やるべきことをやっていればよい
2017/07/08 00:00:01 |
普段の診療より |
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時々看護師さんから患者さんの血圧が高いという事で相談を受けることがあります。
医学的には高血圧緊急症という、放置していると意識障害をきたしたり、腎機能が急速に悪化していく病態が知られているからです。
ただそれは言わば血圧管理システムのオーバーヒート状態であって、よほどでないと起こりません。
多くの場合は、症状は何もないけど血圧が高いというような状態です。
例えば、ある患者さんの血圧が180~190mmHgであったりする場合に、看護師さんやリハビリの療法士さん達から「このまま様子を見ていていいのか」「このままリハビリを続けていいのか」などと不安気に聞かれる事があります。
そういう場合の私の基本的方針は「やるべきことをやっていれば経過観察」です。 そもそも、血圧が高くなるという現象には意味があると私は思っています。
動脈硬化で硬く狭くなった血管に対して、末梢の隅々にまで十分な血流を送るためにはある程度心臓から血液を送り出すのに圧力が要るというのは必然です。
それに血圧が180-190mmHgになるような事態は今に始まった話ではありません。血管壁のリモデリングも繰り返され、高い血圧に耐えているような状況です。
むしろ問題は急激な血圧の変化です。180-190mmHg程度でちょうどいい平衡状態を保っているような状態に対して、
急速な降圧手段を取ろうものなら、逆にそのバランスが崩れ、血流が保てなくなることで臓器への血流不足を生じ、
血圧は下がったけれど、かえって体調は悪くなるといった本末転倒な話にもなりかねません。
昔、血圧が高いというだけである種の降圧剤が舌下投与されていた時代がありましたが、
上記の理由以外にも緊急降圧により反射性頻脈をきたしたりというので、最近は医療現場の中でも安易な緊急降圧を避ける認識が一般的になってきています。
また逆も然りであり、常時晒されている高血圧には緊急で対応する必要はないけれど、急に血圧が上昇するような事態に対しては速やかな原因究明と対策が必要となります。
例えば、何か感染症を合併していたり、痛みがあって血圧が上がっているのかもしれません。
その場合も血圧を下げるというのが目的ではなく、血圧が上がっている原因を取り除き、結果的に血圧が下がるという順番であるべきです。
さて、そういう急に血圧が上がる要因がない場合の私の基本的な対応ですが、
まずは基本的に糖質制限を勧めます。これで動脈硬化性の高血圧に対しては緩やかに改善方向に持っていくことができます。
多少血圧が高い状態が続こうとも、長い目で改善していくのをあせらずゆっくり見守っていきます。
その一方で東洋医学的診察でストレス反応の有無を見ます。
望診や問診で表情や話し方をみていてもわかりますし、腹診では胸脇苦満や臍傍悸といった所見を参考にします。
その結果、ストレス反応が高ければ、自律神経失調、すなわち交感神経過緊張も高血圧の一因となっていますので、
深呼吸やマインドフルネスなどのセルフマネジメント法を指導したり、それができない人にはその人の状態に合わせて漢方薬を処方しストレス反応の軽減に努めます。
これらの努力を続けていれば、すぐには血圧が下がらずとも、長い目で下がってくることが多いので、
こうした事を十分に行った上で、スタッフにはある程度の高血圧を許容すると伝え、様子をみているのが私のスタンスです。
実はこのことは、糖質制限をしていてLDLコレステロールがなかなか下がらないという現象とも共通構造があります。
糖質制限下におけるLDLの上昇は、意味のある上昇であり、微小炎症のある身体の修復が必要な部位を修復するために必要量が動員されているのを見ているだけであり、
きちんと糖質制限+ストレスマネジメントの基本を守り、
酸化、糖化、炎症をコントロールすれば、次第に治まっていくはずです。
見かけの現象に捉われず、本質的なアプローチを忘れないようにしたいものです。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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