ビタミンB12が作られる場所
2017/10/24 00:00:01 |
素朴な疑問 |
コメント:2件
ビタミンB12がらみで色々調べていると、
次のような資料に突き当たりました。
LARRY G. SCHEVE
「ライフサイエンス基礎生化学」
駒野徹・中澤淳
中澤晶子・酒井裕
森田潤司 共訳
ビタミンB12と言えば、肉類に圧倒的に多く含まれるため、(p370-371より引用)
"ビタミンB12"または"シアノコバラミン"は微生物のみが合成できる。
微生物が独自に作るのであるが、他の生物と共生した状態で生産することもしばしばある。
植物や動物自身はビタミンB12を作ることができない。これは発酵したチーズ、動物の臓器の肉(肝臓)、ハマグリ、カキ、エビ、ホタテ貝、タラなどの海産物に含まれる。
(引用、ここまで)
肉類を食べないベジタリアンにおいて枯渇しやすいビタミンとしてよく知られていますし、
神経再生を促す作用があるのでしびれをきたす末梢神経障害などの病気に対して薬剤として投与されることも多い重要なビタミンです。
そんなビタミンB12の由来が微生物、特に他の生物と共生状態にある微生物のみで合成されるというのは、私にとってちょっと盲点でした。
肉類にビタミンB12が多いというのも、動物自身がビタミンB12を合成しているのではなく、
微生物が合成したビタミンB12を体内に取り込んだ結果、肉の中にビタミンB12が多く含まれる道筋しかないという事になると思います。
そう言えば以前、私が8日間断食にチャレンジした時に、
全くビタミンを補充していないにも関わらず、ビタミンB12は何故か増加し続けるという事がありました。
今にして思えば、断食により産生されたケトン体が血流を通じて腸内細菌にも栄養を与え、
外部からビタミンB12が補充されない分、腸内細菌のビタミンB12合性能が刺激されビタミンB12の枯渇を防いだのかもしれません。
しかもビタミンB12を経口摂取していた時より、断食している時の方がビタミンB12の値は高いわけですから、
腸内細菌のビタミンB12合性能をあなどってはいけないように私は思います。
逆にビタミンB12をせっせと経口摂取する状況が続けば、
ビタミンB12の合性能が売りの腸内細菌は需要が下がり、他の腸内細菌に取って代わられ淘汰されてしまうかもしれません。
少なくともビタミンB12に関して言えば、
腸内細菌叢次第で外部からビタミン補充しなくても現状維持できる仕組みはあるということになります。
それでは他のビタミンについてはどうなのでしょうか。
断食実験でも全てのビタミンが上昇したわけではないので、皆ビタミンB12と同様だと決めつけるのは早計です。
他のビタミンはどこでどうやって作られているのか、
そこに共通性はあるのか、腸内細菌と各ビタミンとの関わりはどうなのか、
新たに疑問が生まれていくので、また一つずつ調べていきたいと思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
- 2022/05 (2)
- 2022/04 (5)
- 2022/03 (5)
- 2022/02 (4)
- 2022/01 (7)
- 2021/12 (14)
- 2021/11 (4)
- 2021/10 (10)
- 2021/09 (10)
- 2021/08 (8)
- 2021/07 (14)
- 2021/06 (11)
- 2021/05 (17)
- 2021/04 (9)
- 2021/03 (8)
- 2021/02 (9)
- 2021/01 (14)
- 2020/12 (9)
- 2020/11 (7)
- 2020/10 (6)
- 2020/09 (9)
- 2020/08 (11)
- 2020/07 (20)
- 2020/06 (22)
- 2020/05 (18)
- 2020/04 (22)
- 2020/03 (10)
- 2020/02 (7)
- 2020/01 (5)
- 2019/12 (9)
- 2019/11 (19)
- 2019/10 (31)
- 2019/09 (6)
- 2019/08 (7)
- 2019/07 (7)
- 2019/06 (13)
- 2019/05 (21)
- 2019/04 (9)
- 2019/03 (13)
- 2019/02 (15)
- 2019/01 (28)
- 2018/12 (9)
- 2018/11 (2)
- 2018/10 (11)
- 2018/09 (30)
- 2018/08 (31)
- 2018/07 (31)
- 2018/06 (31)
- 2018/05 (31)
- 2018/04 (30)
- 2018/03 (31)
- 2018/02 (29)
- 2018/01 (31)
- 2017/12 (31)
- 2017/11 (30)
- 2017/10 (32)
- 2017/09 (31)
- 2017/08 (31)
- 2017/07 (32)
- 2017/06 (31)
- 2017/05 (31)
- 2017/04 (31)
- 2017/03 (31)
- 2017/02 (29)
- 2017/01 (32)
- 2016/12 (31)
- 2016/11 (30)
- 2016/10 (31)
- 2016/09 (15)
- 2016/08 (11)
- 2016/07 (5)
- 2016/06 (10)
- 2016/05 (8)
- 2016/04 (5)
- 2016/03 (5)
- 2016/02 (10)
- 2016/01 (10)
- 2015/12 (7)
- 2015/11 (8)
- 2015/10 (7)
- 2015/09 (6)
- 2015/08 (6)
- 2015/07 (5)
- 2015/06 (5)
- 2015/05 (5)
- 2015/04 (3)
- 2015/03 (10)
- 2015/02 (28)
- 2015/01 (31)
- 2014/12 (31)
- 2014/11 (31)
- 2014/10 (31)
- 2014/09 (29)
- 2014/08 (53)
- 2014/07 (31)
- 2014/06 (30)
- 2014/05 (31)
- 2014/04 (30)
- 2014/03 (31)
- 2014/02 (28)
- 2014/01 (31)
- 2013/12 (32)
- 2013/11 (30)
- 2013/10 (33)
- 2013/09 (39)
カテゴリ
メールフォーム
スポンサードリンク
検索フォーム
ステップメール
QRコード

コメント
No title
「ビタミンB12"または"シアノコバラミン"は微生物のみが合成できる。」
新鮮な驚きです。
体内の微生物の事を知れば知るほど、人間と体内微生物、
どちらが主役なのかと混乱します。
今後は薬だけでなく、人間の方が腸内細菌を操作することで、
治癒できる病気が、確実に増えますね。
他のビタミン、例えばビタミンCのケースだと、
糖質制限でケトン体メインになると、長い進化の元で、
ビタミンCの合成が出来るようになるのではないかと思います。
簡単に、糖質制限に結び付けてしまいましたが。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 人間の方が腸内細菌を操作することで、
> 治癒できる病気が、確実に増えますね。
ただ腸内細菌は極めて多様性に富む世界なので、
人為的に操作するのはかなり難しい印象を持っています。
例えば腸内細菌を丸ごと入れ替える糞便移植療法は前処置として大量の抗生物質を使い、事前に腸内細菌をほぼ殲滅させておく必要があります。逆に言えば、そこまでしないと便を入れても腸内細菌は定着しないということです。どうやらヨーグルトを食べれば腸内細菌が変わるという単純な話ではなさそうです。
腸内細菌を乱すような人為を極力加えないようにすることが基本だと考えています。
具体的には糖質制限は勿論ですが、過剰に食べない、人工甘味料や添加物を極力避ける、ストレスマネジメント、などです。
> 糖質制限でケトン体メインになると、長い進化の元で、
> ビタミンCの合成が出来るようになるのではないかと思います。
合成できるかどうかは未知数ですが、少なくともリサイクルはできるであろうと私は考えています。
コメントの投稿