複雑に発展されてきた苦味

2017/10/09 00:00:01 | 素朴な疑問 | コメント:0件

苦いコーヒーに抗老化成分が含まれている可能性について言及しましたが、

なぜそんな大切な成分に忌避すべき苦味が仕込まれているのかということに関しては、

植物の立場に立てば、単純に「他の動物に奪われたくないから」だと言えるかもしれません。

そう考えれば「良薬口に苦し」という諺の感覚にも合います。

しかし一方でコーヒーには報酬系に働きかけやみつきにさせるカフェインが同時に含まれています。

この矛盾に関してコーヒーを研究する科学者はどのような見解を持っているのでしょうか。

今日はそれを考えるヒントとなる本から一節紹介したいと思います。

コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか (ブルーバックス)
旦部 幸博


(以下、p107-108より一部引用)

(前略)

味細胞の表面には「味覚受容体」というタンパク質が発現しており、

どの受容体が発現するかで担当する基本味が決まります。

基本五味のうち、甘みとうま味、苦味の受容体は、2012年ノーベル化学賞を受賞した、Gタンパク共役受容体(GPCR)の仲間です。

甘味受容体とうま味受容体はそれぞれ1種類ずつ存在し、受容体を構成するタンパク質が似ているため、タイプ1受容体(T1R)と呼ばれます。

苦味受容体はタイプ2(T2R)と呼ばれ、ヒトでは29種類の遺伝子が見つかっています。

苦味だけ種類が多いのは、それぞれが複数の異なる化学物質を感知することで、

自然界の多種多様な毒に対処するためだと言われています。

実際、自然界に存在する苦味物質は数百種類で、甘味やうま味の数十倍に上ります。

(後略、引用ここまで)


この文章は私の疑問に対して直接の答えを提供しているわけではありません。

しかし少なくとも甘味やうま味に比べると苦味物質はかなり複雑だということがわかります。

甘味やうま味は摂取した動物にまた食べたくなる衝動をもたらすという点でシンプルですが、

苦味は単純な忌避成分というだけではなく、有効成分を守りたい、摂られたとしても被害を最小限に食い止めたいという植物の意図、

何とかして一分一秒でも長く生き延びたい動物とのせめぎ合いが、複雑に絡み合った結果、

コーヒーやビールのように苦いけどいい成分が含まれるものが生み出されたのではないかと思います。

単なる忌避成分であれば、ここまで沢山の種類が生み出されるはずもなく、

必要があったからこそ自然の中で生み出されたのではないかと思います。

おそらくまだ私が把握できていない謎もまだまだありそうな気がします。


たがしゅう
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