植物のコミュニケーション

2016/12/12 00:00:01 | 植物から学ぶこと | コメント:0件

フランスの民族学者レヴィ=ストロースが著した『野生の思考』の中で、

提唱された構造主義という考え方についてもう少し掘り下げてみていこうと思います。

1940年、レヴィ=ストロースはロシア人言語学者のローマン・ヤコブソンと出会います。

ヤコブソンは「構造言語学」という学派の主力メンバーで、彼との出会いがレヴィ=ストロースの大きな転機になったようです。

構造言語学では、コミュニケーションの基本は発信者と受信者が共通のコード(規則)の下にメッセージを伝達するということだと考えます。そのコードの成り立ちを次のように考えます。

まず自然界に存在する無数の音の中から、人間が聞き分ける事ができる音だけを「言語音」として抽出します。

次にそれぞれの「言語音」を区別し、組み合わせる事によって母音や子音という言語の最小単位である「音素」を作りだします。

そしてその「音素」を組み合わせる事で「言語」を生み出しているというのです。 このような構造で言語ができているとするのが、構造言語学の基本的な考え方です。

「無数の音」→「言語音」→「音素」→「言語」

レヴィ=ストロースとヤコブソンは議論を重ね、コミュニケーションというのは言語に限られるものではなく、植物や動物、宇宙の進化や変容そのものも一種のコミュニケーションだと考えるようになりました。

そして言語と同じように文化も同じ構造を持って作られていると考えました。

まず、自然から「少数要素」を取り出します。

そしてそれらを結び付けることで「構造」を作ります。

この「構造」を変換したり、組み合わせたりすることによって「文化」が生まれたのだと気づいたのです。

「自然」→「少数要素」→「構造」→「文化」


ここで私は植物にもコミュニケーションがあるという部分に注目します。

たとえ言語がなくとも、動物同士ならコミュニケーションを取り合うというのは理解しやすいと思いますが、

動かずにただその場にたたずむばかりの植物がコミュニケーションをとるというのはどういうことなのか、

先ほどの「構造」に当てはめれば理解することができます。

まず自然界に存在する無数の原子の中から取り出して利用できる「分子」を抽出します。

次にそれぞれの「分子」を区別し結びつけることで「物質」を作ります。

そして様々な「物質」を変換したり、組み合わせたりする事でさらなる「複雑物質」を作るという構造です。

「原子」→「分子」→「物質」→「複雑物質」

この構造をより具体的に植物に当てはめれば、例えば「でんぷん」の合成です。

「炭素、酸素、水素原子」→「炭素、酸素、水素分子」→「グルコース」→「でんぷん」

こうしてみると、私達が文化を作り世の中へ情報発信する事と、

植物がでんぷんを作り出す行為というのは、本質的には同じコミュニケーションだと考える事ができます。

現に私達はでんぷんの価値に魅了され、でんぷんをより産み出す方向へと動いてきたではないですか。

これは植物がとったコミュニケーションが確かに世の中を変えたという事に他ならないと思うわけです。

しかも自分達の種が生き延びるのに有利な方向へ、です。植物とは動かないけれどそういう形で生存戦略を立てる生き物なのだろうと考える次第です。

そう考えると糖質というのは植物が自らの野生の思考で産み出した叡智の結晶なわけで、

人間達が糖質がいいだ悪いだと外野であれこれ言っているのは、

植物にとってはいい迷惑なのかもしれませんね。


たがしゅう
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