ストレスと運動の共通点と相違点
2017/08/01 00:00:01 |
運動に関すること |
コメント:10件
ジムに行きはじめて2か月半が経ちました。
何とか三日坊主にならずに済んでいますが、残念ながら体重に変化はありません。
毎回ゼエゼエなりながら頑張っているのに、運動でやせるというのは幻想かと結論を出したくなる気持ちを抑えて、
もっと長い目で糖質制限実践者の負荷の強い習慣的運動が身体に及ぼす影響を検証していきたいと思っています。
さて、本日はそんなジムで有酸素運動をしていた時にふと思ったことについて書きたいと思います。
クロストレーナーというノルディックスキーのように手と足を動かすマシンで1時間ほど運動していた時の話です。

ラスト10分くらいになった頃、私の呼吸はかなり早くなってきました。
脈拍もかなり早くなるので、副交感神経優位にして循環動態を安定させるためにできるだけ深呼吸するように試みます。
しかしこれだけ動き続けて息が切れている状況においては、なかなか1回深呼吸するだけでも至難の業です。
この時に私はふと思いました。
「過換気症候群の人はこんな気持ちなのかもしれない」と。
一般的には過呼吸症候群と言った方が通りがよいかもしれないこの病気は、
精神的な不安や極度の緊張などが誘因となり、呼吸が早くなってしまい、それが自分で制御できないがために、
過剰な呼吸によって酸素が取り込まれ過ぎるとともに、二酸化炭素が過剰に排出されるがために酸塩基平衡が崩れ、
体液がアルカリ性に傾くために手足のしびれや胸部苦悶感を自覚するというものです。
治療には昔はペーパーバッグ法といって過剰に排出された二酸化炭素を再呼吸させるために、顔を紙袋で覆うという何とも原始的な方法が用いられていましたが、
現在ではその効果の医学的根拠が乏しく、余計に息が苦しくなるという事で用いられなくなり、深呼吸をさせることが基本となります。
私がクロストレーナーで感じた疑似過換気症候群状態に対して深呼吸を試みたのと共通しています。
ただ両者で違うのは、疑似過換気症候群の方は運動を止めることで過換気状態を解除することができるという点です。
逆に言えば、運動もしていないのにまるで運動をしているかの如く過換気状態が引き起こされ、
運動を止めようにももともと運動して起こっているわけではないので止められないというのが過換気症候群だとも言えると思います。
よって過換気症候群を止めるために、精神的緊張が強すぎて深呼吸ができないような場合は、抗不安薬を用いて強制的に呼吸筋の働きを弱らせるような処置を取ることもあるくらいです。
そして過換気症候群と疑似過換気症候群で、身体の中で起こっている代謝変化もおそらく共通しています。
疑似過換気症候群は強度の高い運動によりグリコーゲン-ブドウ糖を基本とする解糖系が優位に駆動されています。
そして本来の過換気症候群は、ストレスによって解糖系が必要異常に駆動されている状況ではないかと思います。
ただ過換気により二酸化酸素が過剰に排出されているはずの疑似過換気症候群状態では、体液がアルカリ性に傾くことによって起こるテタニーと呼ばれる手足のしびれ症状はきたしません。なぜでしょうか。
推測の域は出ませんが、おそらく運動によって起こった疑似過換気症候群状態は、
突然起こるわけではなく、運動の強度や持続時間に合わせて徐々に起こってくる現象なので、
呼吸器系だけではなく、腎臓を中心とした別の酸塩基平衡を保つシステムで代償されるために二酸化炭素が少なくなっても体液がアルカリ性に傾かないようになっているのではないかと思います。
このように過換気症候群と疑似過換気症候群の共通点と相違点から学ぶべき所があります。
ひとつはストレスと高強度運動はいずれも解糖系を優位に駆動する刺激だけれど、ストレスの方は過剰に加わると自己制御できなくなるということ、
もう一つは身体の働きがきちんと機能していれば、高強度の負荷が加わっても見事に適応してくれるということです。
ストレスマネジメントの重要性と身体本来の働きを保つことの大切さを再認識した次第です。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
たがしゅう先生は幼少期に肥満体型だったとおっしゃっていたと思いますが、関係があるかと思いまして。
Re: タイトルなし
情報頂き有難うございます。
参考になりますが、私はすべて鵜呑みにはしないようにしています。
実はこの点に関しては自分なりの考えがあります。時期が来れば記事にする事も検討させて頂きます。
自然は不自然
体は危機を感じたら脂肪を蓄え、生きるのに必要無い筋肉を真っ先に捨てようとするからです。
逆に安心感に満ちていると脂肪をどんどん燃焼させます。
ですから短時間の筋トレと散歩レベルの運動でマッチョになれるのです。
少しキツ目の運動は酸化と炎症の害が大きいので、
ケアしないと筋肉にも健康にもあまりメリットはありません。
ケアしきれてないランナーが体をボロボロにしてしまうありがちな理論のように。
まあ、ケア云々より、運動と食事は人を神化させると同時に
できるだけしないで済むならそれが良いのですが。
現代人は仕事という負担が既に多大なストレスになっているので、
より慎重にならなあと筋肉か健康寿命を縮めますね。
Re: 自然は不自然
コメント頂き有難うございます。
確かに運動はすればいいってものではないですね。
ジムでも若干無理しがちな所があるので時々自分を振り返る必要がありそうです。
運動などの肉体的なストレスマネジメントは少し苦手なので、今後知識と経験を積み重ねていきたいと思っています。
高負荷運動
> ノルディックスキーのように手と足を動かすマシンで1時間
1時間も続けられるような低負荷の有酸素運動はジム以外でもいつでもできるはずなので、ジムに行った時は、(マシンよりもフリーウエイトを使用した)高負荷のウエイトトレーニング(xx回xxセット)をされるのは如何ですか? 1週間に3-4回なら、上半身、下半身、体幹など部位毎に分けて限界まで追い込みます。40分も短インターバルでやれば、すぐにフラフラになります。1年も継続すればムキムキになり、それ以後はハードに運動しなくても筋肉を維持するのは容易でしょう。日常生活の動作だけでも、筋肉が無意識に反応してしまい、逆に筋肉を落とそうとしても苦労するほどです。
高負荷運動は、年寄や体力の無い方には推奨できませんが、先生はまだお若いし基礎体力もあるようなので、45-46歳までなら高強度の運動をしても大丈夫でしょう。勉強熱心な先生のことですから、トレーニング雑誌の2-3冊でも目を通されれば、すぐに最新理論に精通されるでしょう。
但し、無駄な筋肉がついて基礎代謝が不必要に高くなり、効率の悪い体になってしまい、二度と効率の良い体に戻れなくなるリスクはあります。
Re: 高負荷運動
コメント頂き有難うございます。
ウエイトトレーニングもやるにはやっていますが、
とりあえず一通りのマシンを15回×3セットずつ行うスタイルでやっています。
御指摘のように上半身の日とか下半身の日とか分けて行う方が効率的なのでしょうね。いろいろ試しながら勉強していきたいと思います。
運動と減量
私は糖質制限する前は、体重コントロールとしてジョギングだけを取り入れていました。筋トレで体重が減少したことはほとんどありませんが、一定期間、例えば1ヶ月間ジョギングを1日6 km程度すれば、確実に数kg減少できていました。今でも、ジョギングで体重コントロールは有効と考えています。
糖質制限を始めてからは、週に2回、10kmずつジョギングをしています。
ジョギングは自分のペースでできるし、汗を思いっきりかくこともでき、少なくとも私にはストレス解消にもいいです。走っている間には、色々考えることができ、自分だけの時間の確保の観点からも大切な時間です。
Re: 運動と減量
コメント頂き有難うございます。
ジョギングは昔試みたことはあるのですが、
習慣化するのがなかなか難しかったように記憶しています。
でも今ジムで似たようなことは試みているので、効果を確認していきたいと思います。
Re: Re: 高負荷運動
健康的運動かとは思いますが、ビルドアップには不向きかと。15回も上がる回数はウォームアップセットにして、全力でも8回/5回/3回しか上がらないセットを入れたいです。ウエイトトレーニングでつけた筋肉は役立たないと言われますが、マシンの場合は特に動作方向が限定されるので、その傾向が強いです。また、すぐにプラトーに達して何年やっても無意味だったとなりかねません。昔も今もトレーニングの王様と言われているスクワットを中心にすべきです。私の場合は、スクワットを組み入れたトレーニング日が憂鬱でした。あまりにも疲労困憊するからです。週一回が限界でした。腕、肩、胸、腹筋、背中、下腿の場合は苦になりませんでした。
Re: Re: Re: 高負荷運動
コメント頂き有難うございます。
> 15回も上がる回数はウォームアップセットにして、全力でも8回/5回/3回しか上がらないセットを入れたいです。
> ウエイトトレーニングでつけた筋肉は役立たないと言われますが、マシンの場合は特に動作方向が限定されるので、その傾向が強いです。
> 昔も今もトレーニングの王様と言われているスクワットを中心にすべきです。
なるほど。大変参考になります。
御助言を参考にいろいろ試してみたいと思います。
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