自分で仕事の限界を決めない

2017/07/01 00:00:01 | おすすめ本 | コメント:0件

糖質制限を通じて知り合ったお友達から面白い本を提供してもらいました。

私は今年のはじめに職業の幅を超えて仕事というものを捉えようという意志表明を致しましたが、

今回御紹介する本は、まさにそれを地で行っているような方が書かれた本です。



すぐやる! 「行動力」を高める“科学的な"方法 単行本(ソフトカバー) – 2016/7/27
菅原洋平 (著)


著者は作業療法士で、ユークロニアという人材開発会社の代表でもある菅原洋平さんです。 作業療法士というのは、リハビリにおける職業の一つで、

家事、仕事、食事、排泄、余暇活動など日常生活のあらゆる諸活動を意味する「作業」を通じて病気によって生じた障害を回復させようとする技術のプロフェッショナルです。

私も神経内科出身でこれまでさまざまな作業療法士さんと関わってきましたが、

会社まで設立し、本まで書いたという作業療法士さんがいたとはこれまで知りませんでした。

作業療法士は上肢機能や高次脳機能を中心に評価し、状況によって道具を用いることで機能の向上を図ったり、障害を乗り越えようとするというのが主な仕事の枠組みですが、

菅原さんの場合はその発想を優に飛び越えているということがこの時点ですでにわかると思います。

そして書かれている内容がまた素晴らしい。

脳のクセを知り、その特徴を活かし、問題を先延ばしにしないすぐ行動できるようになるためのアドバイスがたくさん書かれているのです。

作業療法士も資格を取得する勉強の中で、脳の仕組みや解剖を習いますが、

その知識をこのような形で会社設立、書籍発行にまで活かすというのがなかなかすごいことだと思いませんか。

書かれている内容も非常に緻密でかつ一般読者にわかりやすく表現されています。

菅原さんの興味深い主張の一つが、「すぐやることができない人は性格が悪いわけでも、意志が弱いわけでもない。脳に入る情報を変えれば誰でも脳をすぐできる状態に仕向けることができる」というものです。

一例を挙げると、こんな感じです。

(以下、p5-6より引用)

患者さんのリハビリテーションに携わっていると、

それまでは「すぐやらなかった」患者さんが、突然「すぐやる」ように変わることがあります。

たとえば、ある患者さんは、自分で食事をすることができませんでした。

脳に損傷はあるものの、手も動くし、食事をする能力自体はある。でも、食事を出されても自分では食べないのです。

すると職員が介助することになりますが、それでも長い時間がかかり、その後の予定も遅れてしまっていました。

それで、この患者さんは、職員の間では「手のかかる人」「症状が重い人」と認識されていました。

ところがあるとき、少し食事の方法を変えたら、その状況は一変しました。すぐに、自分から食事をし始めるようになったのです。

何を変えることで、その変化が生まれたか。

実は「一品ずつテーブルに置くようにした」だけです。

それまでは、定食のようにトレーにすべての料理を並べていたものを、コース料理のように一品ずつ順番にテーブルに出すようにしました。

ただそれだけで、自分できちんと食べるようになったのです。

それどころか、入浴や整容(姿形、身なりを整えること)にも積極的になり、

その患者さんはほんの数日で「手のかかる人」ではなくなりました。

(引用、ここまで)



このケースは、脳に入る情報量を少なくすることで、

脳にダメージを受けた患者さんでも情報処理がスムーズに行くようになった症例です。

菅原さんのすごいところは、この現場での経験を「健康な人にも応用できるかもしれない」と考えたところです。

まさに仕事の枠を飛び越えた瞬間です。

そう考えたからこそより多くの人にこのメソッドを伝えるために会社も興したし、本も書いたのだと思います。

紹介した例以外にもなかなかやめられないクセを直すために大事な方法がたくさん書かれていて大変参考になりましたが、

この本から学んだ一番大きなことは、

自分で仕事の限界を決めてはいけない」ということだと思います。


たがしゅう
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