一見伝わったようであっても
2017/09/17 00:00:01 |
普段の診療より |
コメント:2件
私が担当する入院患者さんには、院内の栄養士さんの協力を得て、
主食を半量にして、副食を増量した「半糖質制限食」という食事を基本的に全員におすすめしています。
理由はリハビリ目的で他院から紹介で来られる患者さんが多いということもあって、
リハビリにおける高蛋白食の重要性が指摘されてきているからというのが一つ、
もう一つは、糖質量を抑えることで減薬を行いやすくしたいからです。
例えば、糖質頻回過剰摂取に伴う高インスリン血症は、原因不明の高血圧の原因になっていたりします。 半糖質制限食の導入で、高インスリン血症が弱まれば、
それだけで血圧が下がり、既処方の降圧剤を減薬しやすい状況となるのです。
ですので他院から転院してきて最初の私の診察の際に、
私は半糖質制限食のメリットをできる限り噛み砕いて説明します。
今まで20〜30人は診てきたと思いますが、ほとんどの方が初回説明で半糖質制限食の導入について御理解頂けます。
主食が全くなしと言うと抵抗がある患者さんも、半分に控えるという表現だと比較的受け入れやすいのだと思われます。
ところが今の病院へ赴任して半年、
半糖質制限食を導入した患者さんの中から、
看護師に「ごはんを増やしてほしい」という要望がポロポロこぼれているということが明らかになってきました。
私に直接言わないというところがひとつのネックです。やはり医師に直接そのように申し出るには引け目があるということなのでしょうか。
私はこの場合、半糖質制限食を解除し、常食に変更するようにしています。
いくら理論的に半糖質制限食が正しかろうと、体調が良くなり薬の数が減ろうとも、
そんなことよりも理屈関係なしでごはんが欲しいと盲目的になれば、改善している体調にも気付かずにスルーしてしまいやすくなるのではないかと思います。
また、薬が減ることが良いことだという認識さえなければ、余計に半糖質制限食のメリットに気付きにくいでしょう。
そもそも紹介で初めて会う患者さん、私との信頼関係の構築も不十分なままに、
従来の常識になかった半糖質制限食の概念、いかにわかりやすく説明したところで得体も知れない白衣の人物が述べる言葉の効果は、
それほど長くは持続せず、やっぱり居心地の良い従来の常識の殻に戻ってしまうということなのかもしれません。
そういう人は正直、いかんともし難いと思っています。
たとえもう一度同じ話をしたところで、同じサイクルの繰り返し、
それどころか何度も半糖質制限食を押しつけてくる私に反感さえ覚えられるかもしれません。
だから私はこういう方への半糖質制限食導入はあきらめ、漢方も駆使して可能な限り少ない薬での病勢コントロールを行います。
相手が糖尿病の場合は、SGLT2阻害薬など薬剤による疑似糖質制限の導入も検討します。
それでも私は一人でも多くの人に糖質制限の良さを伝えるために、
新たに出会う患者さんに糖質制限を勧め続けることは諦めません。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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No title
先日、非常に興味深い本を見つけました。
Mindless Eating(邦題・そのひとクチがブタのもと ブライアン・ワンシンク著/ 中井 京子訳)という本なのですが、日々の食事がいかに周囲の環境や要素、習慣によって左右されているかという事を、多数の実験を通して説明していく本です。
食マーケティングとか、食心理学などと言う分野の実験だそうですが、
人は自らの意思で食事の種類や量を見極め、その味や満足感を判断しているようで、実は数々の錯覚に強く影響されているのだと、深く考えさせられました。
(低脂肪とラベルに表記してある製品は、通常の製品より多く食べてしまう傾向がある…等、実験は多岐にわたります)
作中では主として「何故無意識に(余計に)食べてしまうのか」という点について説明していますが、逆に言えば「無意識のうちに糖質制限に誘導する」ということもできるのではないか、と思った次第です。
しっかりとした糖質制限を自然に実践させるという事までは難しいかもしれませんが、様々な工夫によって米飯が少なくても満足したように錯覚させる程度は出来るのではないか、と思います。
一方で、この本にはアトキンスダイエットが下火になった理由について興味深い意見も記されていました。
アトキンスダイエットで痩せる理由は飽きによる食欲減退もあると指摘した上で、
アトキンスダイエットの流行に従って発売されるようになった低糖質食品が人々を飽きさせなくなった事で食べ過ぎになり、以前ほど減量効果が出なくなったからだ、との事でした。これにはかなり納得してしまいます。
最近はテレビで低糖質パスタまで宣伝しているのに驚きましたが、こういう流れは当初の糖質制限の理念から離れていくようで大変危惧している所です。
長くなりましたが、何かの参考にしていただければと思います。
Re: No title
情報を頂き有難うございます。
興味深いです。是非とも読んでみたいと思います。
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