エビデンスを待たずとも
2013/12/04 00:01:00 |
お勉強 |
コメント:4件
『Ikeda F, et al. Haemoglobin A1c even within non-diabetic level is a predictor of cardiovascular disease in a general Japanese population: the Hisayama Study. Cardiovasc Diabetol. 2013 Nov 7;12(1):164. [Epub ahead of print]
背景:アジアで心血管疾患(CVD)に対するヘモグロビンA1c(HbA1c)の予測能力についての情報はほとんどない.今回はHbA1cが一定の地域在住の日本人集団の前向き研究でCVDを発症するリスクがより高い対象者を同定するための鑑別能力があるのかどうかを調査することを目的とした.
方法:40-79歳の計2851名の対象者が5つのグループへ階層化され(HbA1c ≦5.0, 5.1-5.4, 5.5-6.4, ≧6.5%, すでに治療中の集団),前向きに7年間フォローアップされた(2002-2009年).
結果:フォローアップの期間,119名の対象者がCVDを発症した.CVDの多変量調整リスクはHbA1c5.5-6.4と≧6.5%とすでに治療中の集団が,HbA1c値が5.0%以下の集団と比較して有意に上昇していた(5.5-6.4%の集団でハザード比2.26[95%信頼区間, 1.29-3.95],6.5%以上の集団で4.43[2.09-9.37],すでに治療中の集団で5.15[2.65-10.0]).CVDのサブタイプに関して言えば,HbA1cと冠動脈心疾患(CHD),虚血性脳卒中との間での正の相関が有意であったが,出血性脳卒中についてはそのような相関は認められなかった.CVDを発症するC統計量は他の危険因子を含むモデルへHbA1c値を加えることで有意に増加し(0.789 vs 0.762),総再分類改善度は0.105であった(p=0.004).
結果:我々の調査結果はHbA1cが上昇することはCVD,特にCHDと虚血性脳卒中に対する独立した危険因子であり,伝統的な危険因子を持ったモデルにHbA1cを加えるとCVDの予測能力を有意に改善することを示唆している.』
日本糖尿病学会の熊本宣言2013で,
「あなたとあなたの大切な人のために Keep your A1c below 7%」
というスローガンが発表されました.
このA1c(=HbA1c:ヘモグロビンエーワンシー)の値が7%以下であれば糖尿病の合併症が起こりにくいと言われているからです.
しかし私はこの数字まったく当てにしていません.
なぜならそれは日頃から糖質を摂取して血糖値の乱高下がある状況での話だからです.
乱高下さえ起こさなければ,低血糖を起こしうる薬剤さえ用いなければ安全に血糖値,HbA1cを下げていくことができます.
7%という数字にこだわる必要は全くなく,下がっていれば下がっているほどよいに決まっています.
逆に薬を使って下げられたHbA1cは非常に危ないと思います.
低血糖の危険が常につきまとうからです.
今回読んだのはそれをサポートする,かの有名な久山町の研究です.
HbA1cを下げる意義は糖尿病の合併症の制御だけにとどまりません.
血糖乱高下に伴う酸化ストレスリスクを避けることで動脈硬化の進展を抑えることが期待できるのです.
動脈硬化の成れの果てで,命に係わる重要な2大疾患は「脳梗塞」「心筋梗塞」ですが,
これらの予防に役立つといった内容になります.
よく糖質制限を否定する人達の意見の中に,
「糖質制限を肯定する論文は欧米のものだから,日本人の我々に当てはまらない」というものがありますが,
そういう意見に対抗するためにも日本人でのデータが出たことは一歩前進ではあります.
ただ糖質制限の理屈がわかってさえいれば,そんなエビデンスを待つまでもなく実行あるのみです.
糖質制限がうまくできているかどうかは,HbA1cを見なくとも,自分の体調が教えてくれると思います.
これは糖質制限をやったことがある人だけがわかる感覚ですね.
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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12/7(土) 茶話会について
今のところ、参加希望12名で、席にだいぶ余裕があります。
記
2013.12.7 (土) ルノアール新宿区役所横店
11:30~13:30 5号室 【定員】10~45名様
http://standard.navitime.biz/renoir/Spot.act?dnvSpt=S0107.2006
室料2時間 5,200円 参加人数で割ります。
別に、一人、ワンドリンクです。
茶話会のあと、東京見物と、夜、懇親会も考えています。
これについては詳細未定。
① 茶話会 11:30から1:30
② 東京見物 その後、夕方まで
③ 懇親会(飲み会) 夜7時頃から 場所 浅草あたりか ?
の3つについて、それぞれ参加希望の方は、ご連絡ください・・・。
幹事 わんわんこと長谷川
もとつむり
参加申込みは、12/6(木)までに、長谷川へ
kiyohisa0108@withe.ne.jp
Re: 12/7(土) 茶話会について
御調整頂き誠に有難うございます.
今回は有志で集まって気軽にしゃべろうという趣旨の,いわゆるオフ会ですね.
①~③の全部でなくてもよいので,興味のある方は是非とも御参加頂けると嬉しいです.
何卒宜しくお願い申し上げます.
No title
エビデンスとはなにか?統計分析の答えです。やってもいないことは統計できませんよね。糖質制限反対派には永久にわからないんですから彼らが絶滅するのを待ちましょう。
自動車事故による死傷者は自分が免許を取った二十年ほどで格段に減りました、シートベルト、エアバッグ、ABSや歩行者へのダメージ対策、どれも自動車開発者が真摯に取り組んだ結果です。エビデンス至上主義の人たちはこういった新装置も否定なさるのでしょうか。
Re: No title
いつもコメント頂き有難うございます.
> 自動車事故による死傷者は自分が免許を取った二十年ほどで格段に減りました、シートベルト、エアバッグ、ABSや歩行者へのダメージ対策、どれも自動車開発者が真摯に取り組んだ結果です。エビデンス至上主義の人たちはこういった新装置も否定なさるのでしょうか。
面白い視点です.
エビデンスが出るまで待っている人達は,
「エアバッグが安全だというエビデンスはない.何かあったらどうするんだ」と言っているのと同じですね.
ちゃんと自分の頭で考えれば糖質制限がエアバックと同様安全な方法だとわかります.
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