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硫黄呼吸について学ぶ

category - 医療ニュース
2017/ 12/ 15
                 
世の中はわかったようでまだまだわからない事だらけだという事を時々考えさせられます。

先日いつものようにネットで医療ニュースを見ていたら、次のような記事が目に飛び込んできました。

硫黄呼吸
哺乳類も ヒト生命維持に不可欠
毎日新聞2017年10月27日 23時00分(最終更新 10月27日 23時10分)


通常、私達の呼吸は酸素を用いて行われていることが常識ですが、

そうではない硫黄呼吸というシステムが実はヒトも含めた哺乳類細胞に備わっていた事を示した研究報告です。
            

(以下、記事より引用)

哺乳類の細胞が、酸素だけでなく、食物に含まれる硫黄を使った呼吸(硫黄呼吸)をしていることが分かったと、

赤池孝章・東北大教授(生化学・微生物学)らの研究グループが27日付の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表した。

硫黄呼吸は原始的な細菌だけが行っており、進化の過程で失われたと考えられてきたが、ヒトなどでも生命維持に不可欠だという。

細胞レベルでは、呼吸はエネルギーを作り出す活動を指す。生物は細胞内にあるミトコンドリアで、主にブドウ糖と酸素からエネルギーを作って利用している。

研究グループはヒトやマウスのミトコンドリアを詳しく調べ、アミノ酸の一種のシステインと硫黄が酵素の働きによって結びついて活性化し、エネルギーを生み出していることを見つけた。

硫黄呼吸をできなくしたマウスの寿命は約10日しかなかった。

硫黄は酸素のように常に外から取り入れているわけではなく、食物に含まれる硫黄を体内でリサイクルしながら使っているという。

心臓や骨髄など酸素を大量に使う器官は酸欠になりやすく、こうした器官で硫黄呼吸は重要な働きを担っているとみられる。

硫黄呼吸は、地球上にまだ酸素がなかった30億年以上前に、古細菌などの生物がエネルギーを得るために獲得した仕組みとされる。

赤池教授は「古代の生物が持っていた呼吸が、忘れ去られながらも使われ続けてきたことは驚きだ」と話す。

(引用、ここまで)



硫黄呼吸というのは私はこの記事で初めて知りましたし、

生理学の教科書を引っ張り出してみても、硫黄呼吸については全く記載がありません。

しかしちょっと目線を変えて、植物生理学の本をひも解いてみると、これが見事に「硫黄代謝」という項目があるのです。

植物の代謝だから人間には関係ないんじゃないかと思われるかもしれませんが、あながちそうでもありません。

例えば、強力な抗酸化作用を持つことで知られる生体内酵素グルタチオンは硫黄(S)を必要とする構造を持っています。

また引用記事中にもありますが、システインやメチオニン、タウリンやホモシステインなど、硫黄を含むアミノ酸を含硫(がんりゅう)アミノ酸と言い、私達の身体に重要な構成要素となっています。

興味深いのは酸素のように外からの供給に頼るのではなく、硫黄のリサイクルを通じて行われる呼吸だという点です。

リサイクルと言えばオートファジーです。タンパク質をリサイクルするオートファジーがしっかりと働いている状況においては、

硫黄呼吸もスムーズに行われやすいというつながりもある可能性があります。

もしその仮説が正しければ、糖質過剰摂取で高インスリン血症となりオートファジーが抑制されきっている多くの現代人の食生活においては、

オートファジーの抑制とともに現代人の硫黄呼吸は錆びついてしまっているという可能性が見えてきます。

折角古代から受け継がれてきた素晴らしい生命維持システムを、私達は知らず知らずのうちに封じ込めてしまっているのかもしれません。

さらに誤解を恐れず空想を巡らせるとするならば、

以前紹介した地中で光も閉ざされた空間の中で酸素もなく断食し続けるというアンダーグラウンドサマディ

これは断食理解派の私でも、光合成の可能性も絶たれている状況なのに、果たして本当にそんな事が可能なのかと疑問に思っていましたが、

オートファジー慣れした優れた修行者なら硫黄呼吸の働きを最大限に利用することで短期間なら実践可能なのかもしれないとも思いました。

いずれにしてもわからないことは安易に結論づけず、

わからないもののまま付き合っていく姿勢が大事であるように私は思います。


たがしゅう
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コメント

非公開コメント
        

分からないものはそのままにしてたいけど、やっぱり調べたくなります。
今はネットで簡単に検索できる時代、
何でも簡単に分かりますね。
糖質制限、賛否両論ありますが、
糖質を食べると止まらなくなるし、
糖質を避けても無性に食べたくなるし、
うまくいきません。
糖質が身の回りに沢山あることにきづきました。

No title
いつも興味深い記事をありがとうございます。

「硫黄呼吸」、衝撃です。
ミトコンドリア以前の古細菌のしくみが残っているのですね。

以前、先生が紹介された脳の進化のようです。
古い機能を残しつつ、新しい機能を上書き。

生物の進化の起源を探ると、
たくさんの衝撃が見つかりそうです。

「温故知新」です。

Re: タイトルなし
瀬川里香 さん

コメント頂き有難うございます。

わからないことを調べるなという意味ではありません。
調べても分からないことを安易に結論づけてはいけないということです。

例えば私が勉強しているホメオパシーはメカニズムは全くわかりませんが明らかな治療効果をもたらしている治療法です。
分からないからといって非科学的で意味がないと安易に結論づけてはいけないということです。可能性を保留にして学び続けるということです。ただし学び続けた結果、意味がないという結論に至る可能性もあると思います。
Re: No title
Etsuko さん

コメント頂き有難うございます。

こういう「わかってないけど実はある」というものは実際にはたくさんあるんだろうなと思ってしまいます。