周囲に合わせて生きているので、いずれ精神的につらくなります。
そうやって人間関係に疲弊し、行き詰っている人は少なくありません。
そんな時代だからこそ獲得したいのが「孤独力」です。
本書でいう孤独力とは、他人との接触を避け、物理的な孤独の状態そのものを愛するような、自閉的な意味ではありません。
孤独力とは、社会の中で人と関わりあいながらも、つねに自分の意志を主軸に置いて自己責任で生きようとする姿勢のことです。
この姿勢があれば、誰かと一緒でもたのしめるし、ひとりでもたのしめます。
物理的に孤独になったとしても寂しさを感じることはありません。
そうした感覚を強く持つためには、自分との対話、つまり内省という習慣を手に入れることです。
内省とは、自分の価値観を受け入れ、それをベースに経験を振り返って分析し、
思考体系と行動体系を軌道修正し、自らを成長させていく、高度に知的な作業です。
(引用、ここまで)
「人間は社会的な動物だ」とはかの有名な哲学者アリストテレスが述べた言葉ですが、
その考えに基本的に私は賛成で、糖質制限を広めていくためには大多数を占める糖質文化の社会と、
いかに共存させていくかを検討するべきだというのが最近私の中を占めている考えでしたが、
共存させようと思えば思うほど、妥協の側面が強くなり、結局社会を変えていくのを諦めるという行動につながるので悩ましく思っているところでした。
しかし、上記引用文を踏まえれば、自分の主軸部分はずらさず妥協しないことで生じる孤独は、
それはそれで楽しむことができれば、社会ともうまく関わりつつ、かつ自分の軸もずらさずに済む共存関係を築くことができるようになるのではないかと私は思いました。
この本にはそんな孤独を高度に楽しむためのノウハウが満載で、
言われてみれば確かにと思うことが例えも交えてわかりやすく書かれており、大変読みやすく勉強になる本でした。
ラッセルの幸福論の後にこの本に出会うというのも何かの縁のように感じます。
もうしばらくこの本から学んだことを紹介しつつ、
私の中での内省を深めてみようと思います。
たがしゅう
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
ネガティブケイパビリティのこと
この正月に20代の頃から30年間余り悩んでいたことが解決の見通しがつく経験をしたのです。
この30年間、来る日も来る日も同じ問いを繰り返しては返って来ない答えについて、試行錯誤を繰り返していました。自分固有の問題である以上、誰かに解決策を求めても、理解してもらえないことは自明であったので、自分で答えを出さなければならない課題として取り組んできました。
その時に出会ったのが、ネガティブケイパビリティという言葉。
これは古来からある、忍耐力とか我慢という精神論ではなく、解けない問題を自分の身の丈に合わせ、日常生活と問題を同居させながら、やりくりしていこうという生活態度。作家の帚木蓬生という方が紹介されています。先生も隣接の医療分野ですので、とっくにご存知かも知れません。
http://book.asahi.com/reviews/column/2017052800012.html
面白いのは、この言葉と出会ったのが、30年間悩んだ問題が解ける直前ということ。偶然の一致かも知れませんが、問題の回答出る直前には、自然と自分の行なってきたことについてふさわしい言葉に出会うんですね。
先生は、開拓者として順風満帆とはいえない道をこれから進まれようとしておられることは第三者から見ても明らかです。成果がいつ出るかはわかりませんが、答えが出る直前にはこのような不思議が起こることを楽しみに日々の診療に従事していただければと思います。
ブログ読者からのツッコミですが、これだけ多くの人から共感のコメントもらっておきながら孤独感というのは、贅沢な悩みです。
Re: ネガティブケイパビリティのこと
コメント頂き有難うございます。
> ネガティブケイパビリティという言葉。
> 解けない問題を自分の身の丈に合わせ、日常生活と問題を同居させながら、やりくりしていこうという生活態度。
ネガティブケイパビリティ、興味があります。
ラッセルの幸福論とも通じる考え方であるようにも思えます。
現実生活で孤独でも精神生活の中でそうではない状況を作り出すには、身の丈にあった問題認識・処理を行っていく姿勢が大切なのかもしれませんね。
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