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体調を感じる力をメンテナンスする

category - 普段の診療より
2017/ 12/ 04
                 
常日頃、このブログで「体調は最良のバロメータ」ということを言っておりますが、

自分の体調を冷静に観察できる力がなければ、このバロメータは正しく機能しないことには注意しておく必要があります。

というのも先日、診療の中でこんなことがありました。

70代の女性で風邪を引いたと言われて内科を受診された患者さんです。

私は漢方を扱う医師ということもあり、脈とかお腹とか比較的患者さんの身体をよく触れるのですが、

風邪云々の前にこの患者さんの手を触るとまるで氷のように冷たく冷えていることに気付きました。
            

両手先が冷えているというところまでは、最近外も冷え込んだということもあって、日常診療の中でよくあることなのですが、

この患者さんの場合は、手の冷たさにとどまらず顔やお腹まで全身が冷えているような状態で、唯一冷えていないのは背中くらいのものでした。

「身体が冷えていますね。普段から冷え症で困っているのではないですか?」とその患者さんに尋ねたところ、

「いえ、別に冷え症とかはないです。」と答えられるのです。

おかしいな、こんなに冷えているのに…と思いながらも、胸の音を聞くために衣服を挙げてもらうように促すと、

びっくりする事にこの患者さん、6枚もの重ね着をしている事が分かりました。

「こんなに着込んでいるということは冷えて困っているということではないですか?」と尋ねてもいまいちピンときていないようなリアクションをされました。

冷え症とは他覚的な冷えの有無にかかわらず自覚的に冷えを感じる働きが鋭敏になっている状態だと紹介しましたが、

この患者さんはそれとは逆で、他覚的には強固な冷えが認められるにもかかわらず、自覚的に冷えを感じられていない状態にあります。

言わば冷えを感じる機能の消耗疲弊だとも言えるかもしれません。

この患者さんにおいて最良のバロメータとなるはずの冷えを感じる機能はほとんど機能しておらず、

風邪という形にまでこじれて初めて症状として自覚される状況に至っています。

まさに漢方の世界で言われる標治(ひょうち)と本治(ほんち)という概念の重要性を強く感じさせられます。

私はこの患者さんに風邪とともに冷えも治していく必要について説明をしました。



一般にヒトの身体は使わない機能は衰えていくものですが、

体調を感じる感覚についても決して例外ではないのだと思いました。

普段からこまめに自分の身体からの声を聞く努力を怠らないようにしておくこと、

一方でその機能がオーバーヒートしないように、時々は一切を忘れて身体を休めるようにすること、

「体調が最良のバロメータ」として機能するためには、そのようなバランスを意識したメンテナンスを、

常日頃から行っておく必要があると私は感じました。


たがしゅう

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コメント

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No title
たがしゅう先生、私は脊髄性小児まひで腰から下はそれこそ氷のように冷たく、私の足を触った看護師がこんな冷たい人初めて!!といわれるほどです。ですが自分では冷えは感じないのです、真冬でも厚着しません、冷えてるのが当たり前なので慣れてしまってるのでしょうが?又は機能が働いてないのでしょうか?
Re: No title
ココア さん

 御質問頂き有難うございます。

> 私は脊髄性小児まひで腰から下はそれこそ氷のように冷たく、私の足を触った看護師がこんな冷たい人初めて!!といわれるほどです。ですが自分では冷えは感じないのです、真冬でも厚着しません、冷えてるのが当たり前なので慣れてしまってるのでしょうが?又は機能が働いてないのでしょうか?

脊髄麻痺の場合は、「機能低下」という事になると思います。