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医療者向け糖質制限講演会雑感

category - イベント参加
2013/ 12/ 11
                 
週末の後半、日曜日はお勉強の時間です。

2013年12月8日(日)東京品川で開かれた医療関係者向けの糖質制限講演会に参加して参りました。

江部先生を理事長とする日本糖質制限医療推進協会主催のセミナーです。

13:00~16:30という時間の中での三部構成でしたが、

第一部は糖質制限の「基礎理論」、第二部は「症例検討と薬剤の使い方」をテーマとして江部先生が、

第三部は「糖質制限食 食事指導の実際」と題して、協会所属の栄養士さんが講演されました。

なかなかタイトなスケジュールであっという間に時間が過ぎる感じでした。

参加してみて感じた印象をざっくばらんに書き連ねてみたいと思います。
            

まず江部先生の第一部、第二部に関してですが、

今回医療関係者向けということでかなり踏み込んだ内容になることを期待していましたが、

全体としては書籍やブログに書かれている内容を再確認していくという流れでした。

ブログのヘビーユーザーや糖質制限実践歴の長い人達にとっては少し物足りない内容だったかもしれません。

でも講演スライドのCD-ROMが頂けるというのはこれから勉強に取り組む人にとっては有難かったと思います。

ただ私が実際に参加してみてよかったと思ったのは、

講演スライドに書かれていたことよりも、むしろ口頭で言われたことの方です。

例えば、
「アメリカの牛乳には全て砂糖が入っているので、ADAの見解を解釈する時に注意が必要」

「日本脂質栄養学会がアレルギーの原因がリノール酸の摂りすぎである可能性を述べている」

「糖新生を行う酵素とアセトアルデヒドを分解する酵素が重なっているので、夜お酒を飲みすぎると朝方低血糖になる可能性がある」

などです。

また第二部での症例検討については具体的な薬剤調整の話を期待していたのですが、

だいたいが困難症例も「スーパー糖質制限食でうまくいった」というような内容でした。

スーパー糖質制限食の効果が高いことは良く知っていることでしたので、少し物足りなさがあることは否めませんでした。

ただひとつ良かったのは、一例うまくいかなかった症例を提示して頂いたことでした。

1型糖尿病で内因性インスリンゼロ、HbA1c14.5%の症例に対して、急速にインスリンを減量しすぎてケトアシドーシスを発症したという症例でした。

こういう症例にこそ学ぶべきこと(clinical pearl)があるものです。

この症例ではスーパー糖質制限食に切り替えると同時に、基礎インスリンを15単位→4単位へ、速効型インスリンを15~18単位/回を1日3回投与されていたのを完全中止したとのことでした。

スーパー糖質制限食で減らした糖質量に見合った量のインスリンを減らすのが正解だと思うのですが、

実際医者側の立場としては糖質量とインスリンの需要に若干の個人差があるためにそのさじ加減がよくわからなかったりするのです。

なのでこの症例は今回私にとって大変勉強になるものでした。

このように失敗例とまではいかなくとも、「スーパー糖質制限食だけではダメでこういう薬をこういう理屈で使ってうまくいきました」というような症例をもっと紹介してほしかったですね。

第三部は栄養士さんの発表です。

発表された松本栄養士は妊娠糖尿病に限って糖質制限を導入されている立場の方でした。

話はユーモアを交えて面白く、しかも生活者としての視点も交えてお話されておりとても共感できるものがありました。

例えば、

「夏は昼になると主婦はソーメンを食べる人が多い。本人としてはサラサラという表現を使う」

「カレーはバランスがいいと思っている人も結構いる」

「2度3度糖質制限の話をしていても、いつのまにかカロリーの摂りすぎはよくない、油がよくないという話に逆戻り。もう日本人の頭に刷り込まれてしまっている」

などです。

また栄養士さんの本音が聞けたことも収穫でした。

というのも,会場からこんな質問が出ました。

「三大栄養素は糖質、脂質、蛋白質といわれるが、蛋白質、脂質、ビタミン、ミネラルは必須栄養素、糖質は必須ではない。栄養士界でのこの事実の位置づけは?」

これに対して栄養士さんは

「炭水化物が必須かどうかは考えておらず、とるべきものだと解釈してしまっている。なかなか科学的に考えれない栄養士が多いと思う。」

と答えられましたが、非常に率直な御意見です。まさにこれが今ほとんどの栄養士の実態なのだと思います。

私は栄養士さんこそ自分の仕事に誇りを持って糖質制限革命を起こしていって頂きたいと思っています。

今回の発表は妊娠糖尿病の人へ限った話でしたが、実際にはそれ以外にも栄養学的な問題は山積なのです。

「こどもへの糖質制限はどこまで勧めるべきか」
「高齢者の価値観と共存させるための糖質制限の工夫は」
「偏った糖質制限によりビタミン、ミネラルのバランスをきたすのはどんなケースか、そしてどうすべきか」

従来の栄養学の教科書を読むだけでは、いくら穴があくほど勉強していてもこれらへの答えは出てきません。

糖質制限の理論を知り、自分で考えて、患者さんを通じて実践し、新しい理論を作っていくしかないのです。

そういう意味では糖質制限理論への道を歩み始めた栄養士さん達の今後に期待です。


最後に全体を通じて言えることですが、

「医療関係者向け」という看板で企画された今回の講演でしたが、

「すでに糖質制限を実践されている人」向けなのか、「これから糖質制限を実践しようかどうか悩んでいる人」向けなのかが不明確であったのは少し残念でした。

なぜなら前者と後者で話す内容は全く異なってくるからです。この辺りが今後はさらに対象を明確にしてもらうとよいかと思いました。

私の場合は江部先生の講演を聞くのは今回が初めてではなかったので、

個人的には2013年糖質制限飛躍の年をまとめるに当たって、よい総復習になりました。



今年もあともう少しとなりました。

来年の干支は午(ウマ)だそうです。

まだまだ困難な道のりが続くと思いますが、

ひるむことなく駆け抜けていきたいです。


たがしゅう

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コメント

非公開コメント
        

私も参加して、そう思いました
>今回医療関係者向けということでかなり踏み込んだ内容になることを期待していましたが、全体としては書籍やブログに書かれている内容を再確認していくという流れでした。

>ブログのヘビーユーザーや糖質制限実践歴の長い人達にとっては少し物足りない内容だったかもしれません。

 ここのところ、江部先生もカルピンチョ先生も、ブログで、糖質制限がうまくいかない場合についてコメントされていますが、糖質制限によるさまざまな人の健康の改善の可能性を考えるとき、おそらく10人に1人か2人いらっしゃる、うまくいかない場合についての考察が必要だと思います。

>「スーパー糖質制限食だけではダメでこういう薬をこういう理屈で使ってうまくいきました」というような症例をもっと紹介してほしかった

 と私も思いました。
江部先生が、「SU剤はこの世から消えるもの・・」と言われたのが印象に残っています。

 P.S あの後、なじみのインドカレー店に行って砂糖や豆を使っていないカレーを食べました。食後血糖値105でした。
 私も、精進して勉強いたします。
Re: 私も参加して、そう思いました
わんわん さん

 コメントを頂き有難うございます。

 糖質制限初心者に向けてはかなり有益な講演だったと思いますが、

 中級~上級者に向けてはもう少しという印象は否めませんでしたね。

 治療困難例や失敗例から学ぶことが多いのも中級者以上の方で、初心者がそれを聞くとおそらく混乱してしまいます。そういう意味でも対象をさらに細かく分けるべきではないかと感じました。
No title
たがしゅう先生、先日は眼瞼下垂についてのアドバイスを有難うございました。m(_ _)m
目を冷やす方法を早速取り入れています。この方法とサプリがあれば目薬は当分必要なさそうです。

ちなみに私の住む地域では糖質制限の講義や講習会といったものは聞いた事がありません。実際に医師が説明するのを聞いてみたいものですが、まだまだ田舎では難しいですね。ブログの記事を読むだけでも面白いので、実際に参加出来ればもっと面白そうですが残念です。

糖質制限と言えば周囲はダイエットと思うので、理解をしてもらうのはなかなか難しいですね。「もう日本人の頭に刷り込まれてしまっている」と栄養士さんがおっしゃる通り、やっぱり誰もが(以前は私も)主食をきちんと食べる事が健康的と思っています。

私的には糖質制限を行なっていれば「ガンも恐れる事はない」と考えていますが、これはちょっと飛躍し過ぎでしょうか。でも正常細胞には糖質が必須ではないけれど、ガン細胞には必須と聞きました。まあそんな単純なものでは無いのでしょうが(^^;※この変は気分的なものなので聞き流して下さい

とにかく私にとっては人生を大きく変えてくれた糖質制限なので、もっと多くの医師や栄養士に興味を持って頂けたらなと思います。糖質制限には他にもまだまだ様々な可能性が秘められているように思うのです。
Re: No title
 コメント頂き有難うございます.

> とにかく私にとっては人生を大きく変えてくれた糖質制限なので、もっと多くの医師や栄養士に興味を持って頂けたらなと思います。糖質制限には他にもまだまだ様々な可能性が秘められているように思うのです。

 そう思います.学べば学ぶほど,糖質制限が単なるダイエットではないということがわかります.

 少し仰々しい言い方にはなりますが,ヒトの本来の姿に戻す作業だと考えています.
No title
こんばんわ
土曜日はお世話になりました。

まさか先生とこんな身近にお話していただけるなんて
思ってもみなくて・・・
気さくでまじめなお人柄。 こんな素敵なお医者様がいるなんて
温かい気持ちになりました。

普段お医者さまと付き合い方で 困っている私の愚痴まで聞いてくださり
立場は違えど 悩みは皆同じなんですねー
とても勉強になり 勇気づけられました。
これからも くじけずに 患者さんのために
勉強していこうと思いました。
ありがとうございました。
本当に縁って不思議なものですね。

また私が参加できなかった日曜の
詳細の報告ありがとうございます。

なかなか人に糖質制限制限のメリットを的確に伝えられないのが
悩みどころです。
世の中の啓蒙もあって 最近は炭水化物は減らした方がいいのよねー
って言う方も若干ですが 増えつつありますが
まだまだ拒否される方も多くて どうしたら理解していただけるのか・・
勉強不足を痛感しました。
特に 栄養学はもっと勉強したいです。

先生のブログを通して知識を増やしてい行きたいと思います。
これからもよろしくお願いします。

機会があれば またぜひオフ会に参加してくださいね。
Re: No title
ぱにぃ さん

 コメント頂き有難うございます。また土曜日はこちらこそ有難うございました。

 オフ会楽しかったですね。是非また都合が合えば参加させて頂きたいと思います。

 今後とも宜しくお願い申し上げます。
自分の子にはおやつをあげないようにしています。
三大栄養素と必須栄養素の質問をした安谷屋(アダニヤ)です。
取り上げてくださりうれしく思いコメントしました。
沖縄で6月に開業しました。
5年前だったかなぁ、熊本県の栄養士会会長に『糖質制限なんてとんでもない!』と言われたこともあります。
根拠は『東大の偉い先生がそう言っている』でしたが・・・
会長でこの体たらくかと思ったものでした。
ただアレから大分経っていますし、栄養士会全体の雰囲気も変わっていることと思います。
個人的には、こどものうちからしっかり糖質制限できれば、アフリカの人のような締まった体型になるのではないかと思っています。
うちの子にはプチが限界ですが(笑)
Re: 自分の子にはおやつをあげないようにしています。
ゆいゆい 先生

 はじめまして.コメントを頂き有難うございます.

> 根拠は『東大の偉い先生がそう言っている』

 残念な発言ですね.完全に思考停止です.

 まるで医者の下請け業者,とでもいうような姿勢の人があまりにも多すぎます.

 今日も下痢に対して薬剤完全拒否の人に食事療法でアプローチしたいと栄養士に相談したら,何を何g増やすか具体的な指示をもらえないとできないとか言われてしまいました.それを考えるのが栄養士の仕事だと思うのですが….

 栄養士さんはもっと自分の仕事に誇りを持つべきだと思います.食事療法が患者さんに与える影響は絶大ですよね.

 ともあれ今後とも宜しくお願い申し上げます.
はぐれました。
今回は、確かに医療関係者向け、ということでしたが、募集過程の事情で 医療者以外の方の参加も複数あり(当日の飛び入りもありました)少し内容を考慮したのかな、と感じました。

私も、tagashuu先生のおっしゃるように「すでに・・・」と「これから・・・」と、医療者か否か、対象を考えた内容は必要だと思います。
また、難治な症例や対処方法も盛り込んで欲しかった事、他の多数の参加者も感じたと思います。
ただ、必ず存在するはずですし、発信の必要も検討されたのだと思うのですが、
今回は、上記の理由に加えて、CD-ROMを配る東京での初回であり、総集編、ということで、お控えになったのかもしれません。憶測ですが。
我々の要望が叶うような講演を この先期待したいですし、そうした希望を、伝えていきましょう。
自分も実践(実験)しながらさらに学びすすめ、自分で考えて行くことを続けていきたいと思います。

栄養士さんのお話、面白かったですね、内容はやはり殆ど復習、でしたが。(私は講演全体的に、話し方、具体的な文言、どこを強調されてお話になるか、を学びたかったのでそれで十分でした。)
色んな意味で昨年11月の、江部先生と女子栄養大学教授らの対談があった講演(@女子栄養大学、アウェイで!)が、す~ごく面白かったです。
いつもの、同意してうんうんと頷く受講者ばかりでなく、「そんな献立無理よね~」、「お店で残すなんてヒドイじゃん」とヒソヒソ反応する学生さんも混ざり、当然、ネガティブな意見、質問も多数ありました。
受け入れない専門家の視点、勉強になりました。
批判への反論が、少々物足りない気もしましたが、アウェイですもんね。
本当にホームではありえない光景で、未来の栄養士さんを育てている現場での、貴重な機会だったと思います。
その講演後、「私も、こういう教育を受け、糖質をとる献立を、仕方なく毎日作ってるんです。」という栄養士さんに出会いました。
「ここでの江部先生をお呼びした講演なんて、本当にすごいことだと思う。」とおっしゃって、
私が江部先生の本の批判についての意見や、
「インシュリン注射なしに出来るなら、糖質制限食は今後の治療食の選択肢としていいか検討すべきかも、なんていう風に、まあまあに終わりましたよね」と申し上げたら、
「十分に好意的で、そんな意見が、母校の先生から出るとは凄いんですよ」、ということでした。江部先生もその時のブログで、好意的だった、とおっしゃってました・・・。

今回、講演して下さった栄養士さんも、糖質制限を受け入れ理解するまでの困難さ、科学的でない思考が作り上げられていること、ご自分の受けた教育について、言及なさりながらお話くださいましたよね。
後ろに残って、少しお話させていただきました。今後の展望など。

先生と同じく、栄養士さんの今後に期待大です。
高糖質を摂ることでの、辛く悲しいアウトカムを毎日見ている私にとっては、仕事で実践していける彼女や先生たちが羨ましくもあります。
主治医の治療方針には殆ど立ち入れません。糖質制限して良くなった方の話をささやいたり、
患者さんには、どうして膵臓が疲弊するのか、何で血糖って上がるのか、その〇〇には、この位の砂糖、こういうものが低糖質、とかを少しずつ話す・・・、こそこそやってます。
まあ、湿潤療法は、最近少しずつ啓蒙出来ているので、患者さんへの貢献度は、上げていけそうです。

「コーヒーの医学」のご感想もお待ちしています。私もお陰さまであの後もいい本を沢山、「チラ見」しました。
Re: はぐれました。
KCO さん

 いつもお世話になります。詳しい感想&報告をお聞かせ頂き有難うございます。

 ゆっくりと着実に世の中が変わりつつあるのを感じています。

 しかし糖質制限も湿潤療法も、これからやるべき事はまだまだ多いと思うので、引き続きできる事を地道に続けていきたいと思います。

 「コーヒーの医学」なかなか料理するのが難しそうなテーマです。気長にお待ちください(^-^;
 
 ところで今年の漢字が「輪」に決まったそうです。私個人にとってもピッタリな漢字でした。