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望ましい利益相反関係とは

category - 漢方のこと
2017/ 09/ 25
                 
医学界では2004年スタチンの研究論文が

製薬会社により有利な内容に捏造されたという可能性
が明るみになって以降、

利益相反の問題が表立って取り沙汰されるようになりました。

もはや学会で研究発表したり論文を書いたりした際に利益相反の有無を明記するのは常識化しています。

ただ利益相反がある医師がプレゼンをする場合、

どの団体と利益相反があるのかを明記したスライドが1〜2秒で次に送られてしまう事がほとんどで、

これを明示することにどれほどの意味があるのだろうかと思ったりもします。
            

そもそも利益相反は何がよくないのでしょうか?

私は漢方に様々な病気を快方に向ける可能性を強く感じているので、

漢方の製薬会社とは利益相反の関係にあると言えるのではないかと思います。

利益相反は言い換えればWin-Winの関係です。それ自体が悪いことだとはどうしても思えません。

そうすると医者とスタチンの製薬会社との利益相反と、私と漢方の製薬会社との利益相反は、本質的にどこが違うのでしょうか。


ひとつは、両者の間での情報交換が公平なものであるかどうかです。

スタチンの製薬会社は自社の薬を処方してもらうべく、

医者にスタチンが良いとする情報ばかりを提供したり、スタチンに有利な研究を行ってもらうべく研究者に多額の援助金を提供したりします。

世の中にはスタチンが悪いとする研究だっていくらでもあるのに良い情報しか与えないのは不公平ですし、

多額のお金が与えられているという関係上、研究者は研究を続けるために製薬会社の意向に従うしかなくなり、これまた公平な研究結果を出せなくなります。

私は漢方の製薬会社から様々な勉強会の案内をもらい、それらは参加費無料だったり有料だったりします。

勉強会の内容は必ずしも自社製品のアピールではなく、様々な漢方薬の処方解説であったり、漢方での症例報告だったり色々です。

中にはこんな使い方をして漢方のひどい副作用が出たとか、広く東洋医学を俯瞰して人体の不思議に対して鋭い考察の話が聞けることもあります。

私に与えられているそうした情報は比較的公平性の高いものだと感じています。

また私が止めようと思えばいつでも止められるという点でも公平だと思います。

もし私が「漢方を使ってくれるなら研究のために多額の寄付金を与えます」などと言われてお金を受け取っていたら、止めるに止められない状況に陥るかもしれませんが、

別にそういうわけではないのです。私は純粋に漢方が患者さんの役に立つと考えているから漢方の勉強会に入り浸っているだけです。


医師も製薬会社も仕事ですから、お金が得られるかどうかは大事な要素の一つです。

言葉では「患者さんのために」と崇高な理念を掲げていても、腹の中はどうかまではわかりません。

しかし内心がどうであっても、協力関係が第三者も含めた他者貢献につながり、

そしてその協力関係が状況によっていつでも解消できるという関係性
にさえあれば、

利益相反は必ずしも悪いことではないように私は思います。


たがしゅう

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コメント

非公開コメント
        

No title
たがしゅう先生、いつも不躾なコメントばかりで申し訳ありません。
けれどどうしても気になったので、今回もコメントしてしまうことをどうかお許しください。
この記事を読んで「利益相反」の意味を疑問に思ったのでWikipediaで調べてみたところ、次のように書かれていました。

利益相反行為 (りえきそうはんこうい)とは、ある行為により、一方の利益になると同時に、他方への不利益になる行為である。
利益相反とは、政治家、企業経営者、弁護士、医療関係者、研究者などのように、信託を得て職務を行う地位にある人物において、立場上追求すべき利益・目的(利害関心)と、他に有している立場としての、あるいは個人としての利益(利害関心)とが競合・相反している状態をいう。

そのため、なぜたがしゅう先生が「利益相反は言い換えればWin-Winの関係です」とおっしゃられるのか、これをどうしても理解することができません。
私が思うに、利益相反関係とは、医師(製薬会社)と患者の関係のことなのではないでしょうか。
つまり、医師・製薬会社(患者の病気が治らないほうが儲かる)と患者(いくらお金を払っても病気を治したい)という関係です。
もしたがしゅう先生のおっしゃるような「望ましい利益相反関係」がこれにあるとするならば、それは「医師ならびに製薬会社が治療のメリット・デメリットを余すところなく公開し、それに患者が納得した上で治療を受けている」という状態か、「病気を治さず通院や服薬をし続けることが患者の人生にとって利益となる」という状態のどちらかくらいしかないと思うのです。
そして誠に失礼ながら私がたがしゅう先生のブログを拝読していて思うことは、たがしゅう先生(患者の病気を治したい)と患者さん(本当は病気を治したくない)の関係が利益相反となっているのではないかということです。
もしこれを「望ましい利益相反関係」にするとしたら、「病気を治すことのメリット・デメリットを余すところなく公開し、それに患者が納得した上で治療を行う」か、「病気を治して家庭や社会に帰っていくことが患者の人生にとって利益となる」か、このどちらかくらいしかないのではないかと私は思います。
Re: No title
草木 さん

 コメント頂き有難うございます。

 日本医師会のホームページには、利益相反(COI)について次のように書かれています。
 http://www.med.or.jp/doctor/member/kiso/d14.html

> 法律的には、さまざまな利益相反行為が禁止ないし制限されているが、医療との関係では、臨床研究における利益相反行為が重要である。臨床研究はヒトを対象とするため、被験者の生命、安全、人権を守るという観点から実施されなければならないと同時に、医師側は、臨床研究の実施において、資金提供者等との金銭的なかかわりを持つ場面が多いからである。


 医師はヒトの研究を純粋に行いたいという希望、製薬会社は薬を売りたいという希望がある。
 互いの利益は相反しているけれども、現実問題お金がないとヒトの研究はできないのでこの場合の利益相反は一定の範囲で許容されるというスタンスです。
 そしてこの状況では研究をしたい医師はお金をもらえて、製薬会社は医師にお金を提供することで薬が売りやすくなる、という形でWin-Winの関係が成立している、ということになります。
No title
たがしゅう先生 失礼します。

> 医師はヒトの研究を純粋に行いたいという希望、製薬会社は薬を売りたいという希望がある。
> 互いの利益は相反しているけれども・・・(略)

草木さんがおっしゃるように、「医師と製薬会社の利益が相反している」と捉えるのではなく、
「医師も製薬会社も利益を得るけれど反して患者が不利益を被る」と捉えるのが正しいように思います。

> そしてこの状況では研究をしたい医師はお金をもらえて、製薬会社は医師にお金を提供することで薬が売りやすくなる、という形でWin-Winの関係が成立している、ということになります。

そのWin-Winの関係により(不正の温床となり)患者が不利益を被る=利益相反なのではないでしょうか?

Re: No title
福助 さん

 コメントを頂き有難うございます。

> そのWin-Winの関係により(不正の温床となり)患者が不利益を被る=利益相反なのではないでしょうか?

 医療の世界では通常「患者さんと利益相反関係にある」という表現はしないので、基本的には医師と製薬会社との利益相反関係だと思います。

 ただ御指摘のように医師の研究意欲が患者さんのためという事に根差していれば、利益相反関係があっても必ずしも患者さんの不利益につながりませんが、その医師の意欲が名誉のためとか昇進のためとか私利私欲の方に向かえば、バランスに歪みが生じダイレクトに患者の不利益につながってしまいかねない、ということだと思います。
No title
>医療の世界では通常「患者さんと利益相反関係にある」という表現はしないので、基本的には医師と製薬会社との利益相反関係だと思います。

これには驚きました。医師も製薬会社も患者の利益など全く考えていないのですか。
あるいは、自分の治療法(自社の薬)が患者の不利益になるはずがない、という考えが一般的だということですか。
医師は研究者であり、患者は実験台にすぎないというのですか。
病院ってなんだか嫌だし苦手だなあ……と思っていたのですが、たがしゅう先生のご意見を拝聴してひどく納得してしまいました。
私たちはただの実験台だったのですね。
Re: No title
草木 さん

> 医師も製薬会社も患者の利益など全く考えていないのですか。
> あるいは、自分の治療法(自社の薬)が患者の不利益になるはずがない、という考えが一般的だということですか。
> 医師は研究者であり、患者は実験台にすぎないというのですか。
> 私たちはただの実験台だったのですね。


 全く違います。そのように受け取られるのは心外です。
 
 要は医師が何のために研究しているのかということです。勿論「患者さんのため」です。
 その意味で医師の利益が患者の利益と共通しているのが本筋です。しかし採血だったり投薬だったり食事だったり、何らかの研究介入によって益が害かわからない影響を受け取るのは医師ではなく患者さんです。そのため、臨床研究を行う場合には医師から患者へ十分な説明を行い同意を得て行うのがルールです。
 それとは別に資金面で製薬会社の援助を受けている場合があり、その場合患者のための結果を出すという医師の意向と製薬会社が出してほしい結果が乖離するというケースが現実に起こりえます。スタチンの場合がその典型です。その時に問題となる利益相反が生じうるという話です。