白い巨塔から学ぶこと

2013/09/14 21:56:22 | ふと思った事 | コメント:3件

私は普段あまりドラマは見ないほうなのですが、

2003年にフジテレビ系列で放送された『白い巨塔』はものすごく見ていました。

これまでも1978年(田宮二郎主演)と1990年(村上弘明主演)に放送されていたそうなので、かなり広い世代に認知されている医療ドラマではないでしょうか。

私は2003年版の白い巨塔しか知らない世代ですが、唐沢寿明さん演じる財前五郎医師と江口洋介さん演じる里見脩二医師が実にハマリ役で当時医学生だった私は人事ではない思いで真剣に見ていました。

「○○教授の総回診です」というアナウンスに始まり、教授を先頭にゾロゾロと医師が並んで歩いく姿は大学病院の象徴的な姿でとても印象的な場面です。権力にまつわる医師どうしの醜い争い、医師として患者へどう向き合うべきかを問いただす名作であると今でも思います。

いろいろな問題をはらんでいる作品なので感想は一言では言えません。ただ財前医師のように厳しすぎても駄目、かといって里見医師のように優しすぎても駄目、その間で常に悩み続けながら診療をしていく、医者の仕事というのはそういうものなのだという事を感じたことをなんとなく覚えています。

最近機会があってその再放送見ることがありました。

あれからもう10年も経つのかと感慨深く思いながら見ていましたが、また時間が経ってから見ると別の見方ができてきます。

ある患者がなくなった裁判で、原告側の証人として呼ばれた医師が難しい医学用語を並べ立ててその診療内容には問題があったと言ったり、はたまた被告側の証人医師がいやその診療には妥当性があったなどと議論が水掛け論になっている中で、訴えを起こした遺族が「何を言っているのかさっぱりわからない…、私たちはちゃんと謝ってほしいだけなのに…」と気持ちが置き去りにされたまま裁判が進んでしまっているという場面がありました。

それに気づいた原告側の弁護士が「患者さんの気持ち」に注目して、その後裁判での戦い方を変えていくという物語なのですが、

これを見て今改めて気がつかされたことがありました。

すなわち、「患者さんがわからなければ(患者さんが治らなければ)、どれだけ難しい事を知っていても意味はない」ということです。

そしてこの度たまたま認知症に関する二つの勉強会に2日連続で参加する機会がありました。

1日目は認知症についての画像診断についての勉強会でした。MRI、脳血流シンチグラフィなどで各認知症の原因となる疾患の特徴的なパターン、それらの非典型例、アミロイドPETなど最新の技術の話などを聞きました。
内容が難しすぎる上に、こういう場合もある、ああいう場合もある、みたいに例外もたくさん紹介されるので、結局どのように頭の中で整理していいのかがよくわからず眠たくなってしまいました。

2日目は先日紹介した認知症コウノメソッドです。初めて河野先生の御講演を聞きましたが、終始患者さんを改善させるためにはどうすればいいかという話を徹底的に提示されました。また動画による情報も駆使されたとてもわかりやすい御講演でした。我々神経内科医にとって耳の痛いメッセージも聞かれて、身につまされる思いになると同時に非常に勉強になった有意義な時間でした。

前者は1時間程の講演でしたが眠くなり、後者は3時間の講演でしたがあっという間に時間が過ぎ、いっぱいメモを取りました。早速週明けからの診療に活かしていこうという気持ちになりました。

要するに「医者がエライかどうかとか、専門家であるかどうかとか、論文をいっぱい書いているかどうかとか」はどうでもいい事なのです。

そんな事よりも『親身になって話を聞くことができるか、わかる言葉で説明することができるか、実際に患者をよくすることができるか』、これが医者にとって大事な事なのだと思います。



たがしゅう
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コメント

No title

2013/09/14(土) 22:42:56 | URL | SLEEP #MJIT/aOk
OJシンプソン裁判というのもありましたね。玄人には素人にもわかるよう説明する義務があるという意味で社会人になると見方が変わりますね。

手続きや礼儀、身だしなみ、そういったどうでも良いと思っていたものが大事だと思えたこ時こそ大人になった証じゃないかと最近思います。

Re: No title

2013/09/15(日) 01:48:52 | URL | たがしゅう #-
SLEEPさん

 いつもコメント有難うございます。

> 手続きや礼儀、身だしなみ、そういったどうでも良いと思っていたものが大事だと思えたこ時こそ大人になった証じゃないかと最近思います。

 そうですね。冠婚葬祭などはまさにそうかもしれません。
 根底にあるのは「相手への思いやり」、ですね。

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2014/01/27(月) 17:01:30 | | #
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