ビタミン補充療法についての私見
2017/10/18 00:00:01 |
ふと思った事 |
コメント:5件
私は糖質制限を通じて患者さんへ病気による支配から人生を取り戻してもらう医療を目指しています。
そのためには「お医者様の仰せのままに」という受け身的な治療ではなく、
自分自身が考えられる病気の原因と向き合い対処するという主体的治療の視点が不可欠です。
言い換えれば根本原因を放置したままに薬を使用するプラスの発想ではなく、
自分の生き方に由来する病気の原因となりうる要因を除去するマイナスの発想が必要ということになります。
そんな中、糖質制限界で取り沙汰されるビタミン補充療法についてはどうなのでしょうか。
本日はビタミン補充療法についての私の個人的見解を述べたいと思います。 基本的にビタミン補充療法はプラスの発想です。
一方で根本原因を放置しているかと言われたらそういうわけではありません。
ビタミンが消費されるのは主として代謝の過剰回転、特に異常高血糖やアルコールなど毒と捉えられる物質の解毒反応が起こる場合です。
糖質頻回過剰摂取でビタミンも大量消費される状況であれば、ビタミン補充療法は部分的に対処していることになると思います。
しかし大元の糖質摂取には対処していないので根本的な対処にはなっていません。
そこで糖質制限+ビタミン補充療法という発想が出て来ます。いわゆるオーソモレキュラー(分子整合栄養医学)の考え方です。
でも糖質を制限すればそれに付随するビタミン消費が起こることもないので、
糖質制限だけで充分ではないかという考え方も出て来ると思います。私は基本的にこちらの考え方です。
ただビタミンは自然界に存在し多くは水溶性であり、人為的に構造をいじった西洋薬に比べて大量投与による副作用が少ないというメリットがあります。
従って糖質を制限しながら枯渇しているかもしれないビタミンを多めに補っても実害は少ないという考え方は分からないでもありません。
けれど広い目で見るとビタミン補充療法にも実害はあると私は考えています。
まずヒトの身体は使わない機能は衰えていくという大原則があります。
一番分かりやすいのは筋肉や関節です。若い人でも骨折でギプス固定し長く動かせない状況が続けば、
ギプスを外した時には筋肉はやせ筋力が落ちていますし、場合によってはリハビリが必要となる事もあります。
また昔は数学の公式を山ほど覚えていたのに、大人になってから使わなければ多くの場合忘れてしまうのもその為です。
あるいはステロイド治療が必要となる自己免疫疾患などの病気でステロイド薬を長期間使用していると、
自前のステロイドを産生するはずの副腎の働きが次第に低下してきてしまい、
いざ何らかの理由でステロイド薬が使用できない状況に置かれた場合に、自前のステロイドが一切出せずに副腎不全と呼ばれる状態に陥ることもあります。
ビタミンの場合は産生する臓器があるわけではありませんが、
オートファジーのようなリサイクルシステムが働いている可能性については以前指摘したことがあります。
いざ何らかの理由でビタミン補充ができない場合に、リサイクルシステムが働かずにビタミン枯渇症状が出やすくなる可能性が否定できないのです。
そして何より私が一番懸念しているのは、
結局ビタミンを補充し続けている限り、「病気から卒業できていない」ということです。
ビタミンに依存している限り、極端に言えば死ぬまでビタミンを補充し続けなければならないという事になり、
それでは病気に支配されたままの人生であって、病気から人生を取り戻すことにはならないと私は思います。
また同様に健康な人が病気の予防の為にビタミン補充療法を行うことも勧められません。
それは自分が本来持つ身体の働きを衰えさせる事につながると思うからです。
薬は極力自然の構造を保ったものを、使うにしても必要最小限の量と期間だけ使うべきというのが私の基本的スタンスです。
ただそうは言っても実際の臨床ではそんなにうまく行かないケースも多々あります。
例えば患者さんが自分の生活と向き合い切れずに糖質制限不十分となってしまうようなケースです。
場合によっては御家族がイネイブラーとなり患者さんが病気と向き合えないことを助長していることもあります。
マイナスの発想がとれない患者さんへは従来通りプラスの発想で立ち向かうより他にありません。
その際に極力有害事象を来さないように副作用の少ない治療の一つとしてビタミン補充療法を使うことはあります。
つまりビタミン補充療法は有用な対症療法の一つではありますが、
根治療法とは位置付けられない治療法だと私は考えます。
たがしゅう
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プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
初めてコメントします。
体重を落としたいです。
Re: 初めてコメントします。
コメント頂き有難うございます。
当ブログが少しでもお役に立てれば幸いです。
使わない機能は衰える
いつも新しい知見を提供下さりまして、楽しく拝読させていただいております。
突然の不躾な質問をお許し下さい。
私が糖質制限をするに当たって、唯一の懸念事項が、本文にありました大原則「使われない機能は衰える」という事です。
糖質の摂取を意図的に減らすという事は、同時に脾臓に余計な仕事をさせないという事であり、長期間続ける事でランゲルハンス島のβ細胞の機能を衰えさせる結果を招きはしないのでしょうか?
糖質の頻回摂取による酸化ストレスの害を避けられる、という糖質制限の利点は置いておいて、こと糖尿病の予防という意味では、糖質の過度な頻回摂取と過度な糖質制限では、過程こそ違えど得られる結果、即ち脾臓のインスリン産生機能の減退という結果に違いは無いのでしょうか?
先生のお考えを伺えれば幸いです。
ありがとうございました。
Re: 使わない機能は衰える
御質問頂き有難うございます。
> 私が糖質制限をするに当たって、
> 長期間続ける事でランゲルハンス島のβ細胞の機能を衰えさせる結果を招きはしないのでしょうか?
糖質制限していても基礎インスリン分泌のため膵臓β細胞は働き続けています。
またタンパク質摂取でも個人差はあれど追加インスリン分泌は多少刺激されます。
糖質制限をすることで膵臓β細胞の機能が衰えていくということはないと思います。
No title
これからも安心して糖質制限に邁進いたします!
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