治療の不自然さに気付く
2017/06/30 00:00:01 |
ふと思った事 |
コメント:6件
昨年末にレヴィ=ストロースの構造主義に出会ってからというもの、
世の中のあらゆる事象における共通構造を意識して考えるクセがついてきています。
十分な糖質制限ができない人に対して、
SGLT2阻害剤という尿中に糖質を排泄する薬を使って、糖質制限状態を維持しようという治療方法があります。
SGLT2阻害剤は近年評価が高まってきている薬なので、この方法には違和感を感じない人の方が多いかもしれませんが、
この治療方法と同じ構造を持つ次のような治療について考えると意見が変わるかもしれません。 高血圧に対する食事指導として、塩分制限が広く知られています。
塩分が身体の中に取り込まれれば、血液の中に入り浸透圧を上げ、浸透圧を正常化するために周囲の水分が血管内に移動し、
結果的に血液のボリュームが増えて血圧が高くなるという理屈は確かにあります。
しかし、実際にはナトリウム・ホメオスターシスといって、
塩分が身体の中で一定の濃度で保たれるよう身体には複雑なシステムが張り巡らされているので、
その機能が保たれている人は少々高塩分のものを食べたところで額面通りには血圧は上がっていきません。
ところが、高齢者や腎機能障害のある方などはそのナトリウム・ホメオスターシスの働きが低下しているので、
摂取した塩分がそのまま血圧上昇に寄与してしまうということが本当に起こり得ます。
その時にはじめて減塩指導は意味を成してくるわけですが、
塩分制限は食品の味をうすくするので、食べても物足りなさが出る点は否めません。
そうすると塩分制限を拒否して食べたいものを食べたいという方も出て来うるわけですが、
そんな患者さんに提案できるアプローチの一つが、ナトリウムを尿中に排泄させる利尿薬を飲んでもらうという方法です。
これって強制的に人間の身体を操作する感じが伝わって来ませんか?
糖質摂取を許容しながらSGLT2阻害剤を飲むという行為は、このことと共通構造を持っているのです。
私達はこの不自然さに気付く必要があると思っています。
塩分を摂ることと利尿薬で尿が排出されることが等価値の出来事ならまだわかります。しかし、実際には尿中にナトリウム以外にいろいろなものが同時に排泄されてしまっているのです。
そんな不自然なやり方でその場をしのぐよりも、
塩分、糖分がなければ満足できない味覚を作った原因を考えるべきだと私は思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
お暇な時に興味がありましたら覗いて見て下さい。
自然か不自然か?
もっと、気軽に先生にリアルに話しかけてみたいです。メトホルミンも、クラクティブもやめて、糖質制限を、実行してると、病気のことを、いつのまにか忘れています。
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます。
> 既にお知り合いかもしれませんが
よく存じ上げており、お世話になっております。(^^)
数々の実験の蓄積、素晴らしいですよね。
Re: 自然か不自然か?
コメント頂き有難うございます。
ホジュン先生について存じ上げなかったので、軽くWikiで調べました。
「ホジュン 宮廷医官への道」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%B3_%E5%AE%AE%E5%BB%B7%E5%8C%BB%E5%AE%98%E3%81%B8%E3%81%AE%E9%81%93
>さまざまな困難に苦戦するが、自分の正しさを信じ、自らの道を突き進む強い意志の持ち主。献身的な治療で、多くの人々を救うためにひとつでも多くの病の治療法を見つけるためにホ・ジュンは奮闘する。
私への褒め言葉と解釈させて頂きます。有難うございます。(^^)/
> 糖質制限を、実行してると、病気のことを、いつのまにか忘れています。
私はそもそも病気は存在しないという考え方もあっていいのではないかと思っています。
私達が病気を見つけようとするから病気になってしまうという側面があります。病気の事をあまり気に病み過ぎず、健康を保つのに正しいと思う事を愚直に続け、体調の良し悪しで適宜軌道修正する、そのように考えてストレスマネジメントするのも健康を守る方法の一つだと思います。
2014年3月31日(月)の本ブログ記事
「そもそも病気とは何なのか」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-227.html
も御参照下さい。
No title
いつも興味深い記事をありがとうございます。
「治療の不自然さ」の裏には、
製薬会社とその関係者の野望が見える気がします。
本気で治す事が気があるのなら・・・
と、考えてしまいます。
「不自然さ」という点では、
化粧品業界も同じだと思ってます。
人間の肌は、潤い、守るという、バリア機能があるのにも関わらず、
人工的なバリア(化粧水、クリーム)を補い、
肌本来の機能を失わせようとしています。
私は、宇津木医師の本に出合い、納得しスキンケアを止めました。
自分は乾燥肌だと信じていましたが、肌本来の機能が戻りました。
化粧品会社に騙されちゃった、という気分です。
今まで化粧品につぎ込んだお金は勉強代です。
こんな感じで、世の中、不自然な事が多いのでしょうね。
きっかけがあれば、気付くことが出来るのでしょう。
たくさんの、きっかけ大歓迎です。
先生、「きっかけ」をありがとうございます!
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
製薬会社の陰謀とか、つい考えてしまいがちですが、実際ほとんどの社員は打算的というわけではなく、規則に従って動いて結果的にそのように見えるだけと思います。
その裏に隠れたもっと複雑な問題があり、その問題と私達自身の心の闇もつながるという事を考える必要があると最近私は考え始めています。
他人を攻撃するのは気持ちがいいし、たやすいことです。しかし同様の構造が自分の中にも隠れていないか、そういう視点で自分を見つめ直すことも大事であるように思います。
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