もはや医学論文上に真実を求めることは困難

2023/02/22 15:10:00 | よくないと思うこと | コメント:0件

コロナワクチン推進派医師による医学論文からの有効性の主張の動きが根強く観察されています。

最近も次のような医学論文が北欧から発表されたと紹介されている動きを目にしました。

A. Husby, et al. Clinical outcomes of myocarditis after SARS-CoV-2 mRNA vaccination in four Nordic countries: population based cohort study
BMJ. 2021 Dec 16;375:e068665. doi: 10.1136/bmj-2021-068665.


その内容を一言で言えば、「コロナウイルスの自然感染後に発生する心筋炎よりもコロナワクチン接種後に発生する心筋炎の方がリスクが低い」というものです。

つまり「コロナワクチン後に心筋炎が起こるとしても、コロナにかかって心筋炎になる方が余程重症だから、そのリスクも受け入れた上でコロナワクチンを打ちましょう」という意図が透けて見える内容となっています。

この医学論文も例に漏れずにBMJ(イギリス医師会雑誌:British Medical Journal)という非常に有名な医学雑誌に掲載されているものですが、

私は理論的にも実際的にもこの結論を到底信じることができません。特に私が提唱している「宿主病因論」の視点に立つとこの医学論文の結論のおかしさが際立ちます。

しかし逆に言えば、「宿主病因論」の視点がないと、「BMJが発表した大規模な医学論文でもあるし、BMJが言うのであればこういうことも起こり得るのかもしれない」と解釈されかねませんので、

なぜこの結論が圧倒的におかしいのかについて今回は私の思考と、私が気づいたこの医学論文の問題点について説明したいと思います。 まず心筋炎という状態は「病原体病因論」の立場に立つと、「ウイルス感染もしくはワクチン接種によって起こる稀な合併症」と解釈されるかもしれませんが、

「宿主病因論」の立場に立てば、「心筋炎というのは免疫の誤作動によって全身性の炎症が非常に強く引き起こされるが故に、本来は最もターゲットになりにくい自己組織である心臓にまで炎症が生じた、最も激しく炎症を起こした状態」だと解釈することができます。

なぜそれほどまでに激しい全身性の炎症が生じるのかについて、「宿主病因論」では人体が異物に接触した際に異物への攻撃性の強さ、および攻撃的状態の持続期間に応じて、

「アレルギー」→「自己免疫疾患」→「サイトカインストーム」の順に病態が深刻化していく構造を明らかにしてきました。

異物であるかどうかを判定するのは、分子生物学的にはリンパ球が担うと考えられていますが、

同じ異物に接触する場合であっても、粘膜を介してマイルドに人体と接触する場合と、リンパ球のいる血管内に直接接触する場合とでは人体が引き起こす異物除去反応の強さが全く変わります。

特に後者の反応の激烈さについては輸血後GVHD、いわゆる輸血による臓器移植の拒絶反応を参考にすると理解の助けになります。

この輸血後GVHDは一旦発生すると致死率99%以上という恐ろしく致死率の高い現象なのですが、現在では輸血製剤へ事前に放射線を当ててリンパ球を死滅させたり、フィルターで濾過してリンパ球を除去することで避けられるということがわかっています。

ですが、要はいきなり異物が血管内に直接入りうるような状況が生まれると、リンパ球が異物を強く認識し、死ぬほど強烈に除去システムを駆動されてしまうということです。

コロナの重症化がこの異物除去システムのオーバーヒートのなれの果てであるサイトカインストームを意味するのであれば、

この現象がウイルスの自然感染後(飛沫やエアロゾルが上気道に入ってきて異物と接触)と、ワクチン接種後(血流豊富な筋肉内で注射針を介して異物と接触)のどちらで起こりやすいかを考えれば、

理屈から考えれば後者で異物除去システムが強烈に駆動されやすいと考える方が妥当です。

逆に言えば自然感染でサイトカインストームまでの異物除去システムが引き起こされるとなれば、そこにはそれなりの背景が必ずあるはずだと考えます。

普通、通常の経路で異物と接触する場合、たいていの場合はアレルギー反応にとどまるはずです。ちょっとこじれたら自己免疫疾患に至りますが、それにしてもいきなり自己免疫疾患になるようなケースは薬剤の副作用をのぞいてほとんど聞きません

よく基礎疾患のない若者がコロナで重症化するというレアケースが取り沙汰されることがありますが、「宿主病因論」の立場で考えれば、これは確率論ではなく、重症化した若者の中にそれが検知されていたかどうかは別として重症化させるような要因があったはずとみなします。

それは未把握の先天的な(不全型)代謝異常症かもしれないし、当人の心の中で強烈な不安や恐怖を感じてしまっていてそれを誰にも気が付かれずにいたのかもしれない。けれどそうした要因も何もない健康な若者が自然感染での接触の仕方で死ぬほどの重症化をきたすという風には決してとらえません

実はここはとても重要なところで、このコロナの重症化を確率論で捉えるかどうかで、個人として、そして社会としての対処の仕方がまるで変わってきます。

つまり稀ながら誰でも重症化する恐れがあると思えば若者は全員感染対策をしなければならないという指導に一定の説得力が生まれますが、

重症化するには当人の中に把握されているかどうかは別として必ず重症化要因があると捉えれば、全員一律で同じ感染対策をするのはおかしいという話になり、個人や社会の中でどうしていくべきかが検討される余地が生まれます。

だから感染症の発生は確率論ではないという見方はこれからも世の中へ提示し続けていきたいと考えています。

さて理屈的にはそのようにワクチン接種後の方が起こりやすいと考えられる心筋炎ですが、

実際的にはどうかとまず心筋炎の問題について盛んに取り沙汰されるようになったのは、明らかにコロナワクチン登場後です。

2020年頃のコロナと心筋炎に関する医学論文を振り返ってみても、基礎疾患のある人に起こり得る合併症の一つとして心筋炎が紹介されることはあっても、

コロナで心筋炎が起こりやすいとの認識はワクチン登場前はなかったように思います。そもそも若者においては死亡リスクの極めて低い病気としてコロナは認識されました。

それが2021年に入ってコロナワクチンが実用化されるようになり、副反応として心筋炎の副作用が稀ながら起こり得るという情報が広まっていくようになります。

一方で次第に若者の死亡例も徐々に増えていくようになります。これが当時はデルタ株の拡大のせいだと解釈されてきましたが、本当にそうだったでしょうか。

当時は医療従事者への先行接種も始まっていましたし、それに続いて職域接種も行われて若者へのワクチン接種機会が増えていく時期でした。厚生労働省に報告されたワクチン接種後の死亡例の2例目が26歳の看護師だったことも思い出されます。

当ブログでは何度も書いてきていますが、PCR検査というのは死んだウイルス(増殖活性のないウイルス様遺伝子構造)であっても陽性となり得る、症状との因果関係を証明しないものなので、

そして実際にはワクチンの副反応およびワクチン接種で免疫を乱されて起こった風邪様症状が起こりやすくなってしまった状況に対して、2020年当時よりも充実した(あるいは簡略化された)PCR検査体制によって、

無症状のPCR検査陽性者を含んで季節変動にも伴う見かけ上感染者の波が増大したものを「デルタ株による感染拡大だ」と誤認していた可能性はないでしょうか。

少なくとも私にはその可能性は否定できませんし、そう考えた方が現実を矛盾なく説明できます。もしもコロナの方が心筋炎を起こしやすいのであれば、2020年に若者をもっと襲って然るべきです。

武漢株はオミクロン株ほど感染力が強くなかったからだという説明も納得はできません。なぜならばいわゆる武漢株(というよりも2020年時点でのコロナPCR検査陽性者と表現する方が公平か)の時点でもすでに全国各地どころか世界中に患者は見られ、かつてないほどの感染力を示しているからです。

むしろそのあまりにも一気に広まり過ぎる動向を私は不自然に思い、これは1つ1つウイルスが丁寧に広まったのではなく、PCR検査の全世界への普及によってウイルスの感染拡大が全世界で一気に起こったように演出されてしまっただけだと考える方が妥当です。

どうせワクチン接種後に心筋炎が起こったとしても、国には因果関係を認める気がありませんから、公的な情報でワクチン接種後の心筋炎の数を確認しても正確ではないでしょう。その裏にはきっと原因不明の死亡として処理されたケースが無数に存在していて然るべきです。

そうなると決して無視できないのが、2020年には増えていなかった(むしろ減っていた)のに2021年より年々増え続けている超過死亡です。これもワクチン接種後の心筋炎の方がコロナ感染後の心筋炎よりも重症化することを示唆する現実のデータだと私は思います。


さて、前置きが長くなってしまいましたが、そうした予備知識を持った上で今回の医学論文をざっと検証してみます。

デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンの2300万人を対象とした集団ベースの研究データを集積させて、2018年〜2022年に発生した7292人の心筋炎症例を分析し、

それらを「コロナ感染後の心筋炎症例」「コロナワクチン接種後の心筋炎症例」「従来の心筋炎症例」のいずれかへ分類し、

それぞれの分類での心不全の発生率(重篤化の指標)や死亡率、及び入院期間の長さなどを検証したという内容になっています。

国をまたいでいて基準のズレは多少ありますし、また最初から心筋炎を検出しようと思って研究計画を立てたわけではないので、前向き研究ではなく後から心筋炎についてどうであったかを検証する形なので、

本文中には明記されてはいないものの「後ろ向きコホート研究」になると思います。エビデンスレベルで言えば2bです。

そして主な結果として論文に表示されていた表が以下になります。

心筋炎の死亡頻度比較

(表はhttps://bmjmedicine.bmj.com/content/2/1/e000373より引用)

7292人の心筋炎患者のうち、530人(7.3%)がコロナワクチン接種後の心筋炎、109人(1.5%)がコロナ自然感染に伴う心筋炎、6653人(91.2%)が従来の心筋炎に分類されました。

ちなみにここでの「コロナワクチン接種後の心筋炎」の定義は、「コロナワクチン接種後28日以内に心筋炎で入院した患者」で、「コロナ自然感染に伴う心筋炎」の定義は「コロナPCR検査が陽性になってから28日以内に心筋炎で入院した患者」と書かれていました。

また両者が共存する場合は、最新の暴露を優先すると、例えばワクチンを打った後に心筋炎になってもコロナPCRが陽性になればそれは「コロナ自然感染に伴う心筋炎」だと扱われることになります。

よく考えればコロナ自然感染で心筋炎になった人がその状態でコロナワクチンを打つことは考えられませんので、共存のケースは全てコロナ感染として扱われて良さそうです。ちなみに本文中にはそういうケースは11例あると書かれていました。

ちなみに「コロナワクチン接種後の心筋炎」でもなく、「コロナ自然感染に伴う心筋炎」でもない心筋炎での入院例が「従来の心筋炎」として扱われていました。ですので具体的にはコロナ自然感染やコロナワクチン接種から28日以上経過して心筋炎になったケースや、別のウイルス感染やワクチン接種後に起こった心筋炎ケースなどが想定されると思います。

そしてこの医学論文で行った研究の結果としては、「コロナワクチン接種後の心筋炎」530例の中で心不全は22例(従来型心筋炎と比べた相対リスク0.56)、死亡は6例(従来型心筋炎と比べた相対リスク0.48)、

「コロナ自然感染後の心筋炎」109例の中で心不全は12例(従来型心筋炎と比べた相対リスク1.48)、死亡は6例(従来型心筋炎と比べた相対リスク2.35)と書かれていて、

故に「コロナウイルスの自然感染後に発生する心筋炎よりもコロナワクチン接種後に発生する心筋炎の方がリスクが低い」と結論づけているのです。


ただ私はこの医学論文に対して4つ気になった点がありました。

①コロナワクチン接種後に心筋炎を起こした人とコロナ自然感染で心筋炎を起こした人との背景の違いがわからない。
②そもそものワクチン接種後の心筋炎の発症数が、コロナ自然感染のそれに比べて非常に多い
③本当はワクチン接種後の心筋炎かもしれないのに、PCR陽性だけを根拠にコロナ自然感染後の心筋炎として余分に計上されてしまっている
④2018〜2019年の心筋炎の総数3820人と比べて、2020〜2022年の心筋炎の総数は3472人と大差がない。


後ろ向きコホート研究ですので、各調査集団の特徴が異なることは当然起こり得ると思いますが、

それでもどういう集団の特徴があるのかという情報がなぜか公開されていないので、必然的に①の疑問が生まれることになります。

前半で考察したように「宿主病因論」で捉えると、コロナ自然感染で重症化する人は把握されているかどうかは別にして、異物除去システムがオーバーヒートするような何かがあると考えるのが妥当なので、

この心筋炎の発症率の差は、「比較的健康な人(ワクチン接種)」vs「比較的不健康な人(コロナ自然感染)」の差になっている可能性が高いです。

もしそうだとすれば、スタートからして公平な比較になっていないので、この結論(ワクチン接種後心筋炎の方がリスクが低い)はバイアスがかかりまくりの歪んだ結論ということになります。健康な人の方がリスクが低いのは当たり前の話だからです。

むしろ②からわかるように、コロナワクチンを接種することで、軽症例も多いとは言え、自然感染の109例の約5倍に相当する530例に心筋炎を起こしてしまっていること、

しかも22例を心不全に、6名を死亡に追いやっていることに重きをおくべきでしょう。頻度が低いから良かった、ではなくもともと健康である可能性が高い人にそれほどの不可逆的変化をもたらしているという事実を重く受け止めるべきではないでしょうか。

さらに言えば、③を踏まえますと、自然感染の109例の中にも実はワクチン接種が契機となって心筋炎を起こしている例があることが考えられますので、両者の差はさらに開きえます。

そして意外なのは④なのですが、コロナ前(2018-2019年)の心筋炎の総数とコロナ後(2020-2022年)の心筋炎の総数に大差がないというのはちょっと不自然です。

2020年以降に起こった変化がコロナの登場だけであれば十分にあり得ることだと思います。コロナによって起こったと思われた心筋炎の症例は実際には別の原因で起こっているにも関わらず、症状とは無関係のコロナPCR陽性がたまたまあったから、これをコロナによる心筋炎と誤認しただけで、実は心筋炎の総数は従来と比べて大差ないというストーリーが考えられるからです。

ところが2021年にコロナワクチンが登場し、全世界的に7-8割の人達が2回以上の接種を受け、しかも超過死亡は増加しているのですから、コロナ後の心筋炎の総数は増えて然るべきだと思うのです。

だからこの総数は本当に心筋炎の総数を反映できているのかという点に疑いの余地が残ります

よく考えれば心筋炎と評価される前に急変し、謎の死亡として処理されていることもあるでしょうから、

この研究で報告された心筋炎の数以上に心筋炎で重症化して亡くなったケースはあって然るべきでしょう。本来であればそれも含めて心不全や死亡例を検証する必要がありますが、それもこの研究では見過ごされています。

さらに言えば本文を読み込むと気になる一文も書かれていました。

データ入手に関する記述
データは第三者から入手したものであり、一般には公開されていない。国別解析の基礎となる個人レベルのデータは、北欧の各国内でのみ入手可能である。データは著者に帰属せず、この原稿で提示されたものを除き、データを共有することは許可されていない。


つまりこの論文のデータは公開性が低く、制限のある情報で構成されているということであり、そこだけ踏まえても全体を語るのに十分な内容だとは言えないということです。このデータが正しいのかを検証することもできないし、患者背景を詳しく掘り下げることもできない。

そんなバイアスありまくりの結論なのに、BMJという有名医学雑誌に掲載されてしまうのは、おそらく「コロナワクチンでパンデミックを終息させるべき」という現代医学のメインストリームに沿った結論だからでしょう。

もうすでに医学論文の世界は科学的な正しさで動いていないということを明確に認識すべきだと私は思います。

「論文の中にも正しいものもあるのだから一概にエビデンスを否定してはいけない」という意見には一理あるかもしれませんが、

悲しいかな少なくともそれを見抜くのが極めて難しい(根気がいる)情勢になっていると認識しておいて然るべきだと思います。


たがしゅう
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