師匠を超えていく

2017/07/21 00:00:01 | イベント参加 | コメント:3件

先週末、東京で行われたフェルラ酸研究会という勉強会に出席してきました。

フェルラ酸というのは、当ブログでも紹介した認知症に対するサプリメント「フェルガード」の構成成分の1つです。

フェルラ酸研究会というだけあって、多くはフェルガードが話題の中心におかれることが多いのですが、

臨床医は勿論、大学教授から基礎研究者まで様々な立場の人がそれぞれの視点でフェルラ酸について語られるので、

変な製薬会社の勉強会よりもよほど面白く勉強になるところが多い会なので、私は好んで参加し続けています。

そんな様々な発表がある中で、私が一番良いと感じたのは、

新横浜フォレストクリニック、中坂義邦先生の御発表です。

なぜ良いと感じたかと言えば、中坂先生が「フェルガード」で悪化した症例について発表されていたからです。 こういう研究会は、サプリメントとはいえども、だいたいは製薬会社の援助によって成り立っています。

この会を後援する株式会社グロービアも、例に漏れずフェルガードを販売促進している会社です。

そんな状況の中、普通の研究会であれば、後援している製薬会社の製品を絶賛する発表ばかりなされ、大変バイアスのかかった勉強会になりがちなのですが、

中坂先生はそこに一石を投じた形の発表を今回なされたのです。


中坂先生は私と同じ神経内科医で、ブログも書いておられます。

新横浜フォレストクリニック 院長ブログ:http://forestcl.exblog.jp/

積極的な糖質制限推進派というわけではありませんが、糖質制限について理解を示しておられる先生です。

病院の名前にフォレストクリニックとありますが、これはコウノメソッドの創始者、名古屋フォレストクリニックの河野和彦先生に敬意を払っての命名だそうです。

中坂先生は5年前にコウノメソッドに出会い、その効果に驚いて河野先生にすぐに手紙を書いてコンタクトを取り、

3度の外来見学を経て、コウノメソッドを参考にした自由な神経内科診療を行うべく、病院を辞め御自身の開業に至りました。

非常に行動力があり、同じ神経内科医で似たような境遇にあるため、個人的に大変シンパシーを感じている先生です。

中坂先生のブログを御覧になって頂くとわかると思いますが、

大変細かく丁寧に病態の分析をなさっています。

例えば一般的な神経内科医であれば、パーキンソン病の人が認知症を合併した場合、

ガイドラインに基づいて何の疑いもなく、抗コリンエステラーゼ阻害剤、例えばドネペジル(商品名:アリセプト)を処方しますが、

中坂先生は精神不安定症状が出ているようなパーキンソン病患者は相対的にアセチルコリン過剰の状態にあるので、

アセチルコリンを無理やり絞り出すような方向に働きかける抗コリンエステラーゼ阻害剤をそんな患者に使えば火に油を注ぐようなものだと明確に反論されます。

そして今回のフェルラ酸研究会で御発表された内容も、

そのようなアセチルコリン過剰が示唆される病態の人にフェルガードを用いて悪化したという事を報告するものでした。

しかし中坂先生の話はここで終わりません。フェルガードの中のもう一つの成分、ガーデンアンゼリカに弱い抗コリンエステラーゼ阻害剤がある事を示し、

弱い抗コリンエステラーゼ阻害作用であっても、アセチルコリン過剰の病態の人に使ったら有害であるという仮説を提示して、

その仮説をもとに、フェルガードを使うのではなく、海外よりフェルラ酸単独の製品を輸入し、

それまで何を使っても改善しなかった患者さんらの症状が80~90%の確率で改善するという事を示されたのです。

さらに凄いことにその事実を株式会社グロービアに伝え、フェルガードからガーデンアンゼリカを抜いたフェルラ酸だけの「フェルガードF」なる製品を作ってもらったというのだから驚きです。

中坂先生の、目の前の患者さんを良くするための真摯な姿勢が、

フェルラ酸研究会という会の健全性を保っているように私には思えました。


このエピソードから考えてみても、

中坂先生がいかに「自分で考える力」を持っておられる先生かはよくわかると思います。

河野先生のコウノメソッドをきっかけにフェルガードを知り、常識にとらわれずにそれを使用され続けてきた日々、

しかしそれでも改善しない患者さんに対して「限界」の二文字を安易につきつけず、考え抜いてたどり着いた今回のフェルラ酸単独使用、

師匠である河野先生の教えに捉われず、自分の頭で考え続けた結果、師匠を超えていく方法を導かれたのだと思います。

師匠と違う方法をとること自体は別に悪いことではないと思います。

医師の務めである患者の症状をよくするという目的のためにとった行動であれば、

器の大きな師匠であれば、むしろ喜んでさえくれるのではないでしょうか。


糖質制限や湿潤療法も同じです。

「守破離」という言葉が教えてくれるように、

いつまでも師匠に甘んじるのではなく、

師匠を超えていくつもりで人生を生き抜くべきだと私は思います。


たがしゅう
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コメント

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2017/07/20(木) 14:47:05 | | #
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Re: タイトルなし

2017/07/21(金) 08:20:41 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
マロン さん

 コメント頂き有難うございます。

 私は師匠への敬意を払いつつ、師匠を超えて前に進んでいきたいと思っております。

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2017/07/21(金) 10:38:41 | | #
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