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ラップ療法でうまくいかない例の検証

category - モイストケア
2017/ 10/ 20
                 
自院の褥創回診を担当し始めて半年が経ちました。

鳥谷部俊一先生考案の開放性ウェットドレッシング療法(Open Wet-dressing Therapy:OpWT)、通称「褥創のラップ療法」を取り入れることによって、

他院で治癒を諦められていたにも関わらず、治癒・寛解に持ち込んだ例も数例あります。

ただ、正直言って全例ラップ療法でコントロールできたわけではありません。

とある仙骨部の巨大褥創患者の寝たきり患者さんで穴あきポリエチレン袋+紙おむつを組み合わせた被覆材を使っていましたが、

ある日を境に褥創が日毎に悪化していく経過を辿るという出来事がありました。
            

ラップ療法を行っているにも関わらず悪化する場合に真っ先に考えなければならない事は感染です。

感染を見抜くポイントは「発赤」「熱感」「腫脹」「疼痛」という炎症の4徴がないかどうかを見極めることですが、

褥創の場合はそもそも「疼痛」の意思表示ができない患者さんも多くおられるので、そのサインだけに頼らずに赤く熱感があり腫れたりしていないかをこまめに観察する必要があります。

当然その患者さんでもその兆候に注意しながら経過を見守っていましたが、

発赤はあると言えばあるが、他の徴候は明らかではない、けれど創縁が黒色化していくためデブリドマンを加えるという状況が続きました。

赤い所に膿の貯留が隠れていないか、局所麻酔下に穿刺や切開を試みてドレナージを図ったりもしましたが、これといった排膿は認められません。

一方で仮に感染があったとしても基本的には寝たきりで誤嚥性肺炎を繰り返しているため、

広域スペクトラムの抗生剤がすでに頻回に使用されている状況です。

またそのために絶食になることもしばしばなので栄養状態も良いとは言えない状態です。

よく栄養が悪ければ褥創は何をやってもよくならないという事も言われますが、

それは従来の褥創治療で言われていることであって、ラップ療法ではどうなのでしょうか。

それでラップ療法の資料を見返してみたのですが、

紹介されているのはラップ療法で治療がうまくいった症例ばかりで、

純粋なラップ療法でうまく行かなかった例については実は情報が少ないという事に今更ながらに気が付きました。

ネットでラップ療法での悪化例を調べてみても、従来治療の立場の医師がはなからラップ療法が原因で感染したと決めつけるような意見ばかりなので、これでは参考になりません。

私が聞きたいのはラップ療法のことがわかった上で褥創悪化の要因を検討した意見です。

上記のような状況の場合、褥創を改善させる何か良い方法というのはあるのでしょうか。

あるいは本当に栄養状態が悪ければ褥創はどうしようもないものなのでしょうか。

私としてはできるだけそういう逃げ文句で言い訳したくなくて、せめて横ばいの状態で持っていきたいと思っています。

読者の方で御経験や御助言がある方がおられましたら御教示頂ければ幸いです。

私も引き続き原因と対策を考えていきたいと思います。


たがしゅう

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コメント

非公開コメント
        

辱瘡処置
介護の現場ではたらいてますが、
辱瘡ができないようにクッションを敷いたり、工夫してます。
辱瘡処置ラップ療法が主流ですね。
Re: 辱瘡処置
瀬川里香 さん

 コメント頂き有難うございます。

 ラップ療法が取り入れられている現場は柔軟な良い現場だと思います。
No title
たがしゅう先生、こんにちは。
すでにご存じかもしれませんが、MECの渡辺先生が、毎日卵3個食べてもらうことと、毎日褥瘡にラードをつめて、ラップでおおう、ということを続けることによって、患者さんの褥瘡を治した、という話があります。
http://logmi.jp/106642
ラードにアレルギーがないなら、有効かもしれません。
Re: No title
みか さん

 情報を頂き有難うございます。

 栄養にアプローチできる方はそれが褥創治癒に向けての大きな要因となると思います。
 私の例ではいろいろな事情でそれができないので、その場合にラップ療法はどこまでの事ができるのか知りたい所です。
No title
たがしゅう先生

これは、私の出番でしょうね。

まず、体圧分散マットは何を使ってますか?
仙骨部の局所の圧は測れてますか?
(昔のセロ、今パームQなど)
体交がずれ力を起こしていませんか?
栄養は、胃瘻ですか?
ギャッジアップの際、臀部がずれて足方向に下がることを予防していますか?
ラップ(穴あきポリ)の交換はどれくらいですか?

などなど

もし、よろしければ、直接メールで。
Re: No title
たかはし 先生

 コメント頂き有難うございます。
 詳細は追ってメールさせて頂きます。
No title
療養病院で看護師をしています。

当院でも褥瘡に対してはラップ療法を取り入れています。
治癒する症例も多いのですが、時折治癒が進まないこともあります。
特に踵なと下肢末端の褥瘡の場合は、血流の問題からか治癒に難渋することが多い気がします。
たた仙骨部の褥瘡に関しては、そのようなことは少なく治癒する症例も多いです。

ただ仙骨部で治癒が進まない、または悪化することもありました。

印象に残っている症例は、仙骨部の褥瘡がラップ療法でも悪化して、なぜだろう?と原因を考えていたのですが、数日後にその患者さんは全身状態が悪化され、お亡くなりになりました。
褥瘡が悪化した時にはバイタルサインは問題なく落ち着かれていたのですが、創傷はバイタルサインよりも先にこの患者さんの全身状態が良くないことを表してたのかな?と考えさせられました。

あと発熱など状態が安定されていない患者さんは創治癒が進まないことが多い印象があります。

またそれまで皮下に隠れていた創傷が時間とともに表面化して、悪化したように見えることもありました。

栄養についてですが、たしか書籍などにはアルブミンが3.0以上ないと肉芽形成は期待できない、と書かれていましたが、当院ではラップ療法でアルブミンが2.5以下の深い褥瘡も治癒されています。
もちろん栄養状態が良いほうが治癒は早いと思いますが。

参考にならなかったらすみません。
Re: No title
ゆき さん

 コメント頂き有難うございます。
 ラップ療法の経験者の御意見、非常に参考になります。

> 発熱など状態が安定されていない患者さんは創治癒が進まないことが多い印象があります。

 確かに私が診た例でも誤嚥を繰り返し37~38℃の発熱をしばしば繰り返している状況がありました。

> 当院ではラップ療法でアルブミンが2.5以下の深い褥瘡も治癒されています。

 私の症例ではアルブミン値は1.8でした。
 しかし低アルブミン値でも治癒した症例の存在は勇気づけられます。

 貴重な御意見を頂き誠に有難うございます。
圧、ズレ力、栄養(体力)
さすが、たかはし先生! たかはし@旭川先生のおっしゃることがチェックポイントです。

十分な栄養摂取が可能な方であれば、高機能エアマット、ズレ力を減らすことにより、褥瘡の改善が期待できます。

100歳の寝たきり患者さんで熱傷+褥瘡の治療経験もあります(治りました!)。
よろしければ、当方にも直接メールで情報をいただければ、お力になれるかもしれません。
Re: 圧、ズレ力、栄養(体力)
きよすクリニック
伊藤先生

 コメント頂き有難うございます。
 詳細はメールにて御連絡させて頂きます。
No title
昔に療養病棟で褥瘡担当医をしていました。
慢性感染症・衰弱患者で褥瘡の急性増悪は、何らかの循環障害が原因ではないかと私は思っています。
炎症の五徴は見られないし、肺炎で抗生剤投与中だったりします。

(禁止ワードにかかるため略)

褥瘡は治すのではなくつきあっていくものであるという思いを強くしました。
感染源になるなど療養に支障がなければいいのではないかと思います。
勿論創面を乾燥させてしまうと感染源になるでしょうが、
できたての黒色期を除いて浸潤療法で褥瘡熱が発生したことはほぼなかったと思います。
Re: No title
へっぽこ 先生

コメント頂き有難うございます。

確かに創縁から徐々に黒色化していく経過は循環障害を彷彿とさせるものでした。
血流が保たれていないと如何ともし難い状況というのはあるのかもしれませんね。
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