「モデルナアーム」はなぜ起こるのか

2021/09/09 19:00:00 | 素朴な疑問 | コメント:2件

モデルナアーム」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。

製薬会社のファイザー社に並んでコロナワクチンを先頭を切って世界に販売したモデルナ社のmRNAワクチンを接種した際に、

接種して数日以内に起こるワクチン接種部位を中心に起こる発赤・腫脹・疼痛とは別に、接種後1週間程度経ってから接種部位周囲に発生する発赤・腫脹・疼痛といった遅発性の症状のことが俗にそう呼ばれています。

テレビ等でも報道されて有名になったようで、私もコロナワクチンの接種会場に問診係として行った際、2回目の接種を受ける人達の中で「(TVで言ってた)モデルナアームになりましたよ」という人を結構な頻度で見かけました。

自衛隊東京大規模接種センターからの報告によれば、1回目のモデルナmRNAワクチン接種後のモデルナアームの発生頻度は5.6%(2,369名/42,017名)となっています。ここでのモデルナアームの定義は「モデルナ社のコロナワクチン接種後4日目以降で接種部位周囲に認める遅延型皮膚反応で、虫刺されなどの他の原因が問診上除外されたもの」となっています。 ですが実は頻度は報告によってまちまちです。海外では接種8日目以降における遅発性皮膚副反応が、 1回目接種後の 0.8%及び 2回目接種後の 0.2%に出現すると報告されています。

海外の報告は随分少ない印象を受けます。しかし実際にはまさか8日目以降にアレルギー反応が起こるとは想定されずにかなりの数が見過ごされているのではないかという説も言われていますが、真偽の程は定かではありません。

一方で私が実際に接種会場で問診した印象では「モデルナアーム」を起こしている人の頻度は少なく見積もっても10人に1人はいるような印象を受けました。こうなってくると稀な副反応でもないように思えてきますが、多くの人には起こらないということも確かです。

また「モデルナアーム」を起こした人の男女比は男性17%、女性83%と、なぜか女性の方で圧倒的に起こりやすいということもわかっています。

一方でファイザー社のコロナワクチンでは同様の遅延型皮膚反応の報告があるにはありますがかなり稀とのことで、これはmRNAワクチンに共通する事象ではないということは言えそうです。

「モデルナアーム」に関する一般的な専門家による評価をまとめると大体このようなことが言われています。

・遅延型アレルギーの一種だと思われるが明確な機序は不明
・なぜか女性に多いがその理由も不明
・頻度としては稀であるし、自然に消退するのであまり心配する必要はない
・「モデルナアーム」が出たからと言って2回目のワクチン接種を控える必要はない


確かに「モデルナアーム」は多くの場合一過性の現象で、少し収まるまでに時間がかかるものの、だいたい1週間くらい経てば跡形もなく改善する症状ではあるようです。その意味では過度に心配する必要はないのかもしれません。

ただ問題はどうしてこんなことが起こるのか、です。その一番大事な部分がうやむやにされ、「あまり気にせずに結局ワクチンを打ちなさい」という安易な結論に持ち込まれているような気がしてなりません。

世界中の研究者が原因不明でお茶を濁している中で恐縮ですが、限られた情報の中から私が考えて導けることについて今回はお示ししておきたいと思います。


まず「モデルナアーム」はワクチン接種直後ではなく、多くの場合1週間経過した時点から起こっていることから、「遅延型アレルギー」の一種であろうことには私も異論はありません。

ただ遅延型アレルギーはⅣ型アレルギーと言い換えていいと思いますが、Ⅳ型アレルギーは一般的には抗原曝露から24〜72時間後に起こることが多いとされています。つまり「モデルナアーム」は遅延型アレルギーにしては発生時期が遅いのです。

そしてもう一つ重要な事実があります。

「モデルナアーム」の症例の患部の写真を確認してみますと、すべて接種部位の周囲または接種部位よりも下の位置を中心に発赤・腫脹が広がっているように見受けられます。

逆に言えば、接種部位よりも上に発赤・腫脹が広がっている例はただの一つもありません

これが何を意味するかと言いますと、「モデルナアーム」という現象は重力に従って下方へ移動する物質に対して反応しているということを意味します。

遅延型アレルギー反応というのは主としてTリンパ球の反応に始まって、Bリンパ球やNK絵細胞とも連携して、マクロファージなどによる初期の異物除去反応を後押しする形で起こってくるアレルギー反応です。

これが単純にT細胞の過剰反応として起こっているのであれば、別に接種部位上部に起こったり、あるいは遠く離れた体幹や足などの別の部位に起こっても不思議ではないわけですが、

これが接種部位付近から接種部位のやや下部を中心に炎症が引き起こされているのだとすれば、これは明確な抗原をターゲットに異物除去反応が引き起こされている可能性が示唆されます。

接種部位には勿論ワクチン成分が注入されているわけですが、筋肉に注入したものがその下に移動していくものなのかと思われるかもしれませんが、

これは皮下出血の自然経過を知っていればわかることです。皮下に漏れた出血が表面上いわゆる内出血として観察されることがありますが、

あれも時間を追う毎に下へ移動していき、こんなところぶつけていないのにという打撲部よりも下に内出血が移動していることは時々観察されます。

筋肉に注射したワクチン成分も確かに移動しにくいものの、完全に筋肉内注射ではなく一部皮下注射になっていたりする場合には1週間ほど時間をかけて注射部位よりも下の皮下に移動していくことは十分にありえます。


ここで思い出すのは、mRNAワクチンにアジュバントとして含まれている「ポリエチレングリコール」です。

「ポリエチレングリコール」は化学的に非常に安定性が高い構造をしているので、口から摂取した際には消化・分解されずにかつ腸管からも吸収されず浸透圧差で便に水分を引き込むことができて、優秀な下剤として働くけれども、

注射で筋肉内に注入するとなかなか除去されない異物として残存し、異物除去反応が強烈に駆動されることになり、それが前代未聞の副反応率の高さに寄与しているのではないかと考えられると以前の記事で考察しました。

今回の「モデルナアーム」という遅延型アレルギー反応にも、この「ポリエチレングリコール」の分解されにくさが関わっている可能性はあると思います。

なかなか分解されないことが、発症時期の遅さと完全に治るまでの時間の長さにつながっていると考えるとつじつまは合うように思います。

ただもしそれが正しいとして、分解されにくいと言っても少なくともデータ上は9割以上の人に「モデルナアーム」は起こっていないことを考えると、分解されにくいと言っても多くの人は分解できる程度、ということになると思います。

またファイザーのmRNAワクチンでもポリエチレングリコールは含まれていますから、これによって「モデルナアーム」様のイベントが少なくともデータ上はモデルナのmRNAワクチンに比べて頻度が低いことを考えますと、

「モデルナアーム」の原因を「ポリエチレングリコール」だけに求めるのは無理があるでしょう。けれど何かしらの分解しにくい物質が関わっているであろうことは上記の考察から導くことができるので、

ファイザー社とモデルナ社のmRNAワクチンを比較した際の相違点が「モデルナアーム」の発生を生み出す大きな要因だと考えるのが妥当だと思います。

そう思ってモデルナワクチンにしかない化学的に安定な物質がないか調べようとはしましたが、あまりに複雑な化合物名が書かれていて、化学の知識が乏しい私にはこれ以上の言及は困難でした。

この分野に詳しいどなたかがこの辺りを検証してくれることを望んでいます。

それともう一つ、女性になぜ多いのかについてもわからないところですが、これについて私は一つ思い当たる節があります。

これまた私が実際のコロナワクチン接種会場で問診していた際のあくまでも印象なので恐縮ですが、

問診していて男性は比較的年配の方を中心にワクチンを怖がるようなそぶりは一切見せることはなく、どちらかと言えば「面倒臭いことはさっさと終わらして早くワクチンを打ってくれ」と言わんばかりに私の問診に対して生返事気味の人が多いのに対して、

女性の方は時々すごく不安そうにワクチンに関して色々質問をして来られる人が現れるような印象がありました、

何と言っても針を刺す行為ですから、生命維持に際して強い力を備える女性はこれを不安や恐怖と認識する割合が男性に比べると高いのかもしれません。

そうすると不安や恐怖はストレス反応を駆動します。それが高じると異物除去反応の過剰適応状態が引き起こされる可能性は十分にあると思います。

もしかしたらモデルナアームの発生が女性に多いことにはそうした背景も関わっているのかもしれません。


たがしゅう
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コメント

スパイクタンパクとプリオンモチーフ

2021/09/10(金) 07:15:26 | URL | 通りすがり #-
スパイクタンパクとプリオンモチーフ

https://note.com/hiroshi_arakawa/n/n14d9c949c41a

荒川博士のアドレスが検閲されてしまうブログもあるので当局者には都合が悪いのでしょう。


Re: スパイクタンパクとプリオンモチーフ

2021/09/10(金) 11:45:05 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
通りすがり さん

 情報を頂き有難うございます。

 私はプリオンの病原性伝播に関しては医学界で言われている「感染性蛋白質」という解釈とは別の解釈を持っています。
 一言で言えば「過剰適応状態にある生体システムが適応能力の限界を超えて一気に消耗疲弊状態に切り替わっていく現象」だと思っています。要するに抗原ではなく、宿主側の問題が主だということです。血液と血液が直接接触する場面で引き起こされやすい現象です。その意味でワクチン接種とプリオン伝播が起こりやすい硬膜移植などのイベントとは共通性がないわけではありませんが、そこに結びつけるのは結構強引な話である印象があります。陰謀的に考えると出てきやすい発想なのかもしれません。

 2014年2月27日(木)の本ブログ記事
 「蛋白癌という考え方」
 https://tagashuu.jp/blog-entry-195.html

 2020年7月2日(木)の本ブログ記事
 「陰謀論について考えるのは一番最後」
 https://tagashuu.jp/blog-entry-1797.html

 もご参照下さい。

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