5日間断食データから読み取れること

2017/11/09 00:00:01 | 断食レポート | コメント:8件

前回は5日断食実験における私の血液検査データを御覧頂きました。

本日はその結果を受けての私の感想を徒然なるままに書き連ねてみたいと思います。

まず最初に思ったのは、今回の実験では5日目に血糖値が55mg/dLまで低下しておりましたが、

2013年に8日間の断食実験をした時は7日目でも血糖値は64mg/dLまでしか下がっていませんでした。

なぜ7日間よりも短い5日間でより低い血糖値を呈したのか、それは断食前の食事が糖代謝メインで駆動される内容だったからだと私は考えます。

2013年に8日間断食を実行した際は、実はその1週間前に3日間の断食も施行していました。その時のデータは夏井先生の新しい創傷治療サイトへ投稿しております。 直近の時期に3日断食を行っていれば、しかもその後糖質制限をしていれば、代謝は糖代謝よりケトン体代謝メインとなっているはずです。

ケトン体代謝メインの時は長期間断食しても血糖値が下がりにくい、逆に糖代謝メインの時は短時間断食でも血糖値が下がりやすいという事が、少なくとも私の中では言えそうです。

そしてこの事は糖代謝メインの人がいきなり断食すると起こる危険性をも物語っているように思えます。

今回の5日間断食実験では立ちくらみが頻回に起こっていましたが、それも今にして思えばその影響もあったのかもしれません。


その他の注目点としてはビタミン・ミネラル類がさほど低下していないという点です。

それどころかフェリチン、ビタミンB2、ビタミンB12、銅、亜鉛など一部のものに関しては経過とともに上昇さえしているように思えます。

細胞破壊があって血中に漏れ出た可能性も考えますが、もし細胞破壊があれば上昇するLDHやカリウムは基準値内にあり、とても上昇しているとは言えませんし、

炎症反応を示すCRPも0.1mg/dLと微動だにしていません。組織破壊に伴う漏出の線は薄いでしょう。

という事は増加したビタミン・ミネラルの分は一体どこから現れたのか、については全くわかりません。読者の方で何か御見解がありましたら賜れれば幸いです。

あとは前回の8日間断食の際にも確認されたことですが、

尿酸、LDL-コレステロールが明らかに急上昇してきています。

よく見るとビリルビンも間接型優位に上昇してきています。

間接ビリルビンは抗酸化作用があるという可能性について以前学びました。

従ってこれにケトン体の急上昇も併せて考えれば、断食によって抗酸化力が急速に高められているという可能性が考えられます。

尿酸は規格外に上昇していますが痛風発作はまったくもって起こっておりません。単に尿酸の数値で尿酸結晶ができて関節炎をきたすというわけではないという事も読み取れます。

一方でLDLはこんなに急上昇しているのに、HDLはほとんど変化がないという点にも注目しますと、

LDLとHDLは性質が明らかに違うということ、尿酸、ケトン体、ビリルビンらとともにLDLは絶食によって起こる代謝変化に対応して急速に動員される物質であるという事がわかります。

そしてLDLは必ずしも悪玉ではなく、尿酸やケトン体と同様に必要があって上昇している物質である可能性も示唆されます。

私は組織で起こっている微小炎症を修復するためにLDLが総動員されているのではないかと考えています。


あとは蛋白、アルブミンも何気に上昇していますね。

タンパク質など1gも摂取していないにも関わらずです。半減期の問題もあるから一概には言えないかもしれませんが、

こういう所にはオートファジーシステムが駆動している可能性が感じられます。

一方で断食がストレスとなる可能性に関してですが、

少なくとも私に関して言えば、コルチゾールはほぼ一定で推移しているのでストレスにはなっていません。

一方で3日目からは成長ホルモン、ノルアドレナリン、アドレナリンの上昇傾向が見て取れますので、

低血糖に対するバックアップシステムはコルチゾールでない所で働いていることがわかります。

しかしなぜか成長ホルモンでのサポートは3日目をピークに5日目には低値へと逆戻りしています。

まだ低血糖を脱しているわけではないのに、成長ホルモンのサポートが終了しているのはなぜでしょうか。

低血糖でもケトン体が十分に利用できる状況に代謝状況が切り替わったため、成長ホルモンでのサポートは打ち切られたのかもしれません。

その他はアミラーゼの低下は膵型がメインであったり、総胆汁酸が低下してきていることからは

断食によって膵臓がしっかり休まっている様子を見てとることができます。

また断食によってlow T3症候群を呈しており、身体が節約モードに突入しているという事も読み取れます。

他にも私がまだ気づいていない事がいろいろあるかもしれません。

読者の方々からの様々な御意見・御感想をお待ちしております。


たがしゅう
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コメント

非常に興味深いです(長文です)

2017/11/09(木) 10:33:34 | URL | ドクターシミズ #LkZag.iM
いつも非常に興味深い記事をありがとうございます。

まずは、ビリルビンですが、私も60時間断食で総ビリルビンが0.9→1.8、間接ビリルビンが0.7→1.3と上昇しました。尿酸も5.3→7.9と上昇しました。抗酸化力が上がったのか、抗酸化力を上げる必要に迫られたのかわかりません。

LDLは何をしているのか非常に興味を持っています。悪玉ではないことは確かです。私は微小炎症に対応しているのではなく、LDLがVLDLからできているということを考えると、絶食により各組織の脂肪酸の需要が急速に高まることにより、VLDLをとにかくたくさん作って送り出しているのでは?と考えています。

フェリチンは私の最近の考えは細胞が壊れて出てきているものと捉えているのですが、LDHの単位は国際単位で、どれぐらいなのか私には知識が無くてわかりません。しかしフェリチンの単位は「ナノ」なので、非常に微量です。LDHが変化する前にフェリチンの上昇がある可能性はどうでしょうか?
カリウムも上昇していませんが、電解質の恒常性は非常い強いので、急激な変化でない限り上昇はしないのではないでしょうか?いずれにしても、フェリチンが鉄の貯蔵量を正確に反映しているとは思えないデータですね。

あと、レニンーアルドステロンが上昇していますね。ヘモグロビンなどの上昇を加味すると、脱水傾向になっているかもしれません。アルブミンなどの上昇も、私の経験でも確かに絶食で上昇しましたが、もしかしたら脱水による
様々なデータの上昇かもしれません。

BNPの低下も何か興味ありますね。

気になったのがやはりHDLの低さとTGの高さ、空腹時インスリンの高さです。前日の食事のせいも否定できませんが、カイロミクロンの半減期を考えると、TGはやはりVLDL由来だと考えられます。インスリン抵抗性も2.7程度なので高いですよね?私は絶食でHDLが微減しました。
もしかしたら、先生はタンパク質を糖質に変換する量が非常に多く、糖質そのものは摂っていなくても、糖質が体の中で多く存在し、TGが高く、HDLが低いという可能性はありませんか?

ダラダラと思ったことを書いてしまい、申し訳ありません。これからも先生の記事を楽しみにしています。

Re: 非常に興味深いです(長文です)

2017/11/09(木) 13:28:27 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
ドクターシミズ 先生

 コメント頂き有難うございます。

> LDLは何をしているのか
> 絶食により各組織の脂肪酸の需要が急速に高まることにより、VLDLをとにかくたくさん作って送り出しているのでは?と考えています。


 なるほど、確かにケトン体の上昇と合わせますと、
 組織での脂質代謝での需要が高まっているとの考えは納得がいきます。

> LDHが変化する前にフェリチンの上昇がある可能性はどうでしょうか?
> フェリチンが鉄の貯蔵量を正確に反映しているとは思えないデータ。


 確かにその可能性もあるのかもしれませんね。
 「フェリチン=貯蔵鉄」と習いましたが、よく考えればその理由を正確に把握できていません。
 一定の条件下でしか成り立たない話なのかもしれず、この辺りのメカニズムも改めて勉強し直してみたいと思います。

> レニンーアルドステロンが上昇していますね。ヘモグロビンなどの上昇を加味すると、脱水傾向になっているかもしれません。アルブミンなどの上昇も、私の経験でも確かに絶食で上昇しましたが、もしかしたら脱水による
> 様々なデータの上昇かもしれません。


 絶食4日目、5日目あたりは空腹感はさほどでもないのですが、水はやたらと飲みたくなる感じがありました。
 それゆえ結構頻回に水を飲んでいたように思うのですが、それを上回る脱水があったという可能性までは否定できません。 
 しかし一方で抗利尿ホルモンの変動は見られないので、利尿で調節する必要がないくらい水分摂取できていたと考えれば脱水ではないのかもしれません。この辺りは謎です。

> 気になったのがやはりHDLの低さとTGの高さ、空腹時インスリンの高さです。
> インスリン抵抗性も2.7程度なので高いですよね?
> もしかしたら、先生はタンパク質を糖質に変換する量が非常に多く、糖質そのものは摂っていなくても、糖質が体の中で多く存在し、TGが高く、HDLが低いという可能性はありませんか?


 私には肥満が残存していますので、インスリン抵抗性は高くて然る状況にあります。
 御指摘のように私はタンパク質から効率的に糖質を変換できる素質があるようです。インスリンもすごく出やすいです。サラダチキン負荷試験やササミ負荷試験での私のデータもそれを物語っているように思います。だからこそなかなか痩せずにインスリン抵抗性も落ちにくいのではないかと思います。

 貴重な御感想、心より感謝申し上げます。
 今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。

2017/11/09(木) 15:12:48 | URL | 酒粕女 #-
もしかして次のブログ更新テーマなのかも知れませんが、今までの実験結果を踏まえてたがしゅう先生の減量計画はこれからどのような過程で進むのか教えてもらえませんでしょうか。
正直思うのは、たがしゅう先生の体重がジリジリと元に戻るかの如く増量している気がすることです。
たがしゅう先生の体重がチートディで大量に食べたということですが105kgにはちょっとびっくりしました。数年前の断食合宿の後は90kg前後でしたよね?それから増量するにしても90kg代後半にはちょっと増えすぎかなあと。
糖質制限をこのまま続けてもリバウンドということが起こるかもしれしれないですよね?現にその兆候がネットの糖質制限系ダイエットをされた方達に散見されます。
糖質制限から他の方法論へとシフトするのも結果を見れば納得できると思うのですが。

クレアチニン上昇は?

2017/11/09(木) 15:42:20 | URL | りんご #-
クレアチニン(mg/dL) 0.75 0.84 0.90  と食事内容で影響受けないはずのクレアチニンが上昇しているのはなぜでしょう。私自身は、糖質制限前クレアチニンが高めでCKDだと思い込んでいたんですが、糖質制限でクレアチニンが正常化しています。どう解釈したらいいんでしょうか?

Re: タイトルなし

2017/11/09(木) 15:47:28 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
酒粕女 さん

 コメント頂き有難うございます。
 よく見て頂いていて恐縮です。

 2014年夏の断食道場の効果は正直言って長続きしておらず、実は比較的早い段階で99㎏くらいまでリバウンドしています。
 その後、じりじりと体重増加してしばらく101~102㎏前後で推移している日々でした。
 最近になってチートデイも入れて105㎏まで増加した所からの今回の5日間断食で、97㎏まで減りましたが、今はもうすでに102㎏です。1日1食にしているにも関わらず、です。週に1回24時間断食しているにも関わらず、です。何とも太りやすい体質です。

 一方で別に減量計画など綿密に立ててはいません。太りやすい体質であろうとなかろうと食べ過ぎれば太る、食べなければやせるという意味でただ私が自分の食欲をコントロールし切れていないというだけの話です。できればやせたいとは思いますが、それを克服できなければできないでありのままを受け入れればよいと思っています。

 101kg~102kgに戻る事をリバウンドと言われれば確かにリバウンドしていることになりますが、
 私はもともと134㎏の超肥満です。その頃は振り返れば地獄の日々でした。その経験があるので私は今の状態をリバウンドとは思っていません。他の肥満型糖質制限実践者でジリジリ体重が増えていると言っている人でも、糖質制限開始前まで体重が増えた人はまずいないのではないかと思います。

No title

2017/11/09(木) 16:12:05 | URL | Etsuko #-
いつも興味深い記事をありがとうございます。

データとして数字が並ぶと面白いですね。
先生の考察があるので、より面白くなりました。
推理小説を読むような気分で数字を眺めました。
医学的な知識に乏しい素人が推理してみました。

「ビタミン・ミネラル類がさほど低下していないという点」
腸内細菌が栄養の減少に適応し、古くなった腸の細胞を材料に作り出した?

「LDL-コレステロールが明らかに急上昇」
成長ホルモンのサポートがある間、細胞の修復の材料である
LDLコレステロールの需要が増し、体脂肪を材料に量産された?
ケトン体質に適応したLDLコレステロールの生産量に、
肝臓が適応するまでの間(1~2年)LDLコレステロールが
高くなる人もいる。

「尿酸、ビリルビンも上昇」
断食による酸化ストレスで、抗酸化作用のある尿酸、ビリルビンが増える。
ケトン体、尿酸、ビリルビン等の抗酸化作用のおかげで炎症を防げるため、
CRP値に変化がない?

「蛋白、アルブミン」
オートファジーによる材料提供


Re: クレアチニン上昇は?

2017/11/09(木) 16:18:29 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
りんご さん

 御質問頂き有難うございます。

> クレアチニン(mg/dL) 0.75 0.84 0.90  と食事内容で影響受けないはずのクレアチニンが上昇しているのはなぜでしょう。

 クレアチニンは筋肉痛などの筋組織崩壊があっても上昇します。CPKも微増していますし、ZUMBAなどで運動した影響ではないかと思われます。シスタチンCも一緒に測ればよかったですね。

Re: No title

2017/11/09(木) 16:23:54 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
Etsuko さん

 コメント頂き有難うございます。

 私が考えた考察も想像の域を出ない所があります。しかし様々なアイデアが集まっていくことで結果的に真理に近づいていく、それが集合知というものだと思っているので、様々な御見解を頂ける事を大変ありがたく思っています。

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