抗生物質乱用は漢方薬を効きにくくする
2017/12/21 00:00:01 |
漢方のこと |
コメント:12件
私が普段診る機会の多い高齢で寝たきりの患者さんの多くは、
誤嚥性肺炎や尿路感染症といった感染症による発熱をしばしば繰り返します。
その都度やむなく抗生物質を使用して制御を試みて、一旦発熱は治まるのですが、
そういう患者さんに限って抗生剤投与が終わってほどなくして再び発熱を繰り返したりします。
そしてまた抗生物質を使用して発熱を抑え、また再発して抗生物質を使ってと、
そんな事を繰り返している内に、抗生物質は次第に効かなくなり、炎症が抑えきれなくなり、
ついには消耗疲弊してそのままお亡くなりになられるという例も珍しくありません。
そんな事態を未然に防ぐために私は漢方薬を併用して、できるだけ抗生物質を使わなくて済む状況を作ろうとするのですが、
こういう患者さんに対して私の漢方薬は効果を示さないことが多いのです。
勿論それは単純に私の漢方の腕が一定のレベルに達していないという可能性もかなり高いのですが、
もう一つの可能性としては、抗生物質の乱用が漢方薬を効きにくくしているということが考えられます。
どういうことかと言いますと、そもそも漢方薬で感染症による発熱をコントロールしようとする時、
その時漢方薬がやっていることは大きく言えば、自分の持つ免疫システムを高めるような働きです。
そしてその免疫システムの一端を担っているのが、皆さんも御存知「腸内細菌」です。
抗生物質を使うと、確かに炎症の元となっている起炎菌をやっつけることができますが、
それと同時に無害な腸内細菌も一緒にやっつけることにつながります。
つまり抗生物質を使えば確かに熱は治まるけれど、それと同時に免疫システムにも一部障害をきたすということです。
長年熱に対して抗生物質を飲むという行為を繰り返してきた患者さんは、その行為の度に腸内細菌が死滅し、
次第に抗生物質がなければ炎症が抑えられない抗生物質依存症の状態に陥ってしまいます。
そして最終型としてその抗生物質さえも効かなくなる「耐性化」という現象が起こり、もはや抗生物質も漢方薬も効かない状態へと陥ってしまうのではないかと推察されます。
漢方の古典を読んでいますと、現代における高齢寝たきりのような衰弱した患者さんに対しても、
漢方薬をうまく調合することで劇的に回復させることができた症例などが紹介されたりしています。
それに準じて漢方薬を処方しても現実の症例で全く効果を示さないのは、
古典が書かれた時代において抗生物質の乱用という要素がなく、最低限の腸内細菌は生き残っていて漢方薬が反応する余地が残されているからではないかと思うのです。
漢方薬が効くために腸内細菌の存在が欠かせないというのは以前配糖体を学んだ時にも紹介しました。
完全なる私の推論ではありますが、現実の患者さんと向き合っているとどうしてもそのような考えが頭をよぎります。
若い人でも風邪で熱を出す度に医者にかかり抗生物質を処方してもらう行為を繰り返している人は、
風邪が肺炎などに発展しやすく、しかも漢方薬がうまく効かないというケースも過去に経験したことがあります。
漢方薬で抗生物質を節約する前に大切なことは、そもそも抗生物質を使わないで済む治療を心がけることだと思います。
いわば抗生物質依存症を防ぐための抗生物質制限です。
糖尿病を防ぐための糖質制限と共通構造を持っていると思います。
しかしこの問題が根深いのは「抗生物質を出してもらうと安心」という患者側の多数派意識と、
「感染症に対しては抗生物質」だとする医師側の多数派意識の両方が慣習レベルで根付いていることです。
新しい医療を構築していくための道のりはまだまだ先は長そうです。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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誤嚥性肺炎、風邪、漢方薬でなく、
抗生物質を使うイメージしかないです。
漢方薬と組み合わせることで元気になることもあるんですね‼️
Re: 先生、こんにちは
コメント頂き有難うごじます。
生姜は温性でどちらかと言えば体力のない人用の生薬だと思います。
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます。
抗生剤も漢方薬も正しく効かせるには、身体の機能が正常に働いていることが大前提だと思います。
No title
私が見ている患者さんもそういう方々がとても多い。
高齢者、発熱したら誤嚥性肺炎か尿路感染症という病名がつき、
「とりあえず絶食」「とりあえず抗生剤」
点滴で維持、たべないから入れ歯外す
→消化管廃用進む、入れ歯外してるからさらに咀嚼も嚥下も廃用進む
→使わない腸管薄くなってバリアが薄くなっておそらくは腸内細菌の日和見感染からの不明熱増える
→更に食べれなくなり廃用まっしぐら・・・
カンナで削っていくように,
削ぐように徐々に命がなくなる。
正直それが自分だったらそこまでして生き延びることが嫌だなと思います。
それはずっと思い続けています。
ぴんぴんころり、って今の日本ではとても困難です。
食べることが基本。
私もできる形で発信し続けようと思います。
食べることは生きることです。
どうぞ先生、頑張ってください。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
また共感頂いて嬉しく思います。
> ぴんぴんころり、って今の日本ではとても困難です。
本当にその通りです。
正しいと思うこともそれをしにくくさせる様々な壁があり、それぞれに根深い問題があります。
解決は容易ではありませんが、一歩一歩着実に動かしていくべきと思います。
生命活動をエンジンに例えるなら、むやみに酷使して故障させるような使い方ではなく、
大事に使って静かにエンジンの寿命を迎えるような身体の使い方を心がけていきたいものですね。
磁気療法を行えば、抗生物質も、抗ウイルス薬も、抗アレルギー薬も、漢方薬も必要ない
抗生剤やステロイドなど、薬物をまったく使わなくても、肺炎や膀胱炎は治せる。
帯状疱疹は、抗ウイルス薬を使わなくも治せる。
花粉やダニ、ハウスダストなどによるアレルギー性鼻炎なども、薬物は必要ありません。
いずれも、即効的に完治可能です。
Re: 磁気療法を行えば、抗生物質も、抗ウイルス薬も、抗アレルギー薬も、漢方薬も必要ない
情報を頂き有難うございます。
私の知らない世界です。まずは少しずつ勉強させて頂きたく存じます。
No title
そのメカニズムと、どのように物理的作用を加えればタンパク質分子が正常化するか、その条件が解明されている。磁気療法は現代医学をはるかに上回る最強の治療法といえる。エレキバンや棒磁石程度で即効的に治癒できる。
磁気療法の考え方などは、ブログに断片的に書いていますが、詳細は電子書籍として公開しています。これまでの磁気療法とはまった異なる理論です。物質科学の基本法則である量子力学的知見に基づく治療理論であり、いわゆる「ニセ科学」ではありません。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
興味深いので電子書籍、購入させて頂きました。
拝読し、私の治療方針に取り入れられるかどうか検討させて頂きたいと思います。
No title
したがって、内容をコピーしたり、要約を作成して、出版、ネットに送信、講演など、有形・無形を問わず許可なく流布することは、著作権の侵害に当たる可能性があります。
論文を書かれることがあれば、ご存じのことと思いますが、著作権法違反にならないよう十分ご注意ください。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
著作権について十分に留意させて頂きます。
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