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医師から見た獣医学会

category - イベント参加
2017/ 09/ 15
                 
「獣医学は実は医学の数十年先を進んでいる」

汎動物学の勉強をしている時、そのように書かれた文章がとても印象に残っていました。

いつかは獣医の学会にも参加してみたいと思いチャンスを伺っていた所、

今年の獣医学会がなんと運よく鹿児島で開かれるという巡り合わせがありました。

ただし医学系の学会と異なり、平日開催です。そうなると仕事を休んで行かなければならないことになります。

そこで職場と交渉し、午前中だけ時間をもらい雰囲気だけでも味わうべく、

先日、ついに初の獣医学会に私参加して参りました。
            

鹿児島大学の農学部・獣医学部キャンパスの構内で開催されていたわけですが、

ぱっと見た限りの参加者は医学系の学会と遜色なく、平日にも関わらず多くの関係者が集まっているようでした。

全体としては若い学生さんの割合が多かったような印象を受けました。

あと私が大好きな書籍販売コーナーはほんのちょっとしかなくて残念でした。

というよりも企業展示ブースは医学系の学会に比べて非常に小さい印象を受けました。

この辺りはやはり全体の参加者人数の少なさを反映してのことなのかもしれません。


さて、私は「オルガネラから疾患を考える」というテーマのシンポジウムに参加し、ミトコンドリアや褐色脂肪細胞についての話を聴講し、

少しだけ動物愛護に関わる一般公開講座も聞いてきて、後は時間の関係上、講演要旨集を読むことで我慢することにしました。

ミトコンドリアのストレス感知機構にPGAM5というプロテインフォスファターゼが関わっているとか、がんシグナルの発信源がゴルジ体、小胞体などの細胞内小器官から発せられるとか、興味深い話を聞きましたが、

非常にハイレベルな内容で、私の頭では3割くらいしか理解しきれませんでした。

しかし医学にも通じる非常に重要なテーマについて、実に有意義な議論を重ねているという印象は強く持ちました。

中でもオートファジーについては複数の演者が語っていて、要旨集を読んでいてもオートファジーが非常に注目されているという事をうかがうことができました。

例えば、ヒトでも難治性感染をもたらすことで知られるマダニ咬傷に関して、

マダニは生活史の大半を未吸血・飢餓状態で過ごしており、この長期間の飢餓状態に耐えうるユニークな性質についてオートファジーが誘導されるという事を報告している発表もありました。

そのような視点でオートファジーを眺めることがなかったので非常に新鮮でした。

また糖質制限的には黒酢はやや糖質量多めで敬遠されるのかもしれませんが(100g中の糖質9.0g)、

老化が促進するよう遺伝子操作されたSAM P8というマウスに0.25%の黒酢濃縮液を餌を添加し1ヶ月自由摂食させたところ、

4ヶ月齢時の認知機能低下が有意に抑制されており、そのメカニズムとしてヒートショックプロテイン、HSP70の誘導があること
これによる脳内アミロイド凝集抑制の可能性などが指摘されていました。

要するに糖質とは全く関係ないところで食品に固有のメリットが存在する可能性を示しているのであって、

糖質だけを基準に食品選びをしてしまう安易な行動に警鐘を鳴らしている話にも思えます。


このように医者の私から見ても注目すべき内容がたくさんある充実の学会であるように感じました。

ただ惜しむらくはやはり、こんなにも貴重な情報にあふれた学会に医師の参加者が少ないということ。

平日開催だとたとえ興味があっても、今回の私のように、開催地と勤務の柔軟性などいくつかの条件が重ならない限り、なかなか参加できません。

もしも土日開催だったら私はきっとフル参加していたであろうと思います。

いえ、もしかしたらそれ以前の問題で、互いに交流しようと心がけている医師、獣医師は果たしてどれほどいるでしょうか。

医師の目線、獣医の目線が合わせれば、きっとより良い医療を展開するための礎になる、

その可能性を垣間見ることができた学会であったと思います。

後でじっくり講演要旨集を読み返して、

興味深い内容があれば、またシェアさせて頂きます。


たがしゅう

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コメント

非公開コメント
        

No title
たがしゅう先生の獣医学会レポを読んでいると、生き物としては人も獣も同じなんだと教えて下さいます。
何故、人と獣とを区別し続けるのか不思議に思いました。
人間の医師と獣の医師が同じ問題に立ち向かえば、もしかしたらもっとわかる事が出て来そうな気がします。
たがしゅう先生、これからも獣医学会に参加される事があったらレポして下さいね。
Re: No title
きき さん

 コメント頂き有難うございます。

 今回は場所的にも勤務環境的にも、私が獣医学会に参加できる千載一遇のチャンスだったと思っていますが、
 またチャンスがあれば当然参加したいと思います。